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トワイライトシンドローム-探索編・究明編-


Maker :HUMAN
Media :PlayStation
種 別:ホラー・アドベンチャーゲーム
発売日:1996年


 今は亡きHUMANが1995年に発売した2Dホラーアドベンチャーゲーム。
ゲームの内容は、女子高生三人が学校や街を舞台に心霊スポットを探検し、噂
の真相を突き止める、というもので、探索編がいわば前編で、後に発売された
究明編とあわせてはじめて1本の作品となる。

 実はこのゲームのことは探索編発売当時から知っていた。
にも関わらずホラーゲーム好きなおいらが購入に踏み切らなかったのは、-探索
編-といういかにも未完結を匂わせるサブタイトルにあった。
本来1本であるゲームを2前編後編に分けてしまえば、1本あたりに2本分の値
段の価格を払わなければならない、という理不尽さもさることながら、こういう
ゲームの常石通り、前編が発売されてからしばらく時間を置いて後編を発売する、
というHUMANの手法に反感を抱いたからである。
特にストーリーや雰囲気を楽しむアドベンチャーゲームに於いて、前編をプレイ
してから一定以上の時間を置いて後編をプレイするのは辛いものがある。
作品から醸し出される雰囲気や、ひどい時はストーリー、登場人物の設定すらも
その間に忘れてしまうことがあるからだ。


 そんなわけで、一旦は素通りしたトワイライトシンドロームに再び興味を持ち
始めたのは発売から5年以上も過ぎた2003年のことだった。
中古屋で見かけることも多く、ネットでの評判も良いようだったし、何より中古
なら2本同時に買っても新品ソフト1本の半額程度だったこともあって、探索編
と究明編を同時に購入したのだ。

 どうせやるなら一気に遊びたい、ということで、結局プレイしたのは購入して
から半年も後、続編といわれる「夕闇通り探検隊」を購入してからになるのだが、
ここで改めてこのゲームのシステムを紹介しておこう。


 ストーリーは先述したように「不思議な噂」の探検だが、基本的なゲーム画面
は2Dサイドビューで、コントローラーで直接キャラクターを操作して進めてい
く。
とはいってもアクション的な要素は皆無で、次のイベントが発生する場所までキ
ャラクターを移動させればストーリーは進んでいく、この2D画面やたまに表示
される一枚絵の画面で物語はテキストとして語られ、時折現れる選択肢を選ぶこ
とでゲームに進行に変化を与えることができる。

 また、特徴的な試みとして、画面上部にはキャラクターの精神状態を現すフラ
イトレベル心電図のようなものが表示されており、恐怖を感じるとこれが上昇し、
上昇し過ぎるとゲームオーバーになってしまうのだが、これがバイオハザードや
クロックタワーのようなアクション要素のあるゲームならともかくも、基本的に
はサウンドノベルのシステムを踏襲している為、このフライレベルシステムはお
世辞にも有効に活用されているとは言えず、おいらがプレイした限りでは、恐怖
の為にゲームオーバーになることは一度もなかった。

 さらに、ゲーム中にカメラやMDを駆使して心霊写真を撮影したり、幽霊の音
声などを録音することができ、収集したそれらの「戦果」はオプション画面でま
とめて鑑賞することができるのだが、心霊写真はともかくも音声の方は緊迫して
いるプレイ中はいざ知らず、オプション画面で聞いてもさして怖いわけではなく、
またそれらの収集がゲーム本編には全く影響しないことからフライトシステム同
様システムとしては少々力不足の感が否めない。
せっかく面白いシステムなのだから、これらの戦果がゲーム中にも反映されれば
よりゲームの幅が広がったのではないかと思う。

 そして、一般のサウンドノベルと比べるた場合、選択によって結果が変化する
とはいうものの、グッドエンドとバッドエンド、その中間となる三種類のエンデ
ィングが用意されているだけで、それもゲーム終了時に大吉・中吉・凶とランク
別に表示される為、大吉を出した後ではわざわざ中吉や凶を見たい、という気に
もなれず、また、シナリオプレイ中は一切のセーブが不可能でバッドエンディン
グを迎えてしまった場合には、そのシナリオをはじめからやり直す意外にはない。
テキスト主体のサウンドノベルならばそれほど苦にもならないのだろうが、2D
移動やムービー、音声によるデモを飛ばすことができない上に、シナリオの分岐
がエンディング意外では皆無に等しい為、繰り返しプレイはどうしてもモチベー
ションが下がってしまうなど欠点も決して少なくないゲームである。


 しかし、それらシステム面での不満を補って余りあるほど、おいらにとってこ
のゲームは魅力的なものだった。
「噂の究明」というとイメージし辛いかもしれないが、このゲームで行われるこ
とはいわば心霊スポット探検である。
主人公は高校2年生のユカリ、彼女の幼馴染で同級生の霊感少女チサト、そして
自他共に認めるイマドキの女子高生で彼女達の後輩にあたるミカの三人。
情報通のミカが仕入れてきた噂のスポットを探検し、ユカリがリーダーシップを
発揮し、チサトが押さえ役に回る。

