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『アルゴ』
【感想】 ★★★★ H26.3.22
 ベン・アフレックが自らメガホンをとり、見事第85回のアカデミー賞作品賞を受賞した『アルゴ』を観る。製作に主演まで務めたベン・アフレック、申し訳ないが私はどうにも苦手な俳優なのだ。「アルマゲドン」とか「デアデビル」とか、たまたま見た作品がまずかったのか、私の中で彼は役者として正直ダイ○ンにしか見えないんだなあ。でもアカデミー賞の授賞スピーチで、興奮のあまり早口でぎこちなく喋っている彼を見て、こんな素晴らしい才能を持っていたんだと驚きました。ごめんよ、ベン。そしておめでとう、ベン。なんちゃって(^^)

 1979年11月4日。イラン革命で湧き上がるテヘラン、アメリカ大使館の周りに大挙押し寄せる殺気立った群衆。次第に激しさを増していく群衆は、ついに大使館の塀を乗り越え、建物を打ちこわし中へとなだれ込む。瞬く間に過激派グループに占拠された大使館は、52人もの人質が取られるという大事件へと発展した。そんなパニックの最中、大使館から6人のアメリカ人が脱出し、カナダ大使の公邸に匿われていた。

 まず、カナダ大使公邸に潜伏していた6人のアメリカ人を、架空の映画「アルゴ」のロケハンとして訪れた、カナダの映画スタッフとして国外へと脱出させるという、嘘のようなホントの話が実話だということに驚かされる。その映画のような奇想天外な作戦を発想し、実際に行動に移してしまうアメリカ人・・・、お気楽すぎてちょっと怖いかも(^^;)。そしてそのとんでも作戦を、綿密なリサーチとテンポの良い展開に加え、恐ろしくリアルな緊迫感を画面から伝えきった、監督ベン・アフレックの手腕が光る。オープニングの実際の当時の映像を挟み込みながら、大使館を蹂躙していく群衆シーンの凄まじさから、国中が革命への激情で沸点に達した狂気とも思える世界で繰り広げられる脱出劇の、手に汗握る緊張感がとにかく素晴らしい。画面からこちらに向けられるイラン人達の目線にすら、観る者の体を劇中のキャラクターたちと同様に強張らせる力を感じさせる。そしてその緊迫感は怒涛のクライマックスへ向けてさらに加速していく。まあ実際にはあそこまで劇的ではなかったと思うけど、いやあ、こんなにドキドキしながら映画を観たのは久しぶりだわ。

 ただベン・アフレック演じるCIAの工作員を始め、脱出を試みる6人のアメリカ人と、あまり感情移入できる登場人物がいないという不思議な作品でもある。まあそんな不満も、ジョン・グッドマンとアラン・アーキン演じる魅力的なキャラクターたちが引き受けてくれちゃうんだけどねえ。そしてまたしても役者としての輝きは感じられなかったベン・アフレックだったけど、今監督としての力量を再認識し、これは同じく監督・主演を務めた「ザ・タウン」を見ねばならぬと思っている。