レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

プレイディア

Maker :BANDAI
種 別:CD-ROM式家庭用テレビゲーム機
価 格:2万4800円

 その昔「くるくるてれび」というおもちゃがあった。
一言で説明するのはなかなかに大変なおもちゃなのだが、まず本体を片手で持
って片目で本体ののぞき穴をのぞく。
そうすると、数分くらいの短いアニメーションの動画が見られる、というもの
だ。

 再生するアニメーションの方は取り外し可能なカートリッジ式となっており、
当時の人気アニメや特撮などのソフトがざっと100巻近く売られていて、子
供達は自分のお気に入りのアニメをいつでも好きな時に見ることができる、と
いうのがこの商品の魅力だった。

 とはいっても、せいぜい数分しか記録することができないのと、映像はあっ
ても音声はついておらず、おもちゃの範疇を出るものではなかったが、当時は
まだ一般家庭にビデオデッキが普及しておらず、好きな番組を好きな時に鑑賞
するのはそう簡単なことではなかったので、これでもなかなか有難いシロモノ
だったのだ。

 余談だが、後に「くるくるびでお」というものも出たが、何もテレビが録画
できるわけではなくて、それまでは覗き穴を覗く方式の為に一人でしか楽しめ
なかったくるくるてれびを据え置き型にして小さなモニターを装備し、みんな
で一緒に見れるようにした、というものだった。


 これが「くるくるてれび」のレビューなら、この辺で終わってしまってもい
いのかもしれないが、今回紹介するのは「くるくるてれび」ではなくて「プレ
イディア」である。
では何故、冒頭とこんな話をしたのかと言えば、早い話が、このプレイディア
というハードに対しておいらの持つイメージが「くるくるてれび」に非常に近
いからなのだ。


 プレイディアが発売されたのは1994年、PS,SS,PC-FXや3DOと同世代というこ
とになる。
内容的には、CD-ROMを搭載したゲーム機であり、それだけで言えば他の次世代
機と何ら変わることのないハードなのだが、このプレイディアというのは他の
ハードとは一線を画したハードで、厳密な意味で「ゲーム機」と言えるのかす
ら微妙なところだとおいらは思っている。


 プレイディアのユーザーターゲットは小学校低学年くらいまでの子供に絞ら
れており、ソフトの方もアニメーションものばかり。
例えばドラゴンボールやセーラームーンなど当時子供達に人気のあったアニメ
ーションのプレイディア用タイトルは多く発売されたが、いわゆる普通のゲー
ムは発売されなかった。
発売されたアニメタイトルの多くは、実際のアニメーション動画をテレビに表
示させ、ある場面でプレイヤーにコントローラーの入力を促し、時間内に正確
に入力することができれば次のシーンへと進む・・・という、いわゆるLDゲー
ムタイプのものが主流になっている。

 この為、例えばこの当時多くの次世代ゲーム機に移植されたストリートファ
イター2がプレイディアで出るようなこともなく、基本的には他ハードと競合
することはなく独自の路線を切り開くべき発売された、これはこれでなかなか
に夢のあるハードだった筈なのだが、率直に言って「案の定」発売から1、2
年で市場でこのハードの話を聞くことはなくなり、ソフトもお目にかかる機会
はなくなっていった。


 どうして普及しなかったのか、と言われれば、つまるところそういうものが
求められていなかったからだ、と答える以外にはないのかもしれない。
確かに複雑なゲームのルールが分からない子供達にとって、プレイディアとい
うゲーム機はある部分では魅力的だっただろう。
にも関わらず、例えば現在のゲームボーイアドバンスのように少年層に圧倒的
な支持を得るハードとなり得なかったのは何故なのか。

 平たく言えば、「それ」しか出来なかったから、ではないだろうか。
どういうことかといえば、例えば、プレイステーションで、このプレイディア
が展開したような子供向けのアニメソフトシリーズを展開していればある程度
は定着したかもしれない。
一家族を例に取るとお父さんが「みんなのゴルフ」をやり、お兄ちゃんが「ド
ラクエ」をやって、幼稚園に通う弟がプレイディア的なソフトで遊ぶという住
み分けが可能だからだ。

 ところが、プレイディアというのはハードぐるみ子供向けで、それ以外の可
能性のないハードだった。
プレイディアのターゲットユーザーたる小さな子供がウン万円を握り締めてゲ
ーム屋にプレイディアに買いに走ることはないだろうし、この次世代ブームの
最中何か一台ゲーム機を買おう、という場合、プレステやサターンを差し置い
て子供の為にプレイディアだけを買うというのは無理があるし、その小さな子
供達ですら数年後にはプレステやサターンのソフトの方に魅力を感じ始めてし
まうだろう。

 また、本来、こういうものの購買層は、子供当人ではなく、その子供のお爺
ちゃんやお婆ちゃんなのだが、残念ながら、そういった年齢の層にプレイディ
アの存在はあまりにも知れ渡っていなかったし、そうでなくてもその年齢の人
がこの時期数多く発売された「次世代ゲーム機」から一台を選んで買うという
のは、相当に大変なことだっただろう。

 また、冒頭で書いた「くるくるてれび」が当時の子供達にとってある程度魅
力的であり得たのは、当時の家庭にビデオデッキが普及していなかった為であ
り、「くるくるてれび」はゲーム屋で家電店ではなく「おもちゃ屋」に置いて
あって、コンピュータではないので、お爺ちゃんやお婆ちゃんにも買いやすか
ったという点があった。

 というわけで、本来想定されていた子供達の人気を得ることは残念ながら出
来なかったプレイディアだったが、これで全てが終わったわけではなかった。
実はこの当時に発売された次世代ゲーム機の中で、一台だけこのプレイディア
とよく似た商品戦略を打ち出したハードがあったのだ。
PC-FXである。
こちらはある程度、普通のゲームのことも考えられたハードだったが基本的に
は子供向けとは全く別の意味でアニメ系ゲームがメインに据えられたハードだ
った。

 プレイディアにも後に実在のアイドル声優を主人公にした一連の「プレイデ
ィアV」なるシリーズが発売され、PC-FX的な方向で細々ながらその命脈を繋い
でいくことになる。



AXL 2003

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