 また、グラフィック的に言えば、PlayStationのゲームでありながら2Dで描か
れている為、一見するとPSのゲームというよりは、ちょっと豪華なスーパーファ
ミコンといった印象がする画面なのだが、2Dで緻密に描かれた学校や町並みは
この頃のまだ粗の目立ったポリゴンで仕上げるよりもよりリアリティが感じられ、
トワイライトシンドロームの世界からはちょっとした2Dの箱庭的な世界観を感
じることが出来るのも嬉しい。
勿論、探検の内容も校内に限らず、公園や裏山、真夜中の駅なども舞台となり探
索編、究明編合わせて10編のシナリオをプレイしていく内にプレイヤーは、こ
の雛城という名の架空の街に言うにいわれぬ愛着を感じるようにさえなっていく。

 さらに、主人公の三人が単なるプレイキャラで終わることなく、三人がそれぞ
れ独自の距離感をもって描かれており、例えば後輩のミカはユカリに対しては全
面的な信頼を置いているものの、物堅いチサトに対しては多少の反発を持つこと
があり、また、チサトがユカリにとって幼馴染であり親友であるということに対
して嫉妬に近い感情を抱いていることを伺わせる描写などもあって、登場人物が
実に生き生きと描かれている。

 発売当時の定価(2本あわせて)一万千六百円はともかくも、現在の平均的な
中古価格や、後に発売された探索・究明両編をカップリングした「トワイライト
シンドローム・スペシャル」の価格(三千八百円)ならば発売から7年が経過し
た現在でも内容に比して充分に安い価格だとおいらは思っている。


 ところでここから先は少々余談になるが、このトワイライトシンドロームには
いくつかの続編作品が存在する。
先述した「夕闇通り探検隊」もその一本だが、それ以外にも直接の続編となる「
ムーンライトシンドローム」や最も最近に発売された「トワイライトシンドロー
ム-再会-」の計3本である。
この内「夕闇通り探検隊」は「トワイライトシンドローム」というゲームが持っ
ていたシステムや雰囲気を受け継いだだけで設定などの繋がりは一切ない。
「トワイライト〜再会」でも、再会というサブタイトルとは裏腹に初代のヒロイ
ン達は登場しない。

 そういう意味ではストーリー的な唯一の正統続編といえるのが、ムーンライト
シンドロームで、こちらはトワイライトのヒロイン三人組が登場するのだが、ム
ーンライトシンドロームという作品は、見事な程に評価が両極端に分かれる作品
である。
さらに、この作品の面白いところは、トワイライトに思い入れの強いユーザーほ
どムーンライトを嫌う傾向がある、という点である。

 実は、おいらは未だムーンライトをプレイしておらず、ムーンライトの評価が
分かれている原因、特にトワイライト・ファンに嫌われる理由に興味を持ち、ク
リア後の購入を考えていたが、トワイライトをクリアしたことでその理由が分か
ったような気がした。
実は、トワイライトシンドローム究明編では、究明編と探索編のクリアデータを
同じメモリーカードに入れておくことで、11番目のシナリオが登場するのだが
この11番目のシナリオというのが、ちょっとしたムーンライトシンドロームの
体験版になっているのだ。


 そもそもトワイライトシンドロームの第十章というのは、連続ものとしてこれ
以上はないほど綺麗に終わってくれたので、隠しとはいえこの後に別のシナリオ
を入れるということそのものがおいらには蛇足に感じられたのだが、やってみる
と問題の11番目のシナリオというのは足どころか蛇の絵に羽や角までつけてし
まったようなシロモノだったのだ。

 叙情的に身近に潜む恐怖を題材していたトワイライト本編とは一転、サイコ
ホラーというより電波な人々を必要以上に暴力的、残虐的に描いたこの隠しシ
ナリオの世界観はトワイライトとは真っ向から反するものであり、それが単に
独立した作品として描かれるならばともかくも、トワイライトの舞台や登場人
物を使って行われ、しかも、故意にトワイライトで描いてきたものを破壊して
しまおうという制作者の意志が見え隠れしている。
つまり、制作者自身が自分の作ったゲームを同じゲームの中で内容的に攻撃す
るという、ちょっと信じがたいようなシナリオで、わずか10分程度のこの隠
しシナリオでさえ、正直に言っておいらはかなりの不快感を感じた。
これが1本分の長さになったとすればムーンライトシンドロームに対するトワ
イライトファンの反感は想像するに余りある。

 普通に考えれば、とあるゲームのファンがそのゲームの制作者と対立すると
いうようなことはあまり考えられないのだが、ムーンライトシンドロームの場
合はなまじトワイライトの続編として発表されてしまった為に、そのようなこ
とになってしまったようだ。


 最後に、何度も述べてきたように、このゲームは1996年に発売されたものだ。
必然的に、その中で描かれる「イマドキの女子高生」も2003年の現在から見れ
ば90年代半ばのイマドキということになり、実際、ゲームにも当時のイマドキ
を象徴するアイテムとしてポケベルが登場するなど時代を感じさせる部分があ
る。
しかし、それでもこのゲームで描かれる世界が身近で魅力的なものに感じられ
るのは、そもそもトワイライトシンドロームというゲームに、過ぎ去っていく
モノ達への郷愁を感じさせるどこか懐かしくて切ない魅力があるからなのかも
しれない。



AXL 2003

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