レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ディーヴァ〜DAIVA〜」

Maker :T&Eソフト
Media :PC-98,PC-88,FM-77AV,X1,MSX,MSX2,FAMILY COPUTER
種 別:ACTIVE SIMULATION WAR(PC-98版を除く)
発売日:1986年12月(FC版)1987年2月(PC-88SR)(その他の機種は不明)
1987年12月(PC-98版)


 今から14年前、ゲーム業界、最初で最後、驚天動地のゲームがリリースされ
た。それが今回ご紹介する「ディーヴァ」というゲームだが、このゲームは、
スペースオペラ調のストーリーをベースに、宇宙戦艦隊の艦隊戦をメインとす
る戦略級シミュレーションゲームに、モビルスーツもどきに操作して右スクロ
ールのシューティングを戦い抜く、惑星占領を目的とするアクションパートが
セットになったゲームで、一言でいうと「アクション・シミュレーションゲー
ム」である。

 だが、このゲームが驚天動地と言われる所以は、そのゲーム性にあるわけで
はない、このゲームは合計7機種に移植されているが、それら全てが別々の主
人公を持ち、別々のストーリーが存在しているのだ。

 さらに、例えばPC-88版のディーヴァで、育てたキャラをパスワードを使っ
てファミコン版のディーヴァに登場させたり、さらにその逆のことをしたり・
・・・と、それぞれの作品間に互換性がある。
これが驚天動地と書いた理由で、このようなゲームはおいらが知る限り、ディ
ーヴァをおいて他にはない。

 1993年頃に、マイクロソフトのMS-WINDOWS3.1というOSが登場するまでの日
本のパソコン業界というのは非常に混沌とした状態にあった、16bitパソコン
においては、NECのPC-98シリーズが圧倒的シェアを誇っていたものの、それよ
りさらに以前、8bitパソコン全盛期には、NECのPC-88シリーズ、富士通のFM-7
7シリーズ、そしてシャープのMZ,X1シリーズ、さらには、MSXシリーズが存在し、
それぞれの機種間での互換性は存在せず、ゲームもそのパソコン専用のもので
なければ遊べない、という状況が当たり前のこととして存在していた。

 最近のパソコンユーザーには想像もできないかもしれないが、例えばプレイ
ステーション用のゲームソフトがドリームキャストでは遊べないのと同じよう
なもので、当時のパソコン業界は今のゲーム機業界よりもさらに複雑に沢山の
機種が存在していた為、せっかく自分の欲しいゲームがリリースされていても
自分の持っているパソコンに対応していなければ涙を飲む他はなく、また、ゲ
ームメーカーも、一度リリースしたゲームを他機種毎にいちいち移植し直さな
くてはならなかったのだ。

 その「不自由さ」を逆手にとってのがディーヴァというゲームである。
このゲームは、当時40万円以上したPC-98シリーズから、1万4800円のフ
ァミコンにいたるまでくまなく移植され(何故かMZ版はリリースされなかった
が)先ほども書いたように、機種ごとに違うストーリー、違う主人公でプレイ
出来、さらにパスワードデータに互換性まで持たせたのだ。

 例えば、同じクラスの中に、ファミコンユーザーが30人くらいいて、PC-8
8ユーザーが3人、FM77AV,X1,MSX,MSX2ユーザーがそれぞれ1人いれば、友人
同士でパスワードの交換でさらに盛りあがれる・・・というようなところが、
T&Eソフトの狙いだったのかもしれないが、当時、おいらは中学3年だったが、
おいらも含めて同じクラスどころか、同じ学年でもパソコンユーザーは稀有な
存在で、おいら以外では、88ユーザーが二人くらい、X1ユーザーが一人、それ
ぞれ学年のどこかのクラスに潜伏している、という噂を聞いたくらいで、FM77
AVユーザーに至ってはあれから、15年近く経つ現在でも「実物を生で見たこ
とが一度もない」というくらいに貴重な存在なのだ。

 というわけで、この多機種を跨いだ前人未到のプランは決しては成功したと
はいえないまま幕を閉じた。
一時代を築いたT&Eソフトの栄光にそろそろ陰りが見え始めたのもこの頃だった
ような気がする。


