レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「Nintendo DSは買いなのか?という問題」


 実は最近、地味に悩んでいることがある。
それは今年の末に発売が予定されている任天堂の携帯ゲーム機、Nintendo DS(
以下、NDS)を買おうかどうしようか、ということだ。
長い人生においてはかなりどうでもいい悩みであることは否めないものの、当
の本人が悩んでしまっている以上、今更止めることはできないのだ。

 新しく発売が予定されている携帯ゲーム機は、NDSの他にもPlayStation Por
table (以下、PSP)というSonyから発売されるものもあり、世間ではもっぱら
どちらが携帯ゲーム業界の覇者になるのかという議論がなされているようだが、
おいらは、あくまで個人的な見解としてPSPの方にはあまり魅力を感じていない。
PSPはいわば現行の据え置き型ゲーム機のスタンダードであるPS2の携帯版で、
単純にコンピュータとしての性能差でみればNintendo64クラスのNDSを凌駕して
いるのだが、逆にいうと、PSPとは「PS2を小さくしたもの」に過ぎず、「小さ
くしてどうするのか」という点がひっかかってしまうからだ。

 PS2のゲームが外で出来るようになりました、ということは確かに画期的な
ことには違いないが、現在の重厚長大化したゲームを「外で遊ぶこと」にさし
たるメリットが感じられないことがその理由だ。

 冒頭にNDS購入を考えている、などといっておきながら、こんなことを書く
のもどうかと思うが、少なくとも今までのおいらは基本的に外でゲームはしな
いヒトとして生きてきた。
最初のGameBoyの発売当初に物珍しさから購入し、旅行の際に持ってはいった
ものの、「電車の中でゲームをする自分のアレさ加減」に対し、おいら最高裁
が「アレにも程がある」という判決を出して以来、携帯ゲーム機とはすっぱり
縁を切った。

 そんなわけで、単純にPS2を外に持ち出そう、というPSPからの提案には個人
的にあまり魅力を感じられないのだ。
もっともPSPには、映像や音楽の配信などゲーム機以外の機能も与えられ、Sony
はPSPをいわば「21世紀のウォークマン」として位置付けたいようだが、今ま
でゲーム機として特化しなかったゲーム機で成功したものを知らないおいらに
とってはSonyのPSPに対するPSX(PS2機能付きハードディスクレコーダー)的な発
想が少々怖い気がする。
また、「音楽や映像を配信」とはいうものの、インターネットや携帯電話の世
界を見ても、「タダで配信される映像はまったくもって嬉しくないものばかり
だし、欲しいソフトを配信して貰うにはほとんどの場合、レンタルビデオ/C
D屋に行った方がマシ、的な金額がかかる」というセオリーが崩せない限りあ
まり期待はできないし、そもそも、この特性自体が既存の携帯電話とかぶりす
ぎているのが気になるところだ。


、ただし、この点はNDSにおいても「将来的に」と前置きした上で、インターネ
ットを解してNDSでチャットやボイスチャットができるようになる、という比較
的恐ろしげなアナウンスをしているが、おいらが着目したのはNDSのゲーム機と
しての特長である。

 NDSの最大のウリは、二画面構成になっているということだ。
実はこれ、据え置き型ゲーム機では、常識的に考えてまず不可能なことなのだ。
据え置き型ゲーム機はテレビゲーム機とも呼ばれるように、モニター部分を家
庭用テレビに依存している、その為にモニターに直接手を加えることが出来ず、
コンピュータそのものの性能で勝負するしかなかった。
平たくいえば、どんなに現在のゲーム機が優秀であっても、3つのスクリーン
を駆使したシューティングゲーム「ダライアス」を業務用と同じ迫力で楽しむ
ことはできない、ということなのだ。
その点、モニターを自前で用意できる携帯ゲーム機であれば、この問題をクリ
アすることが出来る、ゲーム機本体ではなくモニター側の問題に着目したNDSは
おいらにとって非常に興味深いハードに感じられるのだ。

