レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「アストロロボ・ササ」

Media :FAMILY COMPUTER,MSX(?)
Maker :アスキー
発売日:1985年8月
種 別:アクション・シューティングゲーム


 今にして思えば、おいらは単純な子供だった。
別の言い方をするとゲーム業界にとっては理想的な消費者だったのかもしれな
い。
今回紹介するファミコン用ソフト「アストロロボ・ササ」が発売されたのは19
85年の8月、スーパーマリオブラザーズ発売の一ヶ月前のことで、ようやくサー
ドパーティが本格的にファミコンに参入してきた時期にあたる。
おいらがファミコンを購入した頃は、サードパーティは未参入状態だったので、
ファミコンのゲームメーカーといえば任天堂のことを指していたが、84年のハ
ドソン参入以来、ナムコ、コナミ、ジャレコ、タイトーなどのサードパーティ
が参入し、ファミコン市場が俄かに活気付いてくる。
ユーザーである子供達が同じファミコンソフトでありながら、メーカーの持つ
ブランドイメージにより商品を取捨選択していくのはもう少し先のことになる
が、アーケードゲームでお馴染みのメーカーや、初めて耳にするメーカーが、
それまでのペースとは比較にならないほどの量のタイトルをファミコン市場に
投入し、子供達は期待に胸を躍らせていた。


 おいらが初めて「アストロロボ・ササ」というゲームを知ったのは、発売の
数ヶ月前、玩具店にあった発売予定ソフトラインナップのチラシによってだっ
たが、そこに掲載されていたいくつかのゲームの中で殊更このタイトルがおい
らの目を引いたのは、主人公がロボットという比較的子供にアピールし易い内
容よりも、5500円という価格設定だった。
4500円から4900円が事実上の標準価格だった、当時のファミコンソフト界にあ
って5500円という価格設定を行ったソフトはこのゲーム以前には、任天堂のエ
キサイトバイク、レッキングクルー、dbソフトのフラッピーくらいのもので、
任天堂の2作は、それぞれステージエディットが出来る、というちょっとお得
な点があり、フラッピーは全240面という驚異的なステージ数を誇っていたので
「それなら値段も高くなるだろう」と単純に納得していたが、このアストロロ
ボ・ササには、それらに相当する「目に見える違い」は得になかった。

 にも関わらず、5500円という価格をつけるからには、これはとてつもなく面
白いゲームに違いない、とおいらは単純に確信し、発売日にそのゲームを購入
することになる。

 余談だが、このゲームのタイトル「アストロロボ・ササ」というのは非常に
発音しづらい、今にも舌を噛みそうになるのだ。
当時、小学6年生だったおいらとその友人は、即座に3回ほど舌を噛んだ後、
「アストロ菩薩」という勝手な仇名をこのゲームに奉り、以後、このゲームが
それ以外の名前で呼ばれることはなくなってしまった。


 ゲームの内容を簡単に説明すると、プレイヤーはササという名前のロボット
を操作する、ササは方向キーで左右に歩くことができる他、ボタンを押すこと
でショットを発射することが出来る。
ただし、このショットには反動があり、仮に地面に向けてショットを連打する
とその反動でササは上空へ浮き上がるのだ。
空中では、このショットの反動を利用して姿勢を制御し移動する必要がある。
つまり、右に移動したい場合には、左を向いてショットを連射することにより
その反動でササは右方向に移動するのだ。

 ゲームの目的は単純でそのステージ内にある全てのエネルギーパックを取る
こと、このエネルギーパックを取ることで、ササのエネルギーは一定数回復す
るが敵に触れたり、またショットを一発発射するごとに体内に蓄積されたエネ
ルギーは消費されていく。

 また、二人同時プレイも可能で、2Pプレイの場合、プレイキャラは色違い
のナナというキャラクターになる。
また、二人同時プレイに限り、プレイヤーからプレイヤーに自分のエネルギー
を相手に転送することにより、相手の危機を救うことができるという非常に珍
しい機能がついていた。

 こうして書いてみると、当時としてはなかなかよく出来たシステムで、面白
そうな気もするのだが、おいらとしては正直あまりこのゲームは楽しめなかっ
た。
その理由はまず、空中での姿勢制御の難しさにある。
このゲームでは空中にいる限り常に引力が働いており、放っておくとササは地
上に向かって落ちていってしまう、それを阻止する為に時折、地面に向けてシ
ョットを発射する必要があるのだが、その為、ササの位置を常に一定の高さに
保ち続けることは非常に難しくなっている、この引力とのせめぎあいに加え、
左右方向へのショットで左右の位置も制御しなくてはならない。

 例えば、エネルギーパックが高所の壁に阻まれた場所に格納されていた場合、
まず、その壁の位置までササを浮き上がらせ、壁にショットを当てて、少しづ
つ壁を削っていく、勿論、この時壁方向にショットを発射したことにより、逆
方向にササの身体は移動していき、すぐにそれほど長いとはいえないショット
の射程から外れてしまう。

 それを防ぐ為に、壁とは逆方向にショットを打ち、再び壁に近づかなければ
ならないのだが、当然、引力も働くので、うまく壁にショットを当てられる位
置にササを固定するの為にはかなりのストレスを溜めなければならない。

 その上、せっかく壁を全て削っても、間違ってエネルギーパックに一発でも
ショットを当ててしまうとエネルギーパックは消えてしまうのだ。
この為、がむしゃらな連射は命取りとなり、特に壁が薄くなってからは慎重な
射撃が必要となる。
その上、敵キャラが常にササを妨害にしにくるので、短気なおいらは何度コン
トローラーを投げたか分からない。


 確かに、ショットを撃った反動でキャラクターが逆方向に移動するというア
イディアは面白いのだが、このゲームの場合、理屈が先行してしまい、いまひ
とつゲームとしての面白さに欠けてしまったような気がする。
姿勢制御の難しさは、まだ経験次第でどうにかなるのだが、このゲームの最大
の問題点は、ショットを撃つたびにエネルギーが減っていくという点で、これ
がシューティングとしての爽快感にブレーキをかけてしまっているのではない
だろうか?

 おいらとしては、このゲームを購入したことにより、定価が高ければいいっ
てもんじゃない、ということを学び、このゲームを購入したことにより一ヶ月
後に発売された、このゲームよりも600円も安いスーパーマリオブラザーズ
をしばらく買うことができなくなってしまった、という事実も、その教訓をお
いらに叩き込む一因となった。



AXL 2002

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