レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ドラゴンクエストVIII〜空と海と大地と呪われし姫君〜」

Media :PlayStation2
Maker :SQAURE ENIX
種 別:非リアルタイムRPG
発売日:2004年


「やっぱりドラクエはシンプルな方が良かったな」
「ハードに負担をかけないシステムが特色のドラクエもスーパーファミコンへ」

前者はドラクエ8が発売前後においらが友人や知人からよく耳にした意見。
そして後者は、スーパーファミコン発売前に、ゲーム雑誌に掲載された記事だ。

 今さら説明するまでもないが、ドラゴンクエストは1986年にファミコンで発
売された第一作から、2000年にPlayStationで発売された7に至るまで、その外
観をほとんど変えることなく実に14年もの期間国民的RPGとして君臨し続けてき
た。

 勿論、一作ごとにグラフィック面の進歩はあったものの、それはゲームの印
象を変えるほどの変化ではなく、極端な言い方をしてしまえば、ドラクエ7で
すらも、表示を完全に2D化し、スプライト能力とROM容量の制限さえ取っ払って
しまえば、初代ファミコンでも再現可能なのではないかと思えるほど頑なに第
一作の雰囲気にこだわり続けてきた。
それ故にはじめてドラクエ8の画面写真を見たプレイヤーの中には、冒頭のよ
うな不安を抱く者も少なくはなかったようだ。

 そして、正直なところ、おいらの第一印象もそれに近いもので、その時の気
持ちを一言で表現すれば、「そう来たか」という感じだった。

 実は前作、ドラクエ7の発売後、おいらはひとつの危惧を抱いていた。
7はプラットフォームをPlayStationに移しての最初のドラクエであり、それま
で足かせになっていたであろう、ROMカートリッジの容量制限がなくなり、CD-R
OMという媒体でリリースされた初めてのドラクエでもある。

 今度はCD-ROMを使っているのだから、きっと物凄く壮大なストーリーに違い
ない!というユーザーの期待に応えるかのように、プレイ時間はシリーズ最長
を誇り、やり込み要素もふんだんに盛り込まれた、いわばドラクエの集大成と
いえる作品に仕上がった。

 しかし、その発売後に「長すぎる、内容が冗長だ」といった意見も多く聞か
れ、特に社会人となった旧来のファンにとっては、決して多くはない余暇の時
間を使って遊ぶには、辛い作品となってしまったことも事実だ。
また、7で初めてゲーム中に挿入されたポリゴンムービーもキャラクターの造
形に難があり、逆にプレイヤーの不評を買う一因となってしまう。


 ドラゴンクエスト8という作品は、詰まるところ、それらの不満に応える形
で生まれたゲームだとおいらは思っている。
鳥山明をキャラクターデザイナーに迎えながら、肝心の主人公の姿はパッケー
ジや説明書のイラストから想像を膨らませるしかなかった7までとは違い、ア
ニメがそのままゲームになったかのような美しいグラフィックに生まれ変わり、
世界も完全に3D化された。
その反面、ドラゴンクエストというゲームが持つ独特の世界観を壊すことなく、
恐らくは多くのユーザーが想像力の中にだけ描きつづけてきたドラクエの世界
をそのままテレビ画面の中に再現させたセンスには正直脱帽するしかない。

 また、ストーリー面でも初期のシリーズを彷彿とさせるほどシンプルな物語
が描かれ、時間を湯水のように使う、6、7の転職システムは削除され、新た
にスキルポイントシステムが導入されている。

 このスキルポイントシステムは、レベルアップするごとにキャラクターにス
キルポイントが与えられ、プレイヤーは、そのポイントを好きなように割り振
ってキャラクターを成長させることの出来るシステムだが、いわゆる旧来のRP
Gにあったパラメータポイントの配分とは異なり、キャラクター毎に異なる個人
スキルやいくつかの武器の使用に関わるスキルに限って配分することが出来る。
基本パラメータは従来通り自動的に上昇していく為、気まぐれに成長させても
決してゲームクリアが不可能になるようなことはない。

 さらに、特定のモンスターを仲間にしてチームを組ませることのできるモン
スタースカウトシステムや、アイテム合成が可能な「れんきんがま」システム
などの要素も加わったが、モンスタースカウトも旧来の通常戦闘時にランダム
でモンスターを仲間にできるタイプのものから、マップ上に表示されている特
別なモンスターに限って、ただし、倒せば必ず仲間にできるシステムに変更さ
れている。
恐らくはこれも、特定のモンスターを仲間にする為に延々戦闘を繰り返す無駄
を省くためのものではないかと思われる。

 このような点から、おいらは8は7の反省の上に立った作られたゲームだと
感じるのだが、皮肉なことにそれはそのままおいらに8に対する不満点でもあ
るのだ。


 以前にも何度か書いたことがあるが、今からちょうど10年前、世の中に「ポ
リゴンゲーム」が出てきた当初、グラフィックがポリゴンになった為にゲーム
のボリュームが縮小されてしまう、という現象が起こった。
それは、ゲームがそれまでの2Dのノウハウが通じない3Dの世界に入ったことで
容量や労働力などの面から、2Dゲームの完全な延長線上でゲームを作ることが
難しくなり、また、画面が派手で見栄えがするようになったことで、ボリュー
ムが少しくらい薄くなってもユーザーは喜んでゲームを買ってくれるという状
況が生んだ現象だった。

 おいらはゲームにはとことんボリュームを求めるタイプなので、当時この風
潮がどうにも歯がゆく、一時期はポリゴンという言葉に反感に似た感情すら抱
いていたのだが、あれから10年を経て媒体もさらに大容量になり、3Dのノウハ
ウも充分蓄積されたことで、再び2Dゲームが突き進んできたボリュームの延長
に戻ることができた。


 詰まるところ、おいらがドラクエ8に感じている不満は、これと同様のもの
で、ボリュームの面で8に満足することができなかったのだ。
7で行くところまで行ってしまった長大さを、7と同じグラフィックで縮小す
れば、逆に「内容が薄い!」といった非難の声が聞こえてくるのは想像に難く
ない、仮にストーリーをシンプルにしようと思えば、それに代わる何かが必要
になってくる。
それこそが、8でのグラフィックの大幅な進化だったのではないかと、ひねく
れ者のおいらはつい邪推してしまうのだ。


 そのようなわけで、ボリュームという点でおいらには正直不満が残った今作
だが、ゲームの快適性はこの手のゲームとしては驚くほどストレスを感じなか
ったし、戦闘シーンはやはり見ているだけでも楽しくなってしまう。
何よりも3Dでありながら2D時代と違和感を感じることのなかった世界の構築は
見事というほかない。

 パッケージの「見渡す限りの世界がある」という言葉に集約された今作のテ
ーマは、間違いなく昔からのファンにとっての夢の実現であり、7までの流れ
で長大さを究めてしまったドラクエには、これがいい意味での原点回帰だった、
とは思うのだが、個人的には、「見渡す限りの世界がある」ことが当たり前と
なった、2作先、或いは3作先のドラクエに一日も早く会いたいと思う今日こ
の頃なのだ。



AXL 2005

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