レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

RAMPO


Media :SEGA SATURN
Maker :SEGA
種 別:実写アドベンチャーゲーム
発売日:1995年


 最近のおいらの個人的な悩みの一つに「セガサターン、3800円也は買いか?」
という問題がある。
3800円というのは地元のゲームショップでの中古セガサターンの販売価格のこ
となのだが、つまりは3800円出してセガサターンを買っておくべきか?という
ことを地味に悩んでしまっているのだ。
実は我が家には、まだ何本かセガサターン用のソフトが残してあるのだ。

 これは「捨てるのもの面倒くさかった」という一部のソフトを除いては、い
つか何かの機会がれば是非とももう一度遊んでみたい、というソフトであり、
具体的には、デイトナUSAとRAMPOがそれにあたる。
デイトナUSAの方は既にDC版が出ているので、本体をもう一台増やすくらい
なら、そちらを買った方がお得なのだが、RAMPOだけは恐らく再販される
ことはないだろから、どうしても遊びたくなったら、さらに部屋が狭くなり、
配線がぐちゃぐちゃになるのを承知の上で本体を購入するしかないのだ。


 さて、今回紹介する作品、RAMPOは1994年に公開された探偵小説の大家
江戸川乱歩を主役にした幻想耽美的な映画のタイトルであり、翌年、セガサタ
ーン用にアドベンチャーゲームとして登場している。
原作映画のRAMPOの方は、同じ映画がそれぞれ黛監督版と奥山監督版とい
うバージョン違いが二種類存在するという実に変わった映画で、当初は黛監督
版のみだった筈が当時の松竹にいた奥山和由が難色を示し、わざわざ別バージ
ョンを撮ったらしく、ビデオも二種類が存在する。
残念ながら、おいらはこの辺の映画業界の事情には全く詳しくないし、原作の
映画もゲームの後追いで奥山版を1本観ただけの知識しかないのだが、映画、
ゲームに共通している点は、江戸川乱歩が主人公であること、乱歩を竹中直人
が演じていること、ヒロインは羽田美智子であること、くらいでそれ以外の点
は肝心のストーリーからして全くの別物である。

 そして付け加えるならば、ゲーム、映画の両者の最大の違いは、とりあえず
ゲームの方が理解できる範疇で物語が収まっているということが非常に大きい。
こおいらの個人的な感想だが映画版(少なくとも奥山版は)の方は、乱歩自身
が自身の創作した登場人物である明智小五郎と出会うという、非常に嫌な予感
を禁じえない導入部に始まりもはや何を言っているのか皆目理解不可能な内容
で、乱歩作品が好きでそれなりに読んできたおいらですら、二度と再び観たい
と思うようなものではなかった。


 対してゲームの方は、導入部では乱歩自身が経営するアパートを舞台に、当
時乱歩の担当編集者だった横溝正史(香川照之)と共にそこで起こる事件の謎
を追うと共にゲームの基本的なルールを学ぶことが出来る。
この序章を経てゲームの舞台は大河原公爵邸へと移るが、これがゲーム本編に
あたり、公爵が姿を消してしまったという公爵夫人静子(羽田美智子)の依頼
に応じて大河原邸に潜む謎を追うこととなる。


 このゲームの特徴として、実在の俳優を使い、フルボイス、実写映像を駆使
しつつも背景の建物などは全て3DCGを使って描かれている、という点が挙
げられるだろう。
こういう手法はあまり他にはなく、実写映像とCGが織り成すゲーム世界には
不思議で独特の味がある。
また、ゲームは3Dで描かれた建物の中を移動し証拠品を探したり、人物を会
話することで進めていくのだが、このシステムも独特なものが採用されており
一般的なコマンド選択式ではなく、「はい」と「いいえ」の二種類のボタンの
みで行われる。

 その上、ボタンを押すタイミングも画面にそれを知らせるものは一切表示さ
れず、相手の人物がこちらの様子を伺っている時のみ有効となる為、慣れる迄
はかなり苦労する反面、慣れてしまうと今迄にない自然な会話を楽しむことが
できる。

 また前半部分には「二銭銅貨」「屋根裏の散歩者」「お勢登場」などの実在
の乱歩作品に対するオマージュ的な展開がいくつもあり、先にこれらの乱歩作
品を読んで置くとより以上にゲームを楽しむことができる。

 本編となる大河原公爵邸編では、勿論そこに住む公爵の家族や使用人達との
会話も必要だが、昔ながら「館ものアドベンチャー」的な謎がそこかしこに潜
んでおり、ゲーム自体に日数制限もある為、あまり時間をかけ過ぎると謎を解
明する前にゲームが終了してしまう。


 また、ゲーム終了時に乱歩は大河原公爵邸での経験を「探偵趣味」という小
説として発表し、操作の進行度によってその小説の世間的な評価という形を借
りて「甲、乙、丙、丁、戊」の五種類によってプレイ内容が評価される、とい
うなかなか面白いシステムもある。
ただ、反面マルチエンディングというほど大げさなものではなく、どのエンデ
ィングも少々あっさりしていて拍子抜けな上、事件を解明することが出来ても
乙止まり、というケースもある。
実際、おいらは何度もこのゲームで遊んだが、乙以上の評価はどうしても出す
ことが出来ず、長い間、甲エンディングでは今まで分からなかった真相が明ら
かになるものだと思い込んでいたのだが、どうやら事件の結末そのものは乙も
甲も同じらしい、という話を友人から聞いてがっかりした覚えがある。

 恐らくは、新ハード初期ソフトのということもあり、納期等の時間的制約も
大きかったとは思うが、この辺りをもう少し作りこんで貰えればさらに良いソ
フトになったでだろうことを考えると非常に惜しい一本である。



AXL 2003

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