60年代のTVCM

オー・モーレツ!(丸善石油)

 CM史の本などで、60年代を象徴するTVCMの一つとして定番となっているのが、この丸善ガソリンのCMであります。高度成長時代のサラリーマンを形容する決まり文句として「モーレツ社員」という言葉がありましたが、このモーレツという言葉をキャッチコピーに、老若男女を問わず、広く人口に膾炙したという意味でも、やはり、このCMは、良くも悪くも60年代を代表するCMということになるのでしょう。
 CMの作りとしては、15秒の間に次のような歌詞のCMソングが流れます。

 「レッツ・モーレツ、100ダッシュ。丸善ガソリン100ダッシュ」
 
 で、最初の画面で道路沿いの立て看板にはなかった小川ローザの写真が後半の画面では現れ、車が立て看板の脇を通った時に、その風にスカートの裾をあおられた小川ローザが「オー・モーレツ!」とつぶやくのであります。

 このCMに関しては、よく高度成長時代を象徴するようなCMというような言われ方をしていますが、このCMが放映された1969(昭和44)年という年は翌年に大阪で開かれた万国博が控えていたとはいえ、60年代のどんづまりに当たる時代の雰囲気としては既に70年代の雰囲気が漂いはじめていたように記憶していますし、CM自体も、すでにアナクロとなりつつあった「モーレツ」という言葉を、敢えてアナクロ的効果を狙って使っているのではないかと、中学2年の私でさえ感じたりしたのを覚えています。
 それと、猛スピードで通りすぎる風にあおられるスカートは、確かにマリリン・モンローの「七年目の浮気」を連想させるものではありますが、資料編で指摘されているような「お色気」とか「セクシー表現」というほどの刺激は、当時としても、それほどではなかったような気がします。むしろ、もう少し後だったと思いますが、マスプロ・アンテナの「見えすぎちゃって困るの〜」の方が、その画面といい音といい、はるかに青少年の劣情をそそるものだったと記憶しています。


[資料編]

★オー・モーレツ!(『TVグラフィティ』講談社編)
 ミニスカートのすそをひるがえして、小川ローザが「オー・モーレツ!」と、ふしぎなイントネーションで発声する。そのお色気が、世の中の男たちをしびれさせた。
 が、受けたのは、それだけではない。一世をふうびしていた“猛烈主義”を、どこかで茶化してしまう効用が、期せずしてそこにあった。「猛烈なんていったって、たいして猛烈でもないネ」のココロである。
 富士ゼロックスの「モーレツからビューティフルへ」が登場するのは昭和45年だが、小川ローザが、「オー・モーレツ!」と謳ったこの時点で、すでに猛烈主義の時代は終わりを告げていた、ということだろうか。
(丸善石油・昭和44年)

■オー・モーレツ!(丸善石油)
 「はっぱふみふみ」とは逆に、チラリズムの魅力で大人達の感性を強烈に刺激し、同じく世間を大騒ぎさせたCMが「オー・モーレツ」。後のセクシー表現CMの走りと言われる。モーレツ嬢の小川ローザは、その後、売れっ子タレントとなる程の大人気で、ポスターが盗まれるスタンドまで出現する始末。丸善石油の売れ行きまで伸びたとか?猛烈なガムシャラな時代を代表したかのような「オー・モーレツ!」は、たちまち流行語となった。しかし、このモーレツなハイオクガソリンが公害の元凶のように見なされ始めると共に「モーレツから、ビューティフルへ」と変動していくことになる。









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