レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「リーディングカンパニー」

Media :PC-98VX以降、SUPER FAMICOM
Maker :光栄(現:コーエー)
発売日:1993年
種 別:経営シミュレーションゲーム


 地味ながらハズレがなく、意外と楽しめると思っているものに光栄のビジネ
スシミュレーションゲームシリーズがある。
エアマネジメントシリーズや、トップマネジメントシリーズがこれにあたり、
特定の業種で他社と競合し、一定以上のシェアと利益の確保を目的にする、と
いうゲームなので、興味のないプレイヤーからは敬遠されがちな題材だが、や
ってみるとどれも万人受けするタイプのゲームなのだ。

 今回取り上げた「リーディングカンパニー」もそのビジネスシミュレーショ
ンシリーズの1本で、残念ながら他の作品のようにシリーズ化はされていない
ものの、ゲームとしては他のシリーズに優るとも劣らないものを持っていると
思っている。

 肝心のゲームの内容の方は、VTR業界での規格戦争を題材としている。最近で
はビデオテープといえばVHS方式ものしか存在しないが、今から15年くらい前
迄はVHS方式の他に、ソニーのベータ方式のビデオテープというものもあり、こ
の二つの方式のどちらが業界を制覇するか、という企業側からすると夢とロマン
に溢れた、消費者側からすると迷惑この上ない戦争が展開されていたのだ。

 最近のメディアでいえば、DVD-RAMだとか、DVD-RWなどの規格の違い、または
メモリースティック等のデータ機器がこれと似たようなことをしているし、ゲ
ーム機の規格の違いにも同じことが言える。

 ゲームの目的はVTR業界全体の売上を4000億円規模にすること、自社の規格の
シェアを80%以上に保つこと、そして、最低価格ラインで最高性能のVTRを発売し
利益をあげることである。

 ゲームの流れを簡単に説明すると、開発部に新VTRを開発させ、完成したら製
造部でそれを製造し、営業部が宣伝するという至ってシンプルなもので、これ
だけなら、パソコン業界を舞台にしたトップマネジメントシリーズと大差はない
のだが、リーディングカンパニーの場合、ライセンス制度やOEM制度というもの
があり、ゲームの奥行きを深めているのが特徴だ。

 まず、ライセンス制度というのは、自社で開発したVTRを提携している他社で
売ってもらうことだ。
提携他社に販売して貰った場合、売上全体の3%から30%の額がライセンス料とし
て自社の懐に入る。

 次にOEMの場合、開発と製造は自社で行い営業(販売)のみを他社に任せる方
式で、これも10〜70%の間で仕切り率を決める。

 何故こういった面倒なことが必要なのかといえば、自社だけで開発、製造、営
業をを行うには商品供給に限界がある為だからだ。
当然他のライバル会社もライセンス商品やOEM商品を市場に送り出してくるので、
同じランクの商品なら当然シェアの高い規格の製品の方が売れるのだ。
その為にこちらとしても数を揃えてシェアを死守する必要が出てくる。

 場合によっては、自社での販売(製造・営業)は一切行わず、開発部だけに投
資してより良い製品をいち早く開発し、提携他社に販売してもらうという経営も
可能なのだ。


 一口にVTRを開発するといってもピンとこないかもしれないが、このゲームの
場合、まず32万円から4万円までの間で8種類の価格帯があり、性能の方もBASIC
と呼ばれる最も安価なものからPROと呼ばれる高性能機まで8種類のグレードに分
かれている。
つまり、同じグレードならより安価なものが売れるし、同じ値段ならよりグレー
ドの高いものに人気が集まる。
この64種類からプレイヤーは開発するVTRを決めるわけだが、当然ながらよりグレ
ードの高い機種を開発しようとすれば時間がかかるし、価格の安いものを開発す
れば製造時のコスト比率が跳ね上がる。
利益を生むギリギリの線で、他社よりもより安く性能の良い製品を開発すること
がこのゲームのポイントとなるのだ。

 さらに一旦発売した機種はしばらくすると「新鮮度」というパラメータが下が
っていき売れ行きが少しづつ落ちていく。
こういう場合には、同じ機種をマイナーチェンジすることで、新鮮度を回復する
ことができる。
また、製造部に予算を大目に配分しておけば時間の経過と共に合理化が進められ
より高性能な製品をより安価に製造できるようになっていく為、マイナーチェン
ジ時に、チューナー、リモコンなどのオプションを追加させて開発しても、まだ
利益を出せることがある。
オプションを充実すればその分、製品の魅力も高まるわけで、この辺はなんとい
うか、セガ・マーク3とマスターシステムを思い出させてくれる。


 他のビジネスシミュレーションゲームシリーズにもいえることだが、このゲー
ム、このように文章で説明すると非常に難しそうな印象を受けるが、実際のとこ
ろは異常なくらい簡単なゲームなのである。
一度コツさえ掴んでしまえば、何度やっても勝てるようになるし、逆にいうとコ
ンピュータの弱さを物足りなく感じてしまうが、かといって難しいシミュレーシ
ョンゲームに果敢に挑戦し、コンピュータに自分の存在価値を全否定されるよう
な無様な負けを喫することが徹底的に嫌いなタイプのおいらにとってはお手軽に
遊べて一人でいい気分になれるという点において非常に好きな1本なのだ。



AXL 2002

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