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信長の野望-覇王伝


Media :PC98,Super Famicom,3DO,PlayStation,Windows等
Maker :コーエー
種 別:戦略級シミュレーションゲーム
発売日:1992年


 個人的には最後に熱中した「信長〜」が本作である。
簡単に覇王伝までのシリーズの系譜を書いておくと信長の野望シリーズは同名
の第一作が、1983年に当時のホビーパソコンをプラットフォームに発売され、
それから3年を経て全国版が登場する。
全国版はその名の通り、第一作で近畿一帯の十七カ国に限られていた舞台を日
本全国の五十カ国に拡張したのが最大の特徴だが、アニメーションの表示、映
像、音楽などの演出面でも大幅な強化が図られ後の同シリーズの人気を決定づ
けるものとなった。

 三作目は「戦国群雄伝」で、今作から家臣武将が登場するようになる。
また、本作では数に限りのある実名武将を補う為か、自動武将エディターのよ
うものが搭載されており、ランダムでゲーム独自の名前や能力を持った武将が
次々と登場し、あまり長い期間プレイしていると知らない武将だらけになって
しまうこともあった。
ただし、舞台は九州、東北などが省かれ三十八カ国に減少してしまっている。

 四作目は「武将風雲録」で、再び舞台は九州から東北を含む四十八カ国に増
え、自動武将エディター(?)はなくなってしまった為、武将数は有限となっ
たが、代わりに茶器をはじめとするアイテム類が初登場する。
大名諸侯の間で茶器が流行し、高価な茶器を領地の代わりに恩賞にした、とい
う当時の空気を再現した。

 そして、五作目が今回紹介する「覇王伝」だ。
覇王伝最大の特徴は、各大名の領地の最小単位がそれまでの国単位から城単位
に代わったことがひとつ。
一つの「国」は本城、支城を含めた複数の「城」で成り立っている為、全国統
一の為に攻め取る必要のあるエリアは前作から格段に広くなった。
また、各城はそれぞれ連絡している為、本城と支城にある城を取ることで、敵
の輸送船を寸断するといった戦略的なプレイが可能となっている。

 そして、覇王伝もうひとつの特徴が「論功行賞システム」の登場である。
前作までの配下武将にも忠誠度というパラメータがあり、国の財政が破綻して
知行(給料)を支払えなかったり、敵の計略に惑わされたりといった特殊な場
合を覗いては下がることはなかった為、一度忠誠を上げてやれば、後はいつま
でも安心して使い倒すことができたが、本作では勲功値と呼ばれるパラメータ
があり、これは部下に何かしらの仕事をさせることで溜まっていく。

 この勲功が高い状態では、放っておくだけで忠誠度が下がっていってしまう
ので大名は定期的に「論功行賞」を行ってその勲功に報いてやる必要があるの
だ。



 論功行賞で最もポピュラーな「恩賞」は知行で、これは「御料地」と呼ばれ
る大名直轄領の中から領地を各家臣に分配するものだが、御料地の多寡はその
国の収入に直結している為、あまり気前よく家臣に上げすぎてしまうと今度は
国の財政が危うくなってしまう。

 そこで軽微な勲功しかあげていない者には感状を発行したり、金を与えたり、
茶器や武器などのアイテム、朝廷から大名が許された官位、また最後の手段と
して自分の懐は痛まないが、一人につき一度しかあげることが出来ない「一字
拝領」といった手段で労を労ってやるのだ。


 勲功は一度でも戦争をすればあっという間に溜まってしまう為、システムの
存在そのものが「煩わしい」という声も多く、結局、次作以降ではなくなって
しまったが、おいらは意外とこのシステムの存在が好きだ。

 というのも、論功行賞のやり方次第では、家臣達がプレイヤーである大名に
不信感を持って行賞の後でひそひそと噂話をはじめたり、逆に揃って感謝の意
をあらわしてくれたりと、それまで直接的な接触の少なかった配下武将の人間
味溢れる姿を見ることができたし、自分の贔屓の家臣などが勲功を重ね多くの
知行や官位を得て出世していく姿を見るのはなかなかに楽しいものだからだ。

 ただ、確かに家臣や領地が増えすぎたゲーム後半では煩雑なことこの上ない
のも確かで、仮に直轄領地以外の国全ての論功行賞をそれぞれの国主に委任す
るとしても「委任する」という意思表示をするだけでも数十回の手間を踏まな
ければならないし、国主の中でも行賞を委任できるのは任地に知行を持つ武将
だけのなので、適当に国主を任命してしまうともう何がなんだか分からなくな
ってしまい、最後には、何百人という数の家臣をいちいち自身で行賞してやら
なくてはならない。


 また、これは問題点といえるのかどうか分からないが、前作との大きな違い
として、クリアまでに異常に時間がかかるようになったことがある。
これは国単位から城単位の攻略になったことで、実質的に全国統一までの戦争
の数が数倍に増えたことに起因するのだが、前作の「武将風雲録」までは凡そ
一日でクリアできていたものが、おいらの場合、はじめてのプレイでは一週間
以上もかかってしまった。

 この為に、一度クリアしてしまうと、論功行賞が煩わしくなってくる後半く
らいでちょうど飽きできてしまい、なかなか最後までプレイすることがなかっ
た。


 尚、本作のオリジナル版となるPC98版が発売されたのが1992年。
次作の「天翔記」が発売されたのが1994年12月となる為、本作は天翔記までの
繋ぎとして3DOやPlayStationなどの次世代機にも移植されており、次世代記用
に演出面の強化を図った為か、これら次世代機用のものでは、演出アニメーシ
ョンに実写映像が使われている。
リアリティや臨場感という点からいうと却って引いてしまうものが多いが、一
見の価値はあるかもしれない。


 最後に、信長の野望に限らず現在コーエーの多くのゲームで採用されている
「パワーアップキット」が導入されたのも本作がはじめてで、本体後に武将能
力エディターや新武将エディター機能、新シナリオなどのついたパワーアップ
キットがリリースされている。
詳しい事情はわからないがパワーアップキット発売前、非公式の海賊版ソフト
として、覇王伝の武将能力などを任意に変更できるエディターがかなり出回っ
ている・・・という噂を聞いたことがあるので、もしかしたら理由はその辺に
あるのかもしれない、とおいらは思っている。



AXL 2003

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