 ところで、このゲーム、その名前を知っている人が多い割には、各機種のサ
ブタイトルや主人公名ですらでも、全てを言える人はあまり多くはないのでは
ないだろうか?
ファミコン版に関しては、機種が80年代最強の家庭用ゲームであり、また、こ
のソフトがワゴンセールで売られるようなタイプのゲームだっただけに、プレ
イ経験のある人も多いと思うが、例えば、X1版や、FM77AV版となると、その情
報は極度に少なくなる。
実はおいらもこのレビューを書くにあたり、全機種分のサブタイトル及び主人
公名をつきとめるだけで1時間ほどかかってしまった。
以下がそれである。

----------------------------------------------------------------------
対応機種      サブ・タイトル      主人公名
----------------------------------------------------------------------
PC-88SR版  (Story1)「ヴリトラの炎」     ルシャナ・パティー
FM-77AV版  (Story2)「ドゥルガーの追憶」   ア・ミターバ
X1版    (Story3)「ニルヴァーナの試練」  アモーガ・シッディ
MSX版 (Stroy4)「アスラの血統」     ラトナ・サンバ
MSX2版 (Story5)「ソーマの杯」      アクショー・ビア
ファミコン版(Story6)「ナーサティアの玉座」  マータリ・シュバン
PC-98版   (Story7)「カリ・ユガの光輝」   クリシュナ・シャーク
----------------------------------------------------------------------
●備考
  ・PC-98版のみアクションシーン無し
  ・(少なくとも)PC-88SR版にはアドベンチャーパートあり
----------------------------------------------------------------------

 発売は、PC-98版以外は、1987年2月(同時発売かどうかは不明)で、PC-98版
のみ同じ年の12月になっている。
おいらも今回久しぶりに全機種のサブタイトルを見たが、「ヴリトラの炎」あ
たりはかすかに記憶に残っているような気がするが、それ以外はまるで覚えて
いなかった、特に「ニルヴァーナの試練」を見た時は、一瞬、カート・コバー
ン自殺の予言文書かと思ってしまった。
主人公名にしてもやはり印象が薄く、かろうじて覚えていたのは何故かMSX2版
の「アクショー・ビア」で、それも「アクシュー・ピア」と記憶していた。

 ストーリーについては、スペースオペラといえばスペースオペラだが、世界
の創造主たる神の存在が密接に関係しており、ファンタジー的な側面も強い。

 ちなみに、PC-98版のみ約1年遅れでリリースされている、というのは実は、
理由があり、このゲームの本当のエンディングは、PC-98版でしか見れないらし
い。あまりといえばあまりな仕様だが、多機種版で別のストーリーをいれた時
点である程度予想されていた悲劇である。
さらにPC-98版のみ、恒例の横スクロールシューティングシーンが無く、純粋な
ウォーシミュレーションゲームになっている。
これは、当時のPC-98はユーザーの年齢層が高く、アクションを好まないことを
T&Eが配慮したためだ、といわれているが、実はこの傾向は、ディーヴァに
限ったことではなく、例えば、日本ファルコムのソーサリアンもPC-98版のみ、
同じ理由によって、アクションの難易度が押さえられている。

 今考えると、なんともヘンな理由だが、当時PC-88ユーザーで、中学生にも
関わらず純粋にアクションゲームが下手だったおいらは、「98ユーザーばっか
優遇しやがってよぉ、むかつくぜ!」と一人ヘソを曲げていた記憶がある。

 また、PC-88版にはアドベンチャーパートがあったりするらしく(少なくと
もファミコン版にはなかったような気がする)機種毎にシステムも微妙に変わ
っているらしいが、それはそれとして、おいらは以前から、どうしてMSXとMSX
2を分けてリリースしたのか、という疑問を感じていた。

 例えば、MSX2ユーザーであれば、1台のMSX2で、2機種分プレイすることは
可能だが、MSX2を持っていながら、MSXの表現力まで落とし込まれたゲームを
わざわざ買ってプレイするのは「なんか違う」ような気がするのである。
それならば、MSX版のどちらかを削って、MZ-2500あたりでリリースした方がす
っきりして良かったのではないか、と思うのだがいかがだろうか?



AXL 2001

HOME