レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

夢工場ドキドキパニック

Media :Family Computer DiskSystem
Maker :任天堂(開発)フジテレビ(販売)
種 別:スクロールアクションゲーム
発売日:1987年


 後に主人公のキャラクターを変更しアメリカで「スーパーマリオブラザーズ
2」として発売され、さらには「スーパーマリオUSA」のタイトルで日本に
も逆輸入されたゲームである。
スーパーマリオUSAに関して言えば最近にもゲームボーイアドバンス用ソフ
ト「スーパーマリオアドバンス」にも収録されているしスーパーファミコン時
代の「スーパーマリオコレクション」にも収録されるなど、出荷本数を見れば
かなりのメジャーソフトといえるゲームであり、元になった本作「夢工場」に
してもレトロゲーマーにとっては誰でも知っているような名作アクションゲー
ムといって差し支えないだろう。

 おいらもこのゲームがディスクシステムで発売された1987年夏、おいらにと
っては中学三年、受験前の夏休みという人生に於いてなかなかに重要な時期に
若干の焦りと、大勢を占める開き直りといった、種々様々な思いを胸にドラキ
ュラ2・呪いの封印や消えたプリンセスといった他のゲーム群ともども清く正
しく遊び倒してしまったソフトなのだが、あれから16年。
本レビューを書くにあたり、ゲームの内容云々を紹介する前にどうしてもおい
らは書いておきたいことがあるのだ。

 それは、「そもそも夢工場とは何なのだ?」ということである。
当時を知らない人の為に、今おいらが持っている断片的な知識のみで「夢工場」
を語るとすれば、それはそもそもフジTVが1987年夏に結構な金を使って大々
的に行った何らかの大規模イベントであり、本ソフトもそのタイアップとして
発売されたもので、他にも「アイドル夢工場」なるアイドルグループも存在し
ていたような気がするのだが、実際のところ夢工場なるイベントが何だったの
か?と問われると、それ以上はおいらにも答えようが無い。

 何故ならおいらは今も昔も「流行りもの」と呼ばれるものに滅法弱く、お台
場が賑わい、六本木ヒルズに若者達が殺到する2003年にあっても頭の中は「ハ
ァ、テレビもねぇ、ラジオもねぇ、車もそれほど走ってねぇ」という人生を真
っ直ぐに生きているおヒトだからである。

 そんなわけで1987年当時、世間を賑わせた「夢工場」に対しても現在のおい
らが「六本木ヒルズ」に対して持つ興味以上のものを見出せる道理もなく、早
い話が「何も知らない」のだ。

 しかし、このゲームそのものが「夢工場ドキドキパニック」を名乗っている
ことや、後に「マリオUSA]としてマリオシリーズの仲間入りをしたにも関
わらず、これ意外のマリオシリーズとはかなりテイストの異なる、ヒトコトで
言えばやけにおどろおどろしい敵キャラクターのデザインはそのまま残された
り、他の任天堂ゲームとは一線を画すアラビアンテイスト。
そもそも夢工場に登場した主人公は一家は一体なんだったのか?という根源的
な命題を解く鍵はイベントとしての「夢工場」の方を紐解かないことには永遠
に解けないのではないかと思い、おいらはイベント「夢工場」の研究にとりか
かったのだった。


 そして約一時間後・・・。
おいらはインターネットに断片的に残された16年前のひと夏の熱狂の残骸をあ
る程度回収することに成功した。
夢工場とは早い話が「万博」であった。
実にバブリーな響きである。
古くは大阪万博、85年のつくば万博など、実態はともかく存在感だけで人々を
一時的な熱狂へと駆り立て、終わってみれば何だったのかよく分からないこと
で有名なあやかしの饗宴、万博。芸名はエキスポ。
「言葉の意味はよく分からんが、とにかく凄い自信だ!」
まさしくそれ以上でもそれ以下でもない存在、万博。合言葉は「パビリオン」

 おいら自身、「万博」なる言葉にあまりいいイメージを持っていないので、
のっけからこんな書き方になってしまったが、とにかく夢工場とはフジサンケ
イグループ主催の万博であり、開催期間は1987年7月18日から同年8月30日まで
の43日間。
東京・大阪で同時開催され、この間の入場者数は実に570万人。
ちなみに入場料は大人3,000円で、会場内には各企業協賛のパビリオンが立ち
並び、タイアップとして女性アイドルグループの「アイドル夢工場」や男性
バンドの「夢工場」という既にして類似品のような芸能人を輩出し、ひと夏の
熱狂と共に幕を閉じた正式名称「コミュニケーションカーニバル・夢工場’8
7」というのがイベントとしての「夢工場」の正体であった。


 良かった良かった・・・などと言いながらここで終わってしまうともはや何
なんだか分からないので、肝心の「ドキドキパニック」に登場するキャラクタ
ーの関連性についてだが、早い話が「ドキドキパニック」に登場するイマジン
君をはじめとする主人公一家そのものが「コミュニケーションカーニバル・夢
工場’87」のイメージキャラクターであった・・・という実になんとも当た
り前過ぎて面白くもなんともない結論を掴んでしまった。

 ちなみに「ドキドキパニック」の敵キャラクターの多くに共通デザインであ
る「デスクマスク」に関しても、夢工場のパンフレットやテレホンカードなど
のグッズにこれと類似したフェイスペインティングが登場することから、基本
的にはあのゲームのキャラクターや世界観はかなり忠実にイベント「夢工場」
をイメージしたものであった・・・というのが真相のようだ。


 勢い込んで調べた割に期待したほどの成果が得られなかったのは実に残念至
極だが、米国版「スーパーマリオブラザーズ2」であっさりと主役の座を奪わ
れてしまった悲運のイマジン一家の出自が分かっただけでも良しとしてゲーム
の紹介に移ろう。

 イマジン、リーナ、パパ、ママの四人がさらわれた双子を助ける為に冒険に
出るというのがプレ・ストーリーでプレイヤーは四人のイマジン一家の内に好
きなキャラクターを選んでプレイキャラにすることが出来る。
後にマリオシリーズに取り込まれた本作だが、スピード&ジャンプアクション
を基本とするマリオシリーズとは一線を画しており、「引っこ抜き」というア
クションがメインとなっいる。
具体的にはステージ内にはカブなどの野菜が埋まっており、これを引っこ抜き、
敵にぶつけることで敵を倒すことが出来る他、一部のキャラクターは頭の上に
のった状態で引っこ抜くこともできるようになっている。
スーパーマリオのような爽快感は薄いが「引っこ抜く」という動作には何とも
いえない中毒性があり、一度やったらなかなか忘れられない印象的なゲームに
仕上がっている。

 また、マリオシリーズが右に進むことを前提としたコースになっていたのに
対して本作では、マップが立体的な作りになっているのも特徴の一つでその為、
マリオシリーズと比べると思考性の強いゲームになっているのも特徴の一つだ。


 このソフトがどういった経緯で米国版「スーパーマリオブラザーズ2」のタ
イトルを冠せられたのかは分からないが、もし仮に「マリオ2」としてリメイ
クされることがなかった場合、「夢工場」の版権の問題などもあり、その後お
いそれとリメイクされることもなく、幻の名作ソフトのまま終わっていた可能
性も充分に考えられる。
そういう意味では、マリオ2へのアレンジ移植はこのゲームにとってもユーザ
ーにとっても幸せなことだったのかもしれない。



AXL 2003

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