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NINTENDO 64
        〜任天堂帝国の誤算〜

Maker :任天堂
発売日:1996年6月25日
種 別:ROMカートリッジ式家庭用テレビゲーム機
価 格:2万5000円


 おいらにとってこのハードは実質的に「マリオ64専用機」だった。
そのくらいマリオ64というゲームが面白かったということもあるが、少なく
とも初期においてはそれ以外にめぼしいソフトがなかったのも事実である。

 他のゲーム機レビューで何度も書いてきたことだが、64は発売時期を完全に
逸してしまったハードである。
64が発売された時点ではゲーム業界のシェアは殆どどうにもならないところま
で固まりつつあった。
ただし、もし任天堂が64をプレイステーションやサターンと同時期に発売出来
たとしても、このマシンがシェアNO1の地位を確保できたかどうかは正直疑
わしいと思う。

 何故なら、次世代ゲーム機の中にあって、64だけがCD-ROMではなくROMカート
リッジでのソフト供給という選択をしてしまったからだ。
いかにスーパーファミコン当時の任天堂のシェアが堅いとはいっても、大容量
のCD-ROMを相手にROMカートリッジで対抗するのはあまりにも分が悪過ぎる。
任天堂はスーパーファミコンの後継機をまずCD-ROM搭載機で計画した後、これ
を白紙に戻し、次に磁気ディスクシステムでの計画を勧めるがこれも開発が間
に合わなかったものか、ROMゲーム機である64を単体で発売している。

 一時はいずれ、ファミリーコンピュータディスクシステムのように、64専用
磁気ディスクシステムを発売し時期ディスクによるゲーム供給を行うというア
ナウンスをしていたが、これも事実上頓挫してしまった。
その理由として考えられるのは、64DD(磁気ディスクシステム)のキラー
ソフトにするはずだったエニックスのドラゴンクエスト7がプレイステーショ
ンに流出してしまったことだろう。

 しかし、おいらは64本体よりは、64DDに期待して本体を購入したので
ある、今となっては栓の無い話だが、64DDは圧倒的な可能性を秘めたゲー
ムマシンになる、とおいらは踏んでいたのだ。
確かに任天堂が採用した磁気ディスクシステムの容量はCD-ROMの10分の1であり、
ROMよりは大容量とはいっても、ゲームそのものボリュームの点では見劣りがす
る。
しかし、DDの強みは、普通のゲームに比べて途方もなく多きなセーブデータ
を持つことが出来る。
DDはCD-ROMと違い読み書きが自由なので、例えば64Mバイトのディスクに
32Mのゲームをデータを持つゲームをいれた場合、残りの32Mバイトの空
いた空間をセーブデータとして利用できる。

 例えばプレステーションの場合、CD-ROM一枚のゲームでデータ量は最大65
0Mバイトだが、セーブデータに関しては、メモリーカード1枚を丸ごと使っ
たとしても1Mビット、つまり256Kバイトしかない。
それをさらに15ブロックに分けてつかっているのだから、平均的なゲームのセ
ーブデータ16Kから48Kバイト程度だろう。

 例えばドラゴンクエスト7の場合、セーブした時に保存されるデータ、レベ
ルを始め所持金、パラメータ、アイテム、イベントの進行度などがこの48K程度
のデータに格納される。
逆に言えば、最大256Kバイト以上の複雑なセーブデータを要するゲームはプレ
イステーションでは不可能ということである。

 64DDが32Mをゲームデータ、32Mをセーブデータとして使えた場合
極端に言えば、ゲームスタート時に毎回シナリオをランダムに作成してくれる
くらい自由度の高いゲームを作ることも可能だったのである。
 実際、64DD発表時の64DD用ドラゴンクエスト7でのプランはこのD
Dの可能性を多いに示唆した内容だった。
これが実現していれば今までとは全く違った、具体的に言えばアートディンク
がパソコン版で示したルナティックドーンをさらに洗練させたような次世代ゲ
ームの登場も夢ではなかったのだ。

 しかし、64DDは中途半端のままネット連動というマイナー志向のハード
としてリリースされ、成功したハードとは言えないままに終わってしまった。

 では、64単体は?というと、スーパーファミコン時代の任天堂のハードとし
ては考えられないくらいの苦戦を強いられている。
64には、マリオ64を始め、ゼルダの伝説など超大作といわれるソフトが少な
くないが、その殆どは全て任天堂が自社で発売したソフトであり、いかにサー
ドパーティに恵まれていないかが分かる。
ただ、任天堂にとって幸いだったのは、爆発的ポケモン人気に支えられて、ポ
ケモン関係のゲームに引っ張られる形である程度のシェアを確保している、と
いう点だろう。

 ちなみにおいらは今だかつてポケモンというゲームをプレイしたことがない。
いい歳をして「ポケモンゲットだぜぇ!」などという事が言えるかっ!という
のが主な理由だが、その為、子供の頃夢中になった任天堂のゲーム機がポケモ
ン如きに引っ張られて生き長らえているというのは、正直に言ってしまうと面
白くはないのだ。
しかし、やりもしないで「ポケモンなんてガキのおもちゃさ、任天堂にはマリ
オがいればいいんだっ!」などと言ってしまうあたり、もしかするとおいらも
もう歳なのかもしれない・・・という妙な感傷がわいてきたりして、ブルーに
ならなくても良いところでブルーになってしまうのであった。



AXL 2001

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