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『シャンドライの恋』
【感想】 ★★★☆ H17.10.29

シャンドライの恋 愛することと、愛されること、彼女はその日、決めなければならなかった。
「ラスト・タンゴ・イン・パリ」「ラストエンペラー」の巨匠ベルナルド・ベルトルッチをして「どうしても作りたかった」と言わしめた、ジェイムズ・ラスダンの短編小説を映画化した『シャンドライの恋』を観る。この映画はダウンタウンの松チャンが書いた映画本の中で、満点を入れていた作品でしたね。どんな感想だったかは、その本をすぐ売っちゃったんで憶えてないんだけど(笑)。こうやって感想を書く日が来るんだったら残しとけばよかった。

 アフリカで政治活動をしていた夫を逮捕されてしまったシャンドライ(サンディ・ニュートン)は、単身ローマに渡り、今は英国人の作曲家キンスキー(デヴィッド・シューリス)の古びた屋敷に住み込み、家政婦として働いていた。シャンドライに熱い視線を送り続けるキンスキーは、ついにシャンドライに愛の告白をするが、彼女から帰ってきた言葉は「愛しているのなら、夫を返して」だった。その日からキンスキーは報われることない無償の愛を捧げ続けるのだった・・・。

 静かに、そしてゆっくりとターンし回転するカメラワークと、キンスキーの視線のようにシャンドライの脇や裸足の足をズームで映し出すシーンなど、とにかく全編にわたって官能的に映し出される映像に、まず一回目は途中で寝てしまった(笑)。ラストのちょっと前に目が覚めるという最悪のパターンでラストシーンを観賞。いやあ〜、やっちゃいました。すぐに記憶のないシーンから続けて観賞する。

最初はキンスキーの弾くクラシックを彼の愛と同じように、まったく拒否するシャンドライ。それでも君のためなら何だってすると、人妻であることを知りつつ、成就しない愛をシャンドライに注ぎ続けるキンスキー。愛する人の夫のために私財を投げ打ち、がらんとした部屋で奏でられるピアノの曲はいつしかアフリカ音楽を思わせるような激しいリズムを刻む曲へと変わっていく。そしてシャンドライのキンスキーに対する感情も次第に変わっていく。会話がほとんどないんですが、代わりに二人の心を映し出すように流れ続けるピアノの熱い旋律、上手いですねえ。手さえ触れるシーンもなく、ただ二人の内面を官能的に描き出すベルトルッチの表現力に圧倒される。屋敷内の螺旋階段が象徴するように、二人の近いようで遠い関係がもどかしく、なによりラストの切なさは深く心に刻まれ、エンディングで流れるピアノの音はいつまでも心に響いていた。っていうか、なんで夫が帰ってくるというそんな大事な日にわざわざあなたたちは・・・(爆)

何故二人が惹かれあうのかっていう説明的なシーンがなく、おまけになんのプロローグもなく唐突に始まる愛の行方に、ちょっと置いてきぼりにされたけど、愛って実は至極シンプルなものなのかもって感じた。あくまでも二人だけの世界であり、どうしてっていう理由を考えるのも無粋だよって、ベルトルッチが笑ってそう。まあ、これ以上あんまり愛について語るのも恥ずかしいので、この辺で止めておこう(笑)