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『アリス・イン・ワンダーランド』
【感想】 ★★★ H21.5.6
 ルイス・キャロル原作の「不思議の国のアリス」の、その後を描いたティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』を劇場にて鑑賞。ジョニー・デップとの7度目のコラボレーションと、バートンのダークなビジュアルが、不思議の国のアリスという絶好の題材を得て、どんな風に融合するのか凄く楽しみだった。しかも3Dだしね〜(^^)

 1855年のロンドン。6歳のアリスは毎晩不思議の国をさまよう夢に怯えていた。そして月日は過ぎ、19歳となったアリスは母親と一緒に、招待されたパーティーへと向かっていた。アリスには知らされていなかったが、そのパーティーはアリスが亡き父親のビジネスパートナーだった男の息子ヘイミッシュが、アリスに求婚するために設けられたパーティーだった。突然の求婚に戸惑うアリスは、時間が欲しいとその場を逃げ出してしまう。そこへ突然懐中時計を持った白いウサギが現われる・・・。

 ウサギを追って穴に落っこちてしまうという、「不思議の国のアリス」と同じシチュエーションでなぞられる始まりから、最初のドアをくぐるために薬やケーキで小さくなったり大きくなったりと、原作の世界観が忠実に再現され、さあバートンはどんなアリスの世界を見せてくれるのかと、期待度がグングンと上がっていく。次々と現われる不思議の国の奇妙な住人達にワクワクとし、前評判はあまり良くなかったけど、自分にはあってるかもと嬉しくなる。なかでもバートン組(というか気がついたらパートナーになってたんですね・・・)のヘレナ・ボナム=カーター演じる赤の女王の、暴君振りがつぼにガッツリ入り、主役のアリスよりとっても魅力的で、私は大好きになってしまった。相変わらずのコスプレ好きのデップも、このぶっ飛んだ出で立ちは無理でしょうという悪い予感も吹き飛ばす、ノリノリの演技で見事な住人となって楽しませてくれた。

ヘレナ・ボナム=カーターが作品について、“自分の持っている狂気を受け入れる準備ができているのか、ということについての物語”と語っている。アリスの父親が冒頭で語る「優秀な人は、みんな頭がヘンさ」というおおいに共感する印象的なセリフをはじめ、キャラクターたちがぶつけ合う強烈な個性は、どこかすがすがしく、自分自身を知り、そしてそれをどう行動に起こすかということが重要なんだいうメッセージを勝手に感じる。

ただグレーを基調とした地味な空間と、アリスを演じる新人のミア・ワシコウスカ嬢の生気のない表情に、次第に気分が盛り下がっていく。「チャーリーとチョコレート工場」のようなサイケデリックな世界でもなく、「ビッグ・フィッシュ」のようなファンタジックな輝きもなく、ダークと呼ぶには中途半端な地味な箱庭のような世界は、ちょっと期待はずれだった。
そして結果、あまりにも期待度が大きすぎたのか、バートン作品としてはごく普通のファンタジー作品になっちゃったなあ〜って感じに。これだけそろえられたユニークなキャラクター達をもってして、なんでこんなに楽しくなかったんだろうかと、あとで色々考えてしまった。ほとんどのシーンがグリーンスクリーンの中で見えないものを相手に演じられたであろう、出演者達の感情が抜け落ちたような演技かな?それともストーリーが意外に早い段階で、予言という形でばらされてしまうという、ほとんどラストまで予想できてしまう展開になってしまったことか?バートンは「不思議の国のアリス」について、“小さな女の子が奇妙なキャラクターの言いなりになってさまよい歩くだけのストーリーに魅力を感じない”と語っていたが、そこを押さえてのこの「ロード・オブ・ザ・リング」のようなストーリーは、どうだったんだろうなあ。
見終わった後、余韻を楽しむというより、どこが面白くなかったのか、その要因をただぼんやりと考えさせられる作品だった(^^;)