レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ポパイ」

Media :アーケード、Family Computer
Maker :任天堂
種 別:固定画面アクションゲーム
発売日:1982年


 思えば、おいらは可哀想な子であった。
ポパイというアニメーション番組は、おいらがちょうど幼稚園に通っていた頃
に再放送でよく見ていたが、普段は憎まれ役のブルータスの前に手も足も出な
いポパイがいざという時には、ほうれん草の缶詰を食べて突然怪力を発揮する
ようになり、ブルータスをやっつける・・・という筋で、ポパイに於けるほう
れん草の意義とは、水戸黄門に於ける印籠、或いは、キン肉マン・マッスルタ
ッグマッチに於ける光の玉、はたまた、銀行に対する公的資金注入というよう
な、一発逆転カタルシスの代表的アイテムとして扱われていたのだが、清く正
しくおバカな子供だったおいらは、このアニメを真っ向から真に受け、夕食の
付け合せには必ずほうれん草をリクエストし、ほうれん草を食っては、そこら
中の壁や柱に対して挑戦の意を表明する・・・という幼年時代を送っていた。

 考えてみれば、ポパイという漫画自体、充分にこうした子供達への影響を考
えた上でパワーアップアイテムとして一般には子供が嫌いそうな野菜を持って
きたのだろうが、今にして思えばその思惑通りに「おいらは騙されていたのだ!」
という点で悲しい記憶のひとつである。
ただ、その気持ちは「ポパイ」という漫画に対してよりも、ほうれん草をバク
バク食べるおいらに「ポパイみたいに強くなれるわよ」と言いながら内心ほく
そ笑んでいたであろう母親に対してである。


 さて、そのポパイをゲーム化したのがこの作品で、アーケードに登場したの
は1982年だが、知名度から言えば翌年にファミリーコンピュータ本体と同時発
売となったファミコン版の方が数段上だろう。
おいら自身もファミコン版を買ってからはゲームセンターでポパイの筐体を見
つけても貴重な財源を有効に使う為に遊ぶことはほとんどなくなり、代わりに
家ではもっぱらポパイやマリオブラザーズ、そしてドンキーコングJRで遊んで
いた。
その為、今回のレビューはファミコン版が基準になってしまうことを先にお断
りしておきたい。

 ゲーム画面はサイドビューで構成されており、それぞれハシゴや階段で行き
来できる段差が儲けられている。
各ステージの最上部にはポパイの恋人、オリーブがいて、ハートや音符などを
落としてくるので、プレイヤーはポパイを操りこれを全てキャッチすればクリ
アとなる。
ハートや音符が画面下の水面に落ちると音楽が変わり、しばらくそのままにし
ておくと壊れてしまい1ミスとなる。

 また、ライバルのブルータスも登場しており、ポパイを追いかけてくる、ブ
ルータスに捕まってしまうか、ブルータスの投げるビンに当たってもミスにな
てしまうが、ビン攻撃はポパイのパンチで防ぐことが出来る。
アニメ、ポパイ最大のカタルシスであるほうれん草もちゃんとゲームに登場し
ており、画面内のほうれん草を取ることで、ポパイは一時的にパワーアップす
る。
ポパイの顔が真っ赤になり、ポパイのテーマミュージックが鳴っている間は無
敵状態となり、ブルータスに触れることでブルータスをやっつけることが可能
だ。
尚、ステージの数は3種類で以後ループとなる。


 元はアーケード用とはいえ、当時の任天堂製ファミコンゲームとしてはは非
常に珍しい版権もの、いわゆるキャラゲーになっている点で印象深い1本であ
る。
ファミコン時代のキャラゲーというと、キャラクター人気に便乗した粗悪品が
多いことでも知らのれているが、ポパイはいかにも任天堂らしい良質アクショ
ンゲームに仕上がっており、主要登場人物である、ポパイ、オリーブ、ブルー
タスの関係や、ほうれん草でのパワーアップなど作品としての見所ももちゃん
とゲームに反映されているので、ポパイという作品のファンにとってもオスス
メのソフトといえるのではないだろうか。



AXL 2003

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