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プリンセスメーカー2

Media :PC-98,FM-TOWNS,PC-Engine(CD-ROM2),Super Famicom,SS,DC,Win等
Maker :ガイナックス
種 別:育成SLG
発売日:1993年


 とある王国の現役を退いた勇者である主人公が妖精から授かった女の子を育
てていく、という内容の育成SLGゲーム。
一時期ちょっとしたブームになった「育成もの」というジャンルは、前作であ
る「プリンセスメーカー」によって作られたといってもいい。

 しかし、実は、「プリンセスメーカー」より以前に発売されたゲームに、こ
れと似たようなゲームが既に存在していたことをご存知だろうか?
90年代初頭に、ハート電子というメーカーが、PC98用のゲームとして「ぶりん
ぐ・あっぷ」というゲームをリリースしているのだ。
このゲームは、アンドロイドの少女を育成することを目的としたゲームで、方
向性としては、日本初の育成SLGとなれる可能性を持っていた作品である。
では、どうして「ぶりんぐ・あっぷ」が忘れ去られ、後発の「プリンセスメー
カー」だけが一躍有名になったのか?

 実は「ブリング・アップ」の方は、確かに育成という要素はあったものの、
その育成という要素のキモを完全に履き違えたゲームだったのだ。
プレイヤーはアンドロイドの少女を育成することによって、アンドロイドの少
女のイラストが見れるようになる。
ちょっと言っている意味が分からないかもしれないが、これが「ぶりんぐ・あ
っぷ」のゲーム性のキモである。
育成によって、少女の将来が変わったり、姿形が変化していくのがメインでは
なく、成長率によってあらかじめ用意されているイラストのマスク部分が少し
づつはずれていって、最終的にはいくつものイラストを見ることができるよう
になるのだ。

 お察しの通り、まるで面白くない。
実は、ゲーム界にはこのようにせっかく満塁ホームランを打ちながら、全速力
で3塁方面にダッシュした為に失敗したゲームというのは決して少なくない。
方向性としては非常に革新的なことをしているのに、肝心の制作側がそのゲー
ムの醍醐味を完全に履き違えており、一プレイヤーの目から見ても「それは違
うだろう」と言いたくなってしまうのだ。
おいらはこれを勝手にゲーム界における「志村、うしろ!!」の法則と呼んで
いるのだが、最近のゲームでいうと何といっても「シェンムー」がこれに該当
するだろう。
あれだけの制作費をかけて、あれだけのポリゴン・バーチャルワールドを築い
ておきながら中身は単なる一本道アドベンチャーで終わっているのは実に惜し
いといわざるを得ない。

 さて、このような悲運の先輩を見てきたせいか、プリンセスメーカーシリー
ズは同じ徹を踏まなかった。
具体的には、アルバイトや学校(教育)の内容をプレイヤーが選んでやること
でヒロインのパラメーターが変化し、その結果がエンディングのみならずプレ
イ内容にまで影響を及し、単にエンディングをコンプリートするだけではなく
プレイの仕方によって様々なリアクションが楽しめるようになっている。
勿論、プレイヤーの教育如何によって、娘の将来となるエンディングも千差万
別の変化を見せるのも楽しい。

 前作であるプリンセスメーカーもかなり反響を呼んだが、続編である2のヒ
ットによって、「育成もの」というジャンルが確立され、例によって雨後のタ
ケノコの如く似たようなゲームが出てくることになるが、その殆どがプリンセ
スメーカーに拮抗することなく消えていったのは、この手のパラメーターいじ
り系育成SLGのバランスを取ることの難しさが挙げられるだろう。

 あるコマンドを実行することにより、特定のパラメーターが上昇し、場合に
よっては相反する要素をもつ別のパラメーターが下降する、というのがこの手
のゲームの基本ルールだが、この時、パラメーターの上昇率が大きすぎるとゲ
ーム中盤以降がダレてしまうし、少なすぎると面白みに欠ける。
さらに、下降するパラメーターも充分な配慮が必要で、適当に設定するとそれ
こそゲームそのものが破綻してしまう可能性を含んでいる。

 このパラメーター上昇幅の設定において、プリンセスメーカーシリーズは非
常に絶妙な配慮がなされていたが、後発のゲームのほとんどはそのレベルまで
達していなかった、ということが挙げられる。

 ところでこのゲームのオリジナル版はPC-98用のパソコンゲームとして発売さ
れたが、当時はフロッピーディスク10枚以上のセットになっており、HDの搭
載されていないパソコンでプレイするのは、非常にストレスの溜まるゲームだ
った。

 現在のパソコンしか知らないユーザーには想像もできないかもしれないが、
93年頃まではまだハードディスクは高級品で、ゲームはプロッピーディスクで
遊ぶ、というのが一般的だった。
その為要領の大きなゲーム(枚数の多いゲーム)となると、ゲーム中のディス
ク入れ替え作業も煩雑を極める。
またまた余談になるが、最もひどかったのが、「トンネルズ・アンド・トロー
ルズ」というTRPGを翻案したパソコンゲームのPC88版で、こちらもディスク1
0枚以上がセットになっていた。
しかし、このゲームの場合、「ゲーム中のディスク入れ替え作業が全く考慮さ
れていない」作りとなっており、町・フィールドマップの切り替えでディスク
交換が必要なのは言うに及ばず、ステータス確認や、戦闘シーンへの突入とい
ったゲーム中、何百回も繰り返す一般的なイベントにまでディスクの入れ替え
を強要してくる非常に凶悪なゲームだった。

 おいらはこの時の恨みだけで、後にPC-98を購入した時に同タイトルを購入
したが(こちらはディスク4枚組、PC-98と88ではFD容量に役4倍の差があっ
た)実はそこまでするほど面白いゲームではなかった(というより、おいら向
きのゲームではなかった)という悲しい事実に打ちひしがれた、というどうで
もいい過去を持っている。


 またまた、話がそれてしまったが、おいらがPC98でゲームをする上で、初め
てHDの必要性を切実に知ったのがこのプリンセスメーカー2だったのだ。



AXL 2002

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