レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

Dreamcast
       〜アーケード最強の遺伝子〜

Maker :SEGA
発売日:1998年11月27日
価 格:2万9800円(発売時)
種 別:GD-ROM(容量:約1GB)式家庭用テレビゲーム機


 32bit次世代ゲーム機闘争でプレイステーションに敗れたセガが失地挽回を
期し、文字通り社運を賭けてリリースしたゲーム機。
CD-ROMの2倍弱の容量を持つGD-ROMという新規格メディアを搭載し、さらに
は、33.6KBPSのモデムを標準で搭載し、読み込み速度は12倍速と、プレイス
テーションにあらゆる面で差を付けたマシンである。

 CMに自社の専務を出演させ、街中で「セガなんかダセェよなぁ、やっぱプレ
ステだよなぁ」という子供の噂話を聞いた専務が愕然とする、という自虐的で
型破りなCMで宣伝にも今まで以上に力を入れた。
ただ、おいらに言わせればコアなゲーマーはともかく、当時の世間一般の印象
ではまだそこまでダイレクトに「セガなんかダセェよなぁ」という空気はなか
ったので、「セガはダセェ」という印象を完璧に焼き付けたのはこのCMだった
ような気がしてならない。

 ドリームキャストは、性能面ではプレイステーションを凌いでいたが、それ
だけでドリームキャストがプレイステーションのシェアに食い込めるとはセガ
自身も思ってはいなかっただろう。
ましてや、ドリームキャストとセガ・サターンの間にはソフトの互換性が無い。
多くのソフト資産を抱え、負けたとはいえある程度のシェアを保っていたサタ
ーンを切り捨てるのは危険な賭けでもある。
その上、主要なサードパーティはがっちりプレイステーションが抱え込んでい
る為、ゲームラインナップにも不安が残る。
そこで、セガが打ち出したのは、インターネット接続機としてのドリームキャ
ストの商品価値である。
ドリームキャストには始めから、モデムが搭載されており、しかもインターネ
ットにも対応している、ゲーム機でなくてもインターネットが気軽に利用でき
るマシンとしては2万9800円という価格設定は魅力的かもしれない。

 元々、セガにはセガネットというものがあり、メガドライブ時代からパソコ
ン通信を利用してゲーム配信や、ネット対戦等のサービスを提供してきた実績
がある。

 ゲーム機のみならず、インターネットツールとしてドリームキャストを位置
付けたところに、ドリームキャストの強みがあった・・・かに見えたが、結論
からいうと、ドリームキャスト発売から僅か2年2ヶ月後の2001年1月末日にセガ
はドリームキャストの生産中止を正式決定し、ハードメーカーとしては家庭用
ゲーム機から撤退することとなる。

 ドリームキャストの敗因はいくつかあるが、まず最初においらが言いたいの
はファミコン時代から各ゲーム機のレビューを書いて思う事だが、ゲーム機に
ゲーム機以外の特徴を持たせようとしたハードはことごとく失敗している。
3DOはビジョンを優先させすぎて逆にまるで明確なビジョン無いマシンだったし、
ホビーパソコンは家庭用ゲーム機に完膚無き迄に叩き潰された。
PC-FXは、パソコンとの連動を意識し過ぎて、ゲーム機としての単価を吊り上げ
る結果となった。
ゲーム機をゲームのみに特化させることを最初に実践した任天堂ですら、純粋
なゲーム以外のプロジェクト、つまり、ファミリーベーシックを皮切りに、フ
ァミコンロボット、ディスクシステムを利用した通信、BSサテラビュー、64
DDネットに至るまで成功したといえるものはひとつもないのだ。

 特にインターネット接続に関してはドリームキャストよりも先にピピン@と
いうマシンがゲームも出来る低価格インターネット接続機として発売されたが
市場からはすぐに消えている。
さらに、ドリームキャストのインターネットは環境は携帯電話よりは良いかも
しれないが、パソコンには劣るという中途半端なもので、そもそも33.6kbpsと
いうモデム速度がインターネットに接続するには少々力不足である。
ただ、ドリームキャストに関して言えばネット接続は付加価値であり、ゲーム
機そのものとしては優秀なハードだったし、販売価格もその性能からいえば充
分納得し得るものだった。

 では、何故ドリームキャストが生産中止に追い込まれたのか?
酷な言い方だが、ドリームキャストはおいらにとっては何から何までが中途半
端なマシンに映るのだ。

 まず、発売時期もプレイステーションが安定期に入った頃で、ユーザーにと
って、ハードの買い替え需要は低かった。
性能面でもドリームキャストはプレイステーションより性能は上だが、PS2
には明らかに劣っている。
プレイステーションの後継機がDVDをメディアとして使用することが分かって
いながら、ドリームキャストはGD-ROMというメディアを搭載している。
GD-ROMはCD-ROMの2倍弱の容量があるが、DVDに比べると5分の1程度の容量しか
無い、とすれば、ソニーがPS2を発表した時点でハードの優位性が覆される
のは分かっていたはずである。

 もしドリームキャストがある程度の成功を収めていたらセガは、ソニーがP
S2をリリースした頃にもさらにもう1台新ハードの投入を考えていたのだろ
うか? だとするならば、リリースのスパンがあまりにも短過ぎる。
ドリームキャストを対PS2をも見越して設計したとすれば、あまりにも甘さ
が目立つハードである。
一時的に、性能面でプレイステーションの優位に立ったところで、サードパー
ティを引き入れシェア逆転が叶うほど甘い世界ではないはずであり、少なくと
も長年の経験からいえば、ソニーよりもセガがそののことを熟知しているはず
である。


 本体の生産中止が正式に決定され、これからドリームキャストというハード
が消えて行くのか、あるいはまた後期のPC-Engineのように独自にシェアを持
ったハードとして生き残るのかは興味があるが、1ユーザーとして思うのは、
セガが撤退したということは、今年半ば以降に予定されている任天堂のゲーム
キューブ、マイクロソフトのXボックス参入前くらい迄はPS2の本体価格は
1円も下がらないだろうな、という事である。



AXL 2001
(2003.10.25 「128ビットCPUを搭載し・・・」という文章を修正。
       dcの128ビットはCPUではなくグラフィックスチップの事を指し
              CPU自体は32ビットのもが使われているようです。)

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