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『アメリ』
【感想】 ★★★★  H22.2.11
アメリ 公開時本国フランスで社会現象を巻き起こし、日本でもミニシアター記録を塗り替える大ヒットとなった『アメリ』を久しぶりに観る。

 神経質な母に冷淡な父と、特殊な家庭環境の中で育ったアメリは、幼い頃から他人との接触を絶たれ、いつも空想の中にいた。母の事故による死から、父と二人きりで送る日々は何事もなく過ぎていった。そしてアメリが22歳となったある日、偶然部屋の壁の中に隠されていた、前の住人の宝箱を発見する。たくさんの人への聞き込みにより、持ち主を発見したアメリは、その宝箱をそっと返す素敵な方法を思いつく・・・。

 周りの人達に、小さな幸せをそっと振りまいていくアメリ(オドレイ・トトゥ)。おせっかいだけど、アメリの考え出す可愛らしい仕掛けと笑顔に、次第に温か〜い幸せ感に包まれていく。そして幸せに向かって、勇気を持って踏み出していくアメリに、観ている人みんなが背中をそっと押されるような気分に。観終わった後には幸せの綿帽子が、自分の周りをフワフワと漂っているような、そんな素敵な余韻を残す映画だった。

おかっぱ頭に大きな瞳で、にっこりと笑いかけるオドレイ・トトゥの、屈託のない笑顔を見ているだけで楽しくなってくる。当初アメリ役はエミリー・ワトソンが予定されていたらしいが、オドレイ・トトゥのキュートでいて艶やかな仕草や表情なしでは生まれなかった映画と思えるほどの、はまり役のアメリをはじめ、ことごとく屈折した登場人物達のなんと個性的なことか。同じアパートに住む画家の老人と、ちょっと頭の弱い八百屋の青年とのやり取りや、ドワーフの人形が世界旅行をするエピソードとか、思わず笑ってしまうシーンもちりばめられている。

「デリカテッセン」や「ロスト・チルドレン」などの、強烈なダークビジュアルで空想の世界を描いていた監督のジャン=ピエール・ジュネが、こんな可愛らしい映画を作るなんて驚きだった。赤と緑の濃淡なコントラストで描く独特のスタイリッシュな映像は健在で、ところどころで挿入されるグロテスクなシーンに面影を残すが、フレンチの香りを強く感じさせるレトロなパリの町並みに、隅々にちりばめられるセンスのいい小物、そしてアコーディオンが奏でる心地いい音楽と、とにかくおしゃれ感がハンパじゃない。公開時、たぶん豚のスタンドをはじめ、この映画に出てくる小物を捜し求めたであろう、日本の女性達の姿を思い浮かべ、今一人アメリのようにほくそえんでいる(^^)