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『アマデウス ディレクターズ・カット』
【感想】 ★★★☆ H25.5.11
 第57回のアカデミー賞で、作品賞・監督賞に主演男優賞など8部門を受賞した傑作『アマデウス』を観る。だいぶ前に見たような見ないような、細切れにシーンの印象が残ってるだけなので、たぶん最初からしっかり見るのは初めてだと思う。しかも20分ほど新しいシーンを加えられた評判のディレクターズ・カット版を観る。

 映画を観る前は、もちろんヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの生涯なんて全く知らなくて、わずかに知っている明るい調べとは程遠い、職にもありつけず貧困の中であえぐ姿は全くの予想外だった。その才能を理解できる人間がいない天才の苦悩、そして自分の才能を遥かに凌駕する天分を前に打ちひしがれるものの苦悩。見応え十分な圧巻のオペラのシーンと音楽のはざまで葛藤する、それぞれが身もだえするほどの苦悩を抱えて交差する人間ドラマを見事に描ききる。そして人生の理不尽さと悲哀は、観る者の胸を切ないほど締め付ける。

ただ劇中の音楽のほとんどを聞いたことがない、クラシックに素養のないものにとっては、それなりに知っている人たちよりハードルの高い作品だと言わざるを得ない。人間関係はもちろん、曲のエピソードなりを知っていたら何倍も面白かったんではないかと思われた。だいたい音楽を聴いてモーツァルトの曲だと分からない自分の無知がつらい。そして180分にも及ぶ長尺と、作品を通して伝わってくる人の業の重さは、深い感銘も受けるがやはり気分がめいる。傑作ではあるが、そう何度も観る気にはなれないなあ。