レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「晦〜つきこもり〜」



Media :スーパーファミコン
Maker :開発:パンドラボックス/販売:バンプレスト
発売日:1996年
種 別:サウンドノベル


 サウンドノベル=ホラーという図式が出来たのは、サウンドノベルという
ジャンルを確立したチュンソフトの「弟切草」のインパクトによる所が大き
い。
生みの親であるチュンソフトは、そういったパターン化を嫌ったのか、第二
作目の「かまいたちの夜」では本格推理小説を、第三作目の「街」では、娯
楽小説を題材に取ることで懐の深さを見せつけたが、サウンドノベル人気に
あやかって、言葉は悪いが二番煎じ的にゲームをリリースした会社は殆ど全
て、その題材としてホラーを選んでいる。

 別にサウンドノベルはホラーでなければならない、という決まりがある訳
でもなく、生みの親であるチュンソフトは、ホラー以外のジャンルにサウン
ドノベルの可能性を求めているにも関わらず各社がこぞってホラーノベルを
選択したのは、恐らくホラー以外のジャンルで「読ませる」ことは難しいと
踏んだせいではないだろうか?


 例えば、恋愛小説をサウンドノベル化したとしても、ちょっと売れるとは
考えにくい、いわんや純文学など誰が遊びたがるだろうか?
そもそも活字媒体を欲しているわけでもないプレイヤー達を惹きつける為に
は、ジャンルはホラーかもしくはアダルトくらいしか無い。
「かまいたちの夜」や「街が」ヒットしたのは、ゲームとして考え抜かれた
システムと、ライターの腕による部分が大きく、「弟切草」の二番煎じを狙
ったゲーム達とは格が違うといっていい。


 実際、チュンソフト以外のメーカーがリリースした「サウンドノベルもど
き」には名作はおろか佳作さえも殆ど存在しない。
その殆どは、ゲームとしてのシステムに問題を抱えているか、小説としての
クォリティに問題を抱えているか、もしくはその両方の問題を抱えているか
のどれかで、例えああいったジャンルを好むゲーマーがプレイしても定価通
りの楽しみを得ることは非常に難しい。


 今回紹介する「晦〜つきこもり〜」というゲームはパンドラボックスが、
これより前に開発した「学校であった怖い話」の続編的なソフトであり、十
羽一絡げにされがちな、「サウンドノベルもどき」に連なる作品である。

 しかし、この作品はおいらが知る限り、ホラー系サウンドノベルの頂点に
位置する作品である。
厳密にいうと方向性が違うのかもしれないが、「弟切草」のヒットによって
雨後のタケノコの如くあらわれたホラー系サウンドノベルゲームの中で唯一、
弟切草を凌駕したといっても過言ではない。


 簡単に内容を説明しよう。
このゲームの主人公は、中学三年生の少女。
彼女は祖母の七回忌に出席する為に、親の実家に里帰りする。
主人公の従弟の悪ガキ小学生とその母、主人公が密かに想いを寄せるテレビプ
ロデューサーの従兄、若くて美しい看護婦の叔母、高校を出てフリーターをし
ている従姉、そして自称冒険家の叔父、これら個性的な面々が久しぶりに顔を
合わせて雑談を交わしている内に、「七回忌の晩に怪談をすると幽霊が出る」
という言葉に興味を持って、7人は開かずの間と呼ばれる和室に移り、一人一
話づつ怪談を披露していく・・・・。

 このゲームはこんな感じで始まる。
プレイヤーは、6人(主人公は基本的には話さないので)が怪談をする順番を
自由に決めることができる。
彼らは自分が何番目に話すか、で違う話を披露してくれるので、時計まわりに
一人づつずらしていけば、それだけでも30通りの話を聞くことが出来る。
さらに、6人目が話し終わった後に、様々な条件により「7話目」が発生する。

 また、単に彼らが話す話を読んでいくだけではなく、彼らが話しの途中に投
げかける問いかけにどう答えるかによっても、彼らの話の内容は変化する為、
全ての分岐を含めると夥しい数のストーリーが含まれている。


 個々のストーリーの内容そのものには当たり外れもあれば、個人の好みの問
題もあるので、はっきりとは断言できないが、最初に書いたようにこの手のゲ
ームを一通りプレイしたおいらに言わせれば、最も楽しむことができた。


 話は変わるが、例えばアメリカのホラー映画と、日本の怪談は、「恐怖」と
いう共通点はあるものの、恐怖の内容は全く違うものであるといっていい。
アメリカ人の語る恐怖というのは、例えば、深夜キャンプ場に出現したジェイ
ソンという異形の殺人鬼そのものや、それによって引き起こされる殺人を指す
が、怪談の場合、怖いのは「出てきたもの」そのものではない。
「何故でてきたか」という情念に対して恐怖を感じるのだ。
四谷怪談のお岩さんにしても、真景累ケ淵の豊志賀にしても、幽霊が出現した
ことには必ず理由があり、人はその情念そのものに恐怖を感じる。

 ゲームの世界でいうなら、クロックタワーや、バイオハザードの恐怖は前者
であり、晦の持つ恐怖は後者のものだ。



AXL 2001

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