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『狼男アメリカン』
【感想】 ★★★ H24.9.11

 公開時センセーショナルな狼男への変身シーンで話題となった『狼男アメリカン』を久しぶりに観る。ジョン・ランディス監督の明るさと、特殊メイクのリック・ベイカーのおどろおどろしさが絶妙にマッチした作品。その後カルトと呼ばれる作品にまでなりましたねえ。

 羊たちを積んだトラックから降り立つアメリカ人大学生、ディビッドとジャック。ヒッチハイク旅行でやってきたイギリスの片田舎。小さな村のパブへ入った二人は、謎めいた村人たちとトラブルになりそうになり、そうそうと店を後にする。去り際に「月に気をつけろ」という言葉を投げかけた男のことを考えながら、すでに暗くなった荒れ地を歩く二人に、突然大きな獣が襲い掛かってくる。一瞬でズタズタにされるジャック。獣はディビッドにも襲い掛かってきたが、駆け付けた村人に銃で射殺される。3週間後重傷を負ったディビッドは病院のベッドで目覚め、ジャックが死んだことを知る。ショックを受けるディビッドは、その日から悪夢に苦しめられていく・・・。

 始まりはゴシックホラーを思わせる薄暗い不気味な村から。狼男映画の定番の展開なんだけど、舞台は意外にも途中からにぎやかなロンドンの街へ変わる。狼男に襲われて、同じように狼男の血を受け継いでしまった主人公の見る、ショッキングな悪夢のシーンや、呪いから死にきれずに現れる親友の姿やら、結構グロイ描写がされホラーとしての見応えも十分。ただし、作品を包む空気はあくまでも明るいのだ。血みどろなんだけど、恐怖を通り越した笑いを感じさせる。当時としては画期的だったろう、ホラーとコメディを見事に融合させている。今までにない、全く新しいアプローチで狼男の映画を作ろうとするスタッフの熱いエネルギーを感じる。
そしてこの年のアカデミー賞のメイクアップ賞を受賞した、リック・ベイカー手がける変身シーンは、今見ても昨今のCGでは決して味わえないだろう息苦しさと生々しさで、楽しませてくれる。そして私のお気に入りは、ズタズタに切り裂かれ血みどろになって現れるジャックの気色悪い皮膚感、もう最高。
ジョン・ランディスとリック・ベイカーのコンビは、翌年マイケル・ジャクソンの「スリラー」のミュージックビデオを世に送り出し、喝采を浴びる。