レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

ドンキーコングJr.

Media :アーケード、FAMILY COMPUTER
Maker :任天堂
種 別:画面固定型アクションゲーム
発売日:1983年


 名作ドンキーコングの続編。
前作にあたる、ドンキーコング(オリジナル版)は、ドンキーコングにさらわ
れた「レディ」をマリオが単身救出する、という内容の、当時としては珍しく
ストーリー性のあるアクションゲームだった。

 ドンキーコングの最終ステージで、マリオはドンキーコングを鉄塔のてっぺ
んから墜落させ、ドンキーは、まるでジャンボ鶴田のバックドロップを食らっ
た三沢光晴のような体制のまま固まり、マリオとレディの間にはハートマーク
が現われる。

 憧れの「レディ」を救出した、マリオとレディはその後シアワセに暮らしま
したとさ・・・というのが、ドンキーコング時点での「その後」のエピソード
だったのだろう・・・が。

 続編、「ドンキーコングJR.」の登場によりストーリーは、メルヘンというか、
子供向けのハッピーエンド・ストーリーから一気に現実味を帯び、殆ど、昼の
メロドラマのようなえげつない展開を見せることとなる。

 ドンキーコングJR.は、ドンキーの息子である、ジュニアが、マリオの手から
父親ドンキーを救出する、という内容だが、ドンキーは、檻に閉じ込められてお
り、ジュニアの救出劇を邪魔する側としてマリオが登場している。
しかも、この作品に登場するマリオはかなり邪悪である。
ジュニアを妨害するために、鞭をしばき、次々に、足枷の罠がそのまま生物化し
たような、かなり不気味な生き物を使い、ジュニアを妨害する。
ゲーム中詳しく語られることはないが、どうもマリオはこの時点でドンキーコン
グを見世物にでもして稼いでいる雰囲気があるのだ。

 しかも、前作でめでたく結ばれたはずの「レディ」はこの作品には出てこない、
それどころか、レディがその後登場したのはファミリーベーシックのスプライト
として登場したのと、任天堂製ファミコン用「ピンボール」にちょっと顔を出し
ただけで、それ以外は全く任天堂作品に姿を見せなくなる。
マリオは、金に目がくらんでレディを捨てたに違いないのだ。
ああ、マリオよ、目指すは見世物界のビル・ゲイツか?



 しかし、このゲームの最終ステージで、今度はマリオ自身が鉄塔の頂上から
落される、因果応報である。

 その結果、マリオは多額の借金でも背負い込んだのか、その後は日陰の人生
を歩むこととなる。
その証拠に、この作品の続編にあたる「ドンキーコング3」に彼は出てこない。
3は再びドンキーが敵役となる作品だが、そのドンキーを撃退ずるのは、本当に
どこの誰だか分からない謎のキャラで、いでだちはマリオのニセモノのような格
好こそしているものの、明らかに別人である。

 そして、マリオがその頃内をしていたのかといえば、まず、マリオブラザーズ
で弟のルイージと友に、下水道の配管工をしている。
配管工のくせに仕事は一切せず、カメやらカニやらをやっつけては、硬貨を集め
て喜んでいるという体たらくである。
次にレッキングクルーに登場して、ビルの解体屋で日銭を稼ぐ。
さらによほど金に困っていたらしく、よく見ると、ファミコン用「テニス」の審
判としても登場しているが、言われなければ気づかない、「隠れキャラ一歩手前」
の存在である。
 そして、先ほど書いたように「ピン・ボール」の中のミニゲームとして再び、
レディと共演しているが、これは一度捨てたレディと共演することで必死に「ク
リーン」なイメージを訴えていたのではないか?


 そんなマリオに再び陽があたるのはご存知、「スーパーマリオブラザーズ」
でのことだが、スーパーマリオのリリース以降、マリオはまたもレディを捨て、
今度はピーチ姫に手をつけている。
その後のマリオのバブリーな活躍と生活ぶりは余りにも有名なので割愛させて
頂くが、一番苦しい時に、一度は自分を捨てたマリオとピン・ボールで共演し
てくれたレディをいとも簡単に捨て、さらにスーパーマリオブラザーズも回を
重ねるごとに、相方で弟のルイージの扱いがぞんざいになり、ついにマリオ6
4に至って降板させられている、これまた一番苦しかった配管工時代に一緒に
苦労したルイージに対するこの仕打ちから、マリオが相当なエゴイストである
ことは間違いない。

 そして、そんな彼の正体が見れるのは、このドンキーコングJR.に登場する、
「鞭マリオ」だけである。
そういう意味で、おいら的に非常に貴重なゲームだと思っているが、実はこの
ゲーム、アーケード版にはファミコン版にないデモシーンが2つほどついてい
る、一つはステージ2クリア後、ドンキーの檻をヘリで輸送するマリオと、パ
ラソルひとつでついていくジュニアのデモと、もう一つはゲーム開始直後、檻
に入ったドンキーを陸揚げするマリオのデモだ。

 実は、この時、マリオは二人いる。
これはどういうことなのか?
おいらの考えでは、もう一人はルイージである。
ルイージとマリオの相違点は、服の色だけ(一部、ジャンプ力との噂もあり)
なので、マリオの衣装を着れば全く同じになるはずだ。

 だとすれば、ルイージの初登場は「マリオブラザーズ」ではなく、このドン
キー・ジュニアということになる。
一般には、任天堂初期アクションゲームの佳作としてしか認識されていない本
作だが、実はこれだけ複雑に絡み合った後日談の発端ともなっていたのである。



AXL 2001

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