レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

WWF スーパーレッスルマニア


Media :Super Famicom
Maker :アクレイム・ジャパン
種 別:プロレスゲーム
発売日:1992年


 プロレス団体WWF(現WWE)を題材とした海外製プロレスゲーム。
プロレス団体のオフィシャルゲームというのは、日本ではちょうどこの頃、つ
まりスーパーファミコン時代からリリースされるようになっていったが、娯楽
として日本よりプロレスが大衆に支持されているアメリカでは、既にファミコ
ン時代から、WWF,WCW等の団体オフィシャルゲームがリリースされていた。

 現在は、ザ・ロックを筆頭に、ストーンコールド・スティーヴ・オースチン
らを主力選手としているWWEだが、このゲームがリリースされた当時のスー
パースターは、ハルク・ホーガンや、マッチョマン・ランディ・サベージ、現
在も活躍しているジ・アンダーテイカーあたりだった。

 ゲームの内容は、上記三選手の他に、リージョン・オブ・ドゥーム(ザ・ロ
ードウォリアーズ)や、セッド・ジャスティスらを含む10選手の中から好き
な選手を選び、シングルマッチ、タッグマッチ、サバイバーシリーズ(4vs
4のタッグマッチ、ただし、どちらかのチームが全員フォール負け等で退場す
るまで試合は続く)の3種類のモードで遊ぶことができる。

 このゲームの長所は、グラフィックレベルが非常に高いということが挙げら
れる。当時発売されていた他のプロレスゲームと比べると際立って美しい画面
であり、さらに選手の動きが非常になめらかである。
その上、各選手の紹介写真は全て実写取り込みであり、選手毎の入場テーマ曲
コンピュータ音源ではあるが、全てBGMとして収録されており臨場感を高め
ている。

 また、アメリカのプロレスゲームということで、試合前に、リングアナがす
る選手をコールする等、日本のプロレスゲームには無いコダワリがある点も楽
しい。

 余談になるが、実はアメリカンプロレスの場合、当日発表されるのは試合の
組み合わせのみで、何試合目に誰と誰が戦うか、「順番」は観客にも明かされ
ていない、観客がそれを知ることが出来るのは選手の入場テーマが鳴り響いた
瞬間で、その瞬間にはじめて次に誰が出てくるか、を知ることになる。これは、
観客を盛り上げる為だが、その為、選手入場前の一瞬は客席がシーンと静まり
返り、入場テーマと共に一気に割れんばかりの歓声に包まれる。
逆にいうとその盛り上がりの「波」に乗る為には客にも誰がどんな曲をテーマ
曲にしているか、という知識が必要となる。


 さて、ここまではこのゲームの「長所」だ。
ここまでのレビューを読んで、「へー、この前中古屋のワゴンで見かけたけど
なかなか面白そうなゲームじゃん、今から買ってこようかな」なんて思ってい
る方はもう少し待って欲しい。

 このゲームには上記のような長所があると同時にとんでもない短所もまた含
まれているのだ。
短所の方は長所に比べれて数が少なく、それはそれで非常に良いことなのだが
その短所がまた決定的なのだ。

「全ての選手が全く同じ技しか使えない」

これがこのゲーム最大の短所である。
普通、どんなプロレスゲームであっても、選手毎の個性をつけるためにその選
手にしか使えない「必殺技」や「得意技」を最低ひとつは用意しているものだ
が、このゲームにはそれがないのだ。

 では、アメリカンプロレスにはそもそも必殺技という概念が存在しのか?と
いうと勿論そんなことはない。
最近のWWEならザ・ロックのピープルズ・エルボー、オースチンのストーン・
コールド・スタナーなど、その選手にしか使えない(使ってはいけない)必殺
技があり、さらにアメリカンプロレスの場合、必殺技のピンフォール率は日本
のそれよりも遥かに高い。
つまり、あのヒトがあのワザを使った場合、それで試合を終わらせなければい
けませんよ、という暗黙の掟が日本よりも遥かに厳しく、逆に言えばそれだけ
必殺技に説得力を持たせているのだ。

 それは、勿論、ハルク・ホーガン世代のこのゲームの当時でも同じことであ
り、ホーガンにはギロチンドロップ、アンダーテイカーにはツームストンドラ
イバーといった必殺技があった。
例外として、マッチョマン・ランディサーベージが必殺技としていたコーナー
最上段からのエルボードロップのみはこのゲームでも使うことができるが、こ
れは何もサベージの必殺技として設定されているわけではなく、ただ単に誰で
も使える一般技として、「たまたま」入っていただけに過ぎない。


 その上、このゲームで使える共通の技というのが今となっては、中技クラス
のもの迄しかないのも痛い。
ボディ・スラム、ヘッドバット、ブレーンバスター、パイルドライバー程度の
技しか使えない上に、技の総数も合計で15種類まではないと思われる。
その為に試合展開がまあ恐ろしいほどに単調なのだ。

 どんなに勝ち進んでいったところで、変わるのは、対戦相手の姿形だけで、
使う技はもとより、攻撃力やスタミナ迄も全選手共通などという、およそ90年
代に開発・発売されたゲームとは思えないやる気の無さなのだ。

 思えば、最初のプロレスゲーム、データイーストの「ザ・ビッグプロレスリ
ング」(1983年発売)以外の全てのゲームにおいて、全選手共通の技しか使え
ないなどということはまず考えられないことであり、その1年後のリリースされ
た「アッポー」ですら各選手毎に個性的な必殺技が設定されていたにも関わら
ず、このゲームにはそれがないのだ。


 最近は、CSなどの影響で日本でもアメリカンプロレスの認知度は上がって
きたが、それがなかった1992年。
ただでさえ日本ではマイナーだったアメリカンプロレスゲームで、内容はこの
体たらくなのだ。
実はおいらはこのゲームを発売日に新品購入してしまったのだが、僅か数ヶ月
でこのゲームの価格は暴落し、新品ですら既に千円代にまで下落している悲し
い光景を目にしてしまったのだ。



AXL 2002

HOME