レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「エグゼドエグゼス」

Media :アーケード、Family Computer
Maker :CAPCOM(オリジナル)、徳間書店(ファミコン版移植)
種 別:縦スクロールシューティングゲーム
発売日:1985年


 前にも触れたことがあるが、1985年末というのは当時のファミコン少年にと
っては大変な時期だったのだ。
ファミコンが発売されたのは1983年7月のことで、83年に発売されたファミコン
ソフトの総数は約10本、翌年の84年は約20本だった。
ところがサードパーティの参入が相次いだ85年には何と約70本ものソフトが発
売されているのだ。

 しかも、その年の年末商戦となる11月12月が最も苛烈な発売ラッシュとなり
この二ヶ月間だけで30本近くのソフトが次々と発売されることになる、つまり、
ファミコンが発売から1年半かけて発売してきたのと同じ量のソフトが僅か二
ヶ月間に放出されたのだ。

 当時のおいらが愛読していたファミマガ(ファミリーコンピューターmagazine/
徳間書店の月刊ファミコン情報誌)もこの年末には別冊付録として年末年始発
売予定ソフト紹介の小冊子をつけて読者の購買意欲を煽っていた。

 さて、今回紹介するエグゼドエグゼスは折しもファミコンが大躍進した85年
にカプコンからアーケードゲームとして登場した縦スクロールシューティング
ゲームである。

 乱暴な言い方とするならばゼビウスとギャラクシャンを足して2で割ったよ
うな世界観を持つゲームで、メタリックなデザインの背景、昆虫をモチーフに
したやはりメタリックな敵キャラクターと無機的なBGMが印象に残るシュー
ティングゲームの佳作である。

 85年当時といえば、巷ではやたら「新感覚」なる言葉がもてはやされた時期
でもあり、清涼飲料の世界にもマウンテン・デューだとかメローイエローとい
った新感覚飲料なるものが登場し、おいらも「新感覚であるな」などと言いつ
つ飲んでいたのだが、このエグゼドエグゼスというゲームにもどこか時代を反
映した新感覚っぽさがあり、また当時としてはまだ珍しかった二人同時プレイ
可能なシューティングゲームということもあり、おいらとしても結構好きなゲ
ームの1本だった。


 そして、このゲームは同じ年の年末にファミコン用ソフトとして登場するこ
ととなる。
発売元はオリジナルのカプコンではなく、ファミコンソフト初参入となる徳間
書店で、同時発売ソフトとしてロットロットがラインナップされていた。


 先ほども少し書いたように当時のおいらはファミコン情報を収集する為に毎
月この徳間書店のファミマガを講読していたのだ。
当然、ファミマガでは初の自社ソフトとなるエグゼドエグセスを煽っていた、
おいらとしてはファミコンへの移植となると二人同時プレイは難しいかな?と
思っていたのだが幸いにも二人同時プレイも可能で、さらにファミコン版では
いろいろな意味で衝撃的な機能が付加されるということもあり、おいらは発売
日に喜び勇んでこのソフトを購入してしまった。

 そしてこの決断は大失敗だった。
まず、ファミコンという下位機種への移植と移植会社の技術の低さがあいまっ
て、元々このゲームが持っていたメタリックな質感の新感覚グラフィックは、
全くその原型を留めておらず、さらに画面はスクロールする度にチラつきまく
り、キャラクターも「飛行している」というよりは、短時間に近距離へのワー
プを繰り返すことによって移動しているようにしか見えず、移植ゲームとして
は五本の指には入るひどさだったのだ。


 しかし、それでも当時のおいらはくじけなかった。
例えゲームがひどくとも、このゲームには当時のおいらが期待した「新機能」
が盛り込まれていたからだ。
その「新機能」とは、今も昔も変わらずにゲームが下手なおいらが念願して止
まなかった機能であり、すなわち「その場復帰可能な無制限コンティニュー機
能」である。

 シューティングゲームで自機がやられた場合、「その場復帰可能」なゲーム
とそうではないゲームがある。
その場復帰とは、自機が破壊されてもスクロールは止まらずにその場で新しい
機体が登場するタイプのもので、ツインビーなどの二人同時プレイ可能なゲー
ムで多く採用されている、これとは別にゼビウスなどのようにミスをしたらミ
スをした場所よりも少し前に戻されてゲームが続行するタイプのものもある。

 エグゼドエグゼスの場合、二人同時プレイ可能ということもあり前者の「そ
の場復帰」が可能なゲームで、さらにファミコン版には無制限コンティニュー
機能がついていたのだ。

 つまりコンティニューを続ける限りいくらやられてもプレイ続行が可能、さ
らにその場で復帰できる為、どこかで詰まるということがない。
これは、当時のおいらが念願して止まなかった機能だったのだ。


 だから、例えゲームが「ちょっとアレ」だったとしてもこのゲームならおい
らにも先の方のステージを味わうことが出来るのだ!と気を取り直してプレイ
を続けること数時間・・・。


 確かにおいらは普通なら絶対に行くことの出来なかったであろう高難易度ス
テージを嫌というほど味わうことができた。

しかし・・・。
同時に「だからなんだというのだ?」という疑問が自分の中で大きく頭をもた
げてくるのを感じつつあった。

 裏技を用いた「無敵プレイ」が結局つまらない、というのは今日では常識に
なっているが、それに加えてこのゲームの場合、いくら進んでもゲーム自体の
変化が非常に乏しいのだ。
だから結局、やられては復帰し、やられては復帰し・・・を繰り返しただ漠然
とプレイしているだけでやっていることは最初の頃のステージと何ら変わると
ころがない。

 結局、おいらはこのゲームによって、なまじ無制限コンティニューがあると
ゲームがグダグダになる、ということと、徳間書店のゲームだけは二度を買っ
てはならない、という大事なことを教わり代償としてエグゼドエグゼス定価分
の授業料を支払うこととなったのた。


 最後に。
授業料といえばこのゲームは結構高かった。
当時のファミコンゲームの最高価格は5,500円だったのだが、エグゼドエグゼス、
ロットロットは5,200円という価格がついていた。
この頃は、殆どのゲームが、4,500円、4,900円、5,500円という三種類の価格帯
に分かれている中で、5,200円というのは非常に中途半端な価格設定だが、やは
り5,000円を超えているということで、ゲームの価格面だけで言えば最高級品の
部類に入る価格である。
おいらは、「夢の無制限コンティニュー機能があるから開発が大変で高いのだ!」
と単純に考えていたがそんなことがあるわけがない。
それは、全く方向性の違うパズルゲームのロットロットに同じ値段がついてい
ることからも明らかである。

 ところでこれは、この当時に発売された5,000円以上の、いわば最高価格帯の
ゲームのタイトルを改めて眺めていて思ったことだが、ゲームというのは値段
が高いからといって必ずしも面白いわけではない、いや、むしろこの当時の最
高価格帯のゲームにこそヤバイものが多い、ということに気付いてしまったの
だ。

 5000円以上するゲームの第一号は任天堂のエキサイトバイク、続いて同じ任
天堂のレッキングクルーが発売されている。
サードパーティの第一号は、アスキーのアストロロボ・ササ、次もアスキーの
ゲイモス、ちなみにこの頃のアスキーは何様のつもりなのか自社ゲームを全て
5,500円で供給し、ボコスカウォーズ、ペンギンくんウォーズなども全てこの
値段である。

 アスキー以外のメーカーではエニックスのポートピア連続殺人事件はいいと
しても、スクウェアのテクザー、さらにケムコのダウボーイというのは多いに
疑問の残る点である。



AXL 2003

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