レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ドラゴンクエストIII〜そして、伝説へ〜」

Media :FAMILY COMPUTER,SUPER FAMICOM
Maker :ENIX
種 別:非リアルタイムRPG
発売日:1988年


 ドラゴンクエストシリーズの三作目。
個人的には「一番好きなドラクエ」であり、今尚根強い人気を持つ作品である。
簡単にストーリーと内容を紹介すると、主人公は英雄、オルテガの息子(或い
は娘)として生まれ、魔王バラモスを倒す為に旅立ち消息を絶った父オルテガ
の意志を継いでバラモスを倒す為に冒険の旅に出る。
システム的には、4人パーティ制で、パーティキャラとなる3人はドラクエシ
リーズで唯一本作のみがキャラメイク可能になっている。

 キャラクターメイキングといっても、名前と性別を、それに職業を決めて、
能力値を確認する、といった簡単なものだが、この要素と「転職システム」こ
そがドラクエ3の真骨頂である。
職業は、戦士、格闘家、僧侶、魔法使い、商人、遊び人に加え、特定の条件で
転職できる賢者の7種類。
一般的には、主人公である勇者を中心に、戦士、僧侶、魔法使いの4人で編成
するのが最も効率的であるといわれているが、好みで戦士の変わりに格闘家を
入れてみたり、それこそ全員戦士にしてみたりといったことが出来る。

 また、転職システムは、レベル20以上で全パラメータを半分にすることと
引き換えにレベルを1に戻し、新しい職業に就ける、というもので、例えば魔
法使いが戦士に転職すれば、パラメータは半分なるものの、魔法を使うことが
出来る戦士を作ることも可能である。


 おいらはドラクエ3が愛される理由は、ストーリーもさることながらこの自
由度の高いシステムにあると思っている。
ドラクエ3のパーティキャラは、プレイヤーの創作物なので一部を除いて固定
イベントというものが存在しないし、自己主張も無い。
固定イベントが存在しないから個性が薄いか、というとそうでもなくて、プレ
イヤーはゲームを進めながら、自分が創作したキャラクターに自分だけの想像
上のストーリーを作ることができる。
固定イベントというのは、キャラクターの個性をはっきりさせるというメリッ
トがあるという反面、キャラクターをプレイヤーから遠ざけてしまう、という
弊害も生む。
極論を言えば、ウィザードリィとファイナルファンタジーの差である。
仮にウィザードリィをシステムRPGと呼び、ファイナルファンタジーをストーリ
ーRPGと呼ぶことにし、それぞれをその代表作だと仮定するなら、ドラゴンクエ
スト3はちょうどその中間にある作品だとおいらは思っている。


 どちらのタイプがより優れているのかは何ともいえないが、ストーリー先行
のRPGはプレイヤーにより、好き・嫌いの好みがはっきりと分かれてしまう、
ということだけは確かである。
ゲームが提供するストーリーや世界観がプレイヤーの嗜好に合えば非常に楽し
く感じることができるが、そこが気にいらないと最後まで面白くない。
特定のストーリーRPG、特に、ファイナルファンタジーシリーズのような代表
格のゲームをプレイしてつまらないと感じたプレイヤーは、ストーリーRPGに
対して懐疑的になってしまう。
そして、ストーリーRPGは全てつまらないと思い込んでしまいがちだが、スト
ーリーそのものが自分に合っていればこれはこれでなかなか楽しいものもある
のだ。

 しかし、ストーリーRPGも行き過ぎてしまうと「ゲームですら無くなる」とい
う危険はある。
シナリオライターが作った物語を順番に見ていくだけのゲームなら、ゲームで
ある必要がなくなってしまう。
「ゲームでないもの」が大作ゲームとして発売され、大多数の支持を得てしま
う、という現状は正直に言えば少々危険かな?という気がしてしまう。

 だから、おいらはストーリーRPGそのものは否定しないが「映画みたいなゲー
ムを作りたい」というクリエイターだけは好きになれない。
「映画のようなゲーム」が作りたいのであれば、「映画」を作れば良いだけの
話である。
何もゲームというメディアを使う必要はどこにもない。
こういうクリエイターを見ていると、映画人になれなかった人間が仕方なくゲ
ームを作っているような気がして正直、非常に気分が悪いのだ。
そう思っていたら、最近スクウェアが本当にファイナルファンタジーを映画に
して、そして失敗した。
おいらはこの映画を観ていないので、失敗したことに関しては何とも言えない
が、失敗したことを理由にスクウェアが映画事業から徹底する、と発表したこ
とだけは非常に残念に思っている。

 何故なら、わざわざゲームで、「映画的」なものを作りたいというクリエイ
ターにとっては、少なくともゲームよりも映画の方が高尚なものであるという
考え方があるのではないか?という気がするからである。
そして、コンピュータゲームを代表するスクウェアというメーカーが自身の代
表作であるファイナルファンタジーを映画界の持ち込んで失敗したというのは
それを裏付けてしまい兼ねない。

 しかし、映画とゲームはそもそもメディアとして全く違うものである。
映画はそれこそ終始作者が作ったストーリーを鑑賞するものであり、ゲームと
いうのはプレイヤー個人が参加するものである、この全く違ったメディアを混
同してしまったことが間違いの元だと思うのだが、ファイナルファンタジーの
失敗は、所詮はゲームという考えを植付けてしまう可能性がある。


 だからこそ、今後も映画を作り続け、名誉を挽回して貰いたいと思っていた
のだが、あの結果で撤退では単に弊害を撒き散らしたに過ぎない。

 システムRPG対ストーリーRPGの確執は一度どうしても書いておきたかったの
で、本題であるドラゴンクエスト3のレビューとはかなりかけ離れてしまった
が、勿論、ストーリーRPGはスクウェアの専売特許というわけではなく、ドラゴ
ンクエストシリーズも後期の作品になればなるほどその色合いを強めている。
ただ、ストーリーRPGに流されすぎると、先ほども書いたように「ゲームでなく
なる」という危険が潜んでいることだけは確かである。
しかし、ウィザードリィクラスになると、初心者にはとっつきにくいのもまた
事実なのだ。
今回ドラゴンクエスト3というゲームを取り上げたのは、おいらがこのゲーム
をその二種類のジャンルの中間にあって、最も素晴らしいゲームだと思ったか
らである。



AXL 2001

HOME