 それ以外にもタッチスクリーンの採用や、GameBoy Adbvanceのソフトがその
まま走るなど魅力的な点も多く、仮にPSPかNDSのどちらかを購入するとすれば
・・・・ということであれば、おいらは間違いなくNDSを選ぶ。
詰まるところ、PSPは外に持ち出さなければメリットが感じられないが、NDSは
外に持ち出さなくともメリットを感じられるハードであり、外に持ち出すつも
りのないおいらにとっては魅力的なのはNDSだからだ。


 このようにはっきり断言できるなら、何も悩む必要などないのだが、そんな
NDSにも不安な点はある。
それは「画面を二つにしてどうするのか」という点である。
これこそNDSというハード最大の命題であり、NDSをGBAに続く大ヒット商品にも
すれば、バーチャルボーイに次ぐ「ナンじゃコリャ?」的殉職刑事にもしかね
ない点なのだ。
この点に関しては、任天堂側はあくまでも「たとえば・・・」とした上で、レ
ースゲームではドライバー視点画面とコース全景画面。
RPGでは、通常の画面と所持アイテム画面、また場合によっては二つの画面
をひとつとして利用することも可能であるとしているものの、何というか、「
別にそんなことの為に二つも画面はいらないのではないか」というのが正直な
ところなのだ。

 まだハードすら発売されていない以上、具体的なゲームでの運用方法は企業
秘密的な面もあるかもしれないが、ユーザーが想像する「今までできなかった
ことが可能になる凄さ」とはちょっとばかりポイントを外している感が否めな
い。

 タッチスクリーンにしても、実装されるというマイクにしても、確かに「今
までとは違ったゲームの登場」に対する期待感は沸くのだが、具体的な運用方
法は今ひとつ示されていない。
その殆どは「ゲーム開発者のアイディア次第で〜」という言葉で濁されていた
り、「将来的にはこんなことも・・・」という文句が後に続いていたりして、
即「これができるようになるんだ」という具体的なプランの提示は現時点では
驚くほど少ないのだ。

 ファミコンを購入して早二十年。
その間、幾多のゲーム機やパソコンに付き合い、苦楽を共にしてきたおいらは
ここで声を大にして言っておきたいことがある。
それは、殊、ゲーム機やパソコンにおいて「将来的にはこんなことができるよ
うになります」という言葉ほどアテにならないものはない、ということだ。

 極論すれば、日進月歩で進化を続けるこのテの商品に「将来」などありはし
ない。メーカーの言う「将来」とは「自分達の予想通りの売れ行きを、自分達
の予想通りの期間続けた場合の将来」でしかなく、それすら殆どの場合夢物語
で終わる上に、いざその「将来」が本当にやってきたとしてもその時には既に
遥か昔に打ち立てられた計画など時代にそぐわない没企画に成り下がってしま
うのだ。

 それが証拠に、過去に発売された殆どのゲーム機には、「結局何の為につい
ていたのか最後まで分からなかった拡張端子」というものがひとつやふたつは
あって、それらは忘れられた本体と共に今も日本全国の押し入れの奥でうらぶ
れた余生を送っているではないか。


 NDSの最も不安な点は、ハードの存在を左右する幾多の「異質な機能」の殆
ど具体的な運用方法が「将来」や「ゲームクリエイターのアイディア」に丸投
げされているという点に他ならない。
これはつまり現時点ではNDSが成功するか、しないかということも全く未知数
であるということなのだ。

 もっとも、GameBoy ADVANCEのソフトが使用できるNDSの場合、どう失敗した
としても、十年前のバーチャルボーイ程悲惨な目に遭うことはないかもしれな
いがPC-EngineでのSuper GLAFXの二の舞はあり得る。

 そんなわけで、発売までのあと半年ほどは、過去に出会った幾多のハードと
の喜怒哀楽をともなう思い出に浸りつつ地味に悩んでみようと思っている。



AXL 2004

HOME