レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ファミリーコンピュータ専用ディスクシステム」
     〜歴史を変えたかもしれないディスクシステム構想〜

Maker :任天堂
種 別:ファミリーコンピュータ専用増設ディスクドライブ
価 格:1万5000円
発売日:1986年


 おいら的には「ゲームの歴史を変えたかもしれない」ハードだと思っている。
1986年はファミコンブームのピークの頃だが、ファミコンには一つの弱点があ
ったのだ、それはROM容量によるゲームのデータ量の制約。
その頃のROMカートリッジ容量は、256キロビット、バイト換算だと32キロバイ
トに過ぎない。
この頃のパソコン、例えばPC-88シリーズは、一枚で320キロバイトのデータ量
がある2Dフロッピーディスクでのゲーム供給が一般化していた。
しかも、標準のゲームサイズでも、ディスク2枚組。
大作になると、3枚4枚とフロッピーの枚数を増やすことで柔軟に対応してい
た。
しかし、ファミコンはROMカセット方式なので途中での入れ替えが一切きかない
ROMを入れ替える為には電源を切らねばならず、電源を切れば一切のデータが消
えてしまう。
また、データの保存がきかない事から、RPGやシミュレーションゲームなど
も不得手だった、ディスクシステム登場以前、唯一データ保存が可能だったの
はファミリーベーシック専用カセットだけだったが、これは普通サイズのRO
Mカセットの2倍もあろうかという大きさのROMカセットに炭酸電池を1本
いれてデータを保持するという大掛かりなもので、コスト面から量産には向か
なかったようで一般化はしなかった。


 データ容量の少なさと、セーブができない、という欠点を補うために任天堂
がリリースしたのが「ファミリーコンピュータ専用ディスクシステム」である。
ディスクシステムのはファミリーコンピュータ用増設ディスクドライブで、こ
のハードをファミコンに増設することにより、専用のディスクでのゲーム供給
が可能になる。

 このディスクは現在のフロッピーディスクとは別物で、大きさも標準的フロ
ッピーディスクよりも一回り小さく、両面にデータ保存が出来る点も異なって
いる、また、データ容量は両面合わせて800キロビット、つまり100キロバイト
で、現在のフロッピーの14分の1である。
実はこれより前、パソコンの、主にMZシリーズ等で採用されていたクイック
ディスクと同じものらしい。

 しかし、当時のファミコンのROM容量が256キロビットだった為、容量は両面
合わせて約3倍になり、容易にセーブも可能になった。

 しかも両面にデータが書きこめるという利点から旧来の256キロビット程度の
ゲームであれば、A面B面にそれぞれ別のゲームを書きこむことも可能である。

 そしてディスクシステムの極めつけが「ゲーム書き換えシステム」だ。
ROMカートリッジは一度焼きつけたデータは絶対元に戻せないが、ディスクシス
テムのゲームは何度でも別のゲームに書きかえられる。
しかも、おもちゃ屋などで気軽に好きなゲームに書きかえられ、書き換え料は
一律500円(一部ブック型説明書のついたゲームは説明書代100円が別途
必要)だった。

 ディスクカード一枚は2000円で販売されており、そのディスク一枚あれ
ば500円で最新ゲームに書きかえられるというシステムは画期的であった。
ファミコン用ROMカートリッジの定価が4500円以上した頃の話である。


 現在でも新品のゲームは定価5000円以上であり、もしこのディスクシス
テムが定着していれば、ゲームの歴史は確実に変わった、とおいらは思ってい
るのである。

 しかし、ディスクシステムは市場に定着しなかったし、ゲームの歴史も変わ
らなかった。
理由はいくつかあるが、まず最大の理由は、メガロムの登場である、技術の進
歩と共に、1メガビット(1000キロビット)以上の容量を持つROMカートリッジ
が開発され、ディスクシステムの大容量という利点が消えてしまったのだ。
メガロムは時代と共に1Mビットから始まり、2メガ、4メガと巨大化してい
ったが、元々容量が固定されているディスクシステムは800キロビット以上の容
量を持つことは出来ず、むしろ小容量、時代遅れといったイメージにまみれて
しまったこと、さらには、バッテリーバックアップの採用により、ROMでも手軽
にセーブが出来るようになったこともディスクシステム衰退の一因になってい
る。


 ただし、ディスクドライブという思想は、64DDに、書き換えという思想
はスーパーファミコンROMカセット書き換えシステム"NINTENDO POWER"など
に現在まで受け継がれている、とはいうものの、本来ドラゴンクエスト7をキ
ラーソフトとしてリリースされる予定だった64DDは、エニックスがPlay
Stationに移ったことにより、かなり中途半端なまま、一部でリリースされた
に過ぎず、"NINTENDO POWER"で書きかえられるゲームソフトも、スーパーファ
ミコンソフトやゲームボーイ止まりで現在の主力ゲーム機であるNINTENDO64に
は対応していない。


 しかし、時代がディスクシステムからROMへと逆行したことにより「500
円で書き換え」られたはずのゲームの単価は再び急騰することとなった。
1本ゲームが1万円でも珍しくない時代はPlayStation登場まで続くこととな
る。PlayStationの登場により、ソフト価格は安定したとはいっても、1本5
000円は下らないのが現状である。
再び安価で気軽にゲームを書きかえられる日はくるのだろうか?



AXL 2001

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