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PC-FX
 〜PC-FXとは何だったのか?〜

Maker :NEC-HE
発売日:1994年12月23日
価 格:4万9800円
種 別:CD-ROM内蔵型家庭用テレビゲーム機


 94年12月は次世代ゲーム機戦争と呼ばれた月である。
僅か一ヶ月の間に、SONYからはプレイステーション、セガからはサターン、NE
C-HEからはPC-FXが発売されている。
この次世代ゲーム機発売ラッシュから大きく遅れを取った任天堂、将来性やビ
ジョンが不明確だった3DOはともかくとして、当面の勝者はこの3機種の熾烈な
デッドヒートにより決せられていくだろう・・・と、おいらは思っていた。

 しかし、おいらが3強の一角と予想していたPC-FXはあまりにもあっけなく勝
利者レースからリタイアしてしまう。
これは一体何が原因だったのだろうか?

 ちなみにこの時期においらが買ったゲーム機は2台。
プレイステーションとセガ・サターンである。
プレイステーションを購入した理由はリッジレーサーとA4がやりたかったこ
と。特にA4の車窓モードは当時としては夢物語の実現だった。
サターンを買った理由は、バーチャファイター・・・ではなく、実は真説夢見
館とRAMPOが目当てだった。

 よほど資金に余裕があればPC-FXも買っていたかもしれなかったが、PC-FXに
はおいらにとって本体を買ってまでやってみたいと思わせるソフトが無かった
のだ。


 PC-FX発売前、FXの前身に当たるPC-Engine CD-ROM2は「ギャルゲーハード」
と呼ばれていた、本体そのものとしては少々時代遅れになりつつあったハード
だったが、その当時CD-ROMを搭載したゲーム機は、PC-EngineとMEGA DRIVEし
かなく、しかも事実上、CD-ROM一体型のハードを主力とし、CD-ROMでのソフト
供給をメインとしていたのは、PC-Engineだけである。
ここにPC-Engineの強みがあった、大容量でゲームのキャラクターを声優の声
で喋らせることが出来るPC-Engineは、アニメ系のゲームにとっては当時最高
の環境だった。
その為、自然とアニメファンがユーザーとして集まり、またリリースされるソ
フトの多くがギャルゲーやアニメ系のソフトだった。

 そしてそのPC-Engineの後継機として開発されたのがPC-FXである。
PC-FXの設計思想は2Dグラフィックに対する一点集中である。
その当時に発売された次世代機の内、PC-FXを除く全てのハードが3Dグラフィ
ックスつまりポリゴンでの描画能力の優秀性を強調したのに対して、PC-FXは
始めから3Dを捨て、2Dグラフィックスの表現能力に重きを置いた。
その処理能力は、1秒間に30フレームの2グラフィックスの書き換えが可能で
あり、2Dグラフィックに限っていえば、次世代ゲーム機中最高の性能である。

 最近はよく分からないが、おいらが子供の頃、ドラえもんのアニメは秒間
25フレームで構成されているという話を聞いたことがある。
つまり、秒間30フレームというのは、アニメ系のゲームをかなり意識してい
る。NEC-HEはPC-Engineのコアユーザーであるアニメファンをそのまま、PC-FX
へと移行させようという戦略を取ったのである。

 そしてこの戦略そのものはある程度成功している。
にも関わらず、PC-FXが生き残れなかったのは何故か。
これはおいらの勝手な推論に過ぎないが、PC-EngineとPC-FXでは周囲の環境が
違い過ぎたことが原因の一つではないだろうか。
PC-Engine時代は、CD-ROMソフトをメインにソフト供給を行っていたのはPC-En
gineだけであり、その意味ではCD-ROMを利用したギャルゲーは、PC-Engineの
独占市場だった。
しかし、PC-FXのライバルである、プレイステーションやサターンはFXと同じ
CD-ROM搭載機である、いかにPC-FXが2D処理能力に長けていたとしても、素人
目には見分けがつかないくらいのクォリティのアニメの再生は充分に可能で
ある。
その為、アニメ系やギャルゲーを求めるユーザーも必ずしもPC-FXでなくても
ソフトさえ出れば、本体はプレイステーションでもサターンでも良くなってし
まった。

 また、本体の価格設定にも問題があった。
FXは4万9800万円だが、それより前に発売されたプレイステーションは3万9800
円で発売されている、実はセガサターンも4万9800円での発売を予定していたが
プレステーションの値段設定に合わせて発売日直前になって本体価格を4万4800
円に下げ、その後すぐに3万9800円に値下げを行っている、。
その後、プレイステーション、セガサターンが熾烈な本体価格の値下げ競争を
行った後もFXの価格は改定されることはなかった。
これは恐らくFXのハードの設計に無駄があり過ぎた為だと思われる。
パソコンメーカーでもあるNECは、FXと同社のパソコンPC-9801シリーズの連動
も販売戦略の一つに盛り込んでおり、その為かPC-FXは拡張性を重視した設計に
なっており、将来のグレードアップに備え、なんと拡張用スロットが3つもつ
いていた。
パソコンがゲーム機に比べて割高なのは、予めユーザーが用途別に使い分けら
れるように汎用の拡張ポートの類を多く装備しているのが原因の一つである。
それにより、拡張性や汎用性を高めることは出来るが、それが価格に跳ね返っ
てくるのは以前にも書いた通りである。

 PC-FXがこのパソコン的な発想でハードを設計したことが、本体価格を吊り
上げ値下げも難しく要因なのではないだろうか。


 次にPC-FXのハードとしての問題。
始めからアニメゲーム機としての宿命を背負わされたPC-FXは、リッジレーサー
やバーチャファイター等の登場により家庭用ゲームの主役となり始めたポリゴ
ン描画能力に欠けていた。
これにより、リリースされるゲームのジャンルにも汎用性が乏しく、またプレ
イステーションサターン間では比較的に簡単に移植が可能なソフトでも、ハー
ドそのものが特殊なFXでは難しい。
その為にソフトラインナップが偏り、ハードが特殊なことから、サードパーテ
ィが複数のハードで同じゲームを開発して売るような場合にも敬遠されがちな
ハードである。
NINTENDO64にも別の意味でこれと同じような問題点があるが、任天堂は自身が
強力なソフト開発メーカーでもあり、マリオ、ゼルダ、そしてポケモンなどの
人気ソフトを自前で供給することによって、なんとか面目だけは保つことは出
来た。

 PC-FXが頼みの綱としていたのは、ハドソンで、PC-FXのキラーソフトは本来
天外魔境3になるはずだったが、開発が遅れ、さらにはじわじわとFXの市場が
先細りした結果、FXで3をリリースする前に、サターンで4をリリースすると
いう珍事が発生し、3はそのまま発売中止となってしまう。

 NECはPC-FXの「自然消滅」後、後継機を発表することなくハードメーカーと
してはゲーム市場から無言の退場をしてしまったが、PC-Engineがまだアーケ
ードゲームを家庭で遊ぶ為のハードだった頃のユーザーとしては寂しい限りで
ある。



AXL 2001

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