レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ダウボーイ」

Maker :KEMCO
Media :FAMILY COMPUTER
発売日:1985年12月12日
種 別:見下ろし型の何か妙なもの(^^;


 1985年末から1986年初頭にかけてはファミコンゲームの新作ラッシュだった。
カプコンをはじめとする多くのメーカーがファミコン・デビューを果たし、19
42、ポートピア連続殺人事件などの大作が発表された。
当時、おいらが愛読していたファミリーコンピューターmagazine、通称「ファ
ミマガ」でも、この年末年始の新作ソフトラッシュに合わせて数多くのゲーム
が紹介されており、クリスマスやお年玉でどのゲームを買おうか、嬉しい胸算
用をしたことを覚えている。
この「ダウボーイ」もそんな最中に発売された一本だが、大作の影に隠れてど
ちらかというと「どさくさに紛れて発売されてしまった」という印象の強い1
本である。

では何故、他の思い出深い大作ではなく「ダウボーイ」を取り上げたのかとい
うと、このゲームの登場は、他の大作、名作ソフトよりもある意味では、大き
な意味を持っていた、と思うからである。

 平たく言ってしまえば、このゲームは「クソゲー」という新たなゲームのジ
ャンルを象徴する数多くの要素を備えたソフトだから、である。

 唐突に話は飛躍するが、エンターテイメントプロレスの本場、アメリカはW
WFという団体に、その昔、「ミリオンダラーマン・テッド・デビアス」とい
う悪役レスラーがいた、「ミリオンダラーマン」とは直訳すれば「百万ドル男」
意訳すれば「億万長者」という意味である。
実際、彼が本当に金持ちなのかどうかはともかくとして、とにかく本人がそう
言うのだから仕方がないのだ。
その金持ちデビアスが、観客席にいた一人の黒人の少年をリングの上に招き、
バスケットボールを手渡してこう言った。
「いいか?このボールを10回ドリブルすることができたらこの100ドル紙
幣を君にあげようじゃないか。」
大きく頷いた少年は注意深くリングの上でボールをつき始める。
7回、8回・・・9回目までボールをつき終わった瞬間、突如デビアスが足で
ボールを蹴り飛ばした。
そして、唖然とする少年にデビアスはこう言い放ったのだ。

「いいか? これが人生ってモンだ。」

 このパフォーマンスのインパクトで彼はその後、悪役スターの道を歩むこと
になったらしいが、つまり、「ダウボーイ」もそれと同じではないかとおいら
は思うのだ。


 クリスマス、お正月でお小遣いを手にしておもちゃ屋に飛び込んだ子供達は
どのゲームを買おうかじっくり悩んだ挙げ句、それぞれ自分のお目当てのゲー
ムを買って家に帰る、そして、その内の何パーセントかの子供達、つまり、ダ
ウボーイを選択してしまった少年達は、しばらくするとテレビ画面の前で唖然
とした表情になる、何故ならこのゲームがあまりにも面白くないからだ。
こんなはずではなかった、これでお年玉がパーになってしまったのか?テレビ
画面を前に唖然とする子供達にこのゲームは「いいか?これが人生ってモンだ。」
というメッセージを送るのである。

 幸いにしておいらは当時、このゲームは買わなかったが、たまたま友人に貸
して貰い、金も払っていないのに唖然としたことを覚えている。

 まずこのゲームは画面のデザインからしてかなりキテいる。
内容は戦場を部隊とした見下ろし型のゲームだが、水色に縁取りされた中に「
ネズミ単色」のフィールドが広がり、ところどころに塹壕がほられており、フ
ィールド上には、ペンチのようなものだとか、ハリガネのようなものだとか、
何がなんだかわからないようなものだとか、とにかくそういうものが散乱して
いる。
その散乱もちょっと普通ではない、「たまたま落ちていた」という程度のもの
ではなく明かに「ぶちまけた」という感じでなんともサイコな雰囲気をかもし
出している。

 主人公はそれらを広い集めつつ、画面端にある鍵を手に入れればステージク
リアとなるが、クソゲーの定石通り操作性が悪い。
主人公の武器はピストルだが、例え主人公が上を向いていても、キーを上にい
れっぱなしにした状態ではなければ弾を発射することが出来ない。
つまり、普通のゲームのように、キャラを固定しておいて敵が射程範囲に入っ
てくるのを待って狙い打つということが不可能なのだ。
その上、キャラの動きが常にワンテンポ遅い。
主人公が右に歩いている時、主人公の左側から敵が歩いてくる、左にいる敵を
狙撃する為に方向キーを左に入れてから主人公が左を向くまでに妙な一拍ある
のだ。
そして、その間に敵に射殺されるという寸法である。

 それでもなんとかステージ2に進むと、フィールド上に何本も川が走ってお
り、川に少しでもキャラが重なると問答無用でミスとなる。
ちなみにここは、1ステージで手にいれたアイテムを駆使して渡るらしいのだ
が、おいらはこの辺、「このたびはご縁がなかったということで・・・」など
といいつつ、リセットボタンを押してしまった。


 ちなみに、おいらがクソゲーというジャンルを書くにあたって、何故「ダウ
ボーイ」を選んだかというと、まずおいらが最初に出会ったクソゲーであると
いうこと、それに、ダウボーイは実はゲームの内容よりも、タイトル画面やゲ
ーム画面の雰囲気がクソゲー特有のクソゲーフェロモンを放っており、いわば
ガラガラ蛇の「ラトルスネイク・シェイク」状態になっているからである。

 そして何よりもこのゲームがKEMCOのファミコン参入第一作である、という
ことが一番の理由である。
勿論、KEMCOも後年の「スパイvsスパイ」など佳作を世に送り出してくれたメ
ーカーではあるが、当時、ファミマガで"KEMCO"というブランド名を初めて聞
いた時、当時の他のゲーム少年達もそうだと思うが、思わずおいらの表情は険
しくなってしまった。

 何故ならそのネーミングは誰がどう考えても「namcoのパクり」だからであ
る。KEMCOはブランド名からして既に「ガラガラ」いっていたのである。
ちなみに、"namco"の名前の由来は恐らく"namco"に社名変更する前の社名が「
有限会社中村製作所」だったから、だと思われるがその理屈でいくと"KEMCO"は
なんなのだ? 当時、おいらの脳裏には即座に「有限会社ケムマキ製作所」と
いう社名が浮かんでしまった、「忍者ハットリくん」のライバル、「ケムマキ
くん」以外にどういう名前を元にすると"KEMCO"などという名前が思いつくと
いうのだ?



AXL 2001
(2003.9.5追記)"KEMCO"というブランド名について。

・・・と、思っていたら掲示板の方でしちんさんよりご指摘がありました。
"KEMCO"というブランドの由来は正式名称の
KOTOBUKI ENGINEERING & MANUFACTURING CO.,LTDの頭文字
K        E              M              CO
からつけられたそうです。
しちんさん貴重な情報ありがとうございました(^_^)

HOME