レトロゲームレビュー/テイルズオブデスティニー2

Tales of Destiny

 

 

機種

プレイステーション2

発売元

ナムコ

ジャンル

ロールプレイング

発売日

02年11月28日

MEGA HITS版:03年11月6日

PlayStation2 the BEST版:05年7月7日

価格

6,800円

MEGA HITS版:3,000円

PlayStation2 the BEST版:2,667円

プロデューサー

吉積信

サウンド

桜庭統

キャラクターデザイン

いのまたむつみ

テーマソング

倉木麻衣:『key to my heart』

国内売上本数

80万本以上

プレイ時間

70時間以上

 

 

カイルは英雄を追い求めた。ならば今作は何を追い求めたのか。

 

 

グラフィック

優しいラインや色使い、緻密さもさらに高まっている。前作「デスティニー」と比べ

見た目の雰囲気は大きく変化した。フィールドはフルポリゴンで臨場感は中々。

 

サウンド

穏やか過ぎて耳に届かなかったり、勝手にはりきって行き過ぎてしまったり、

うまく折り合いがつかないまま、最後まで空回りしてしまっていたように感じる。

フィールドの曲は霧に入ると曲調が変わったりして、悪い気はしなかったが・・。

 

システム

 

集中力または精神力を表すSP(スピリッツポイント)は、攻撃一辺倒ではなく、

緩急をつける技術が求められる。また、特技や昌術に付加効果を付け加える

エンチャントや、タックル、バックステップなどの細かい技も追加され、戦闘を

楽しもうとすればこの上ない深さを感じた。もちろん初心者には厳しいだろう。

 9

操作性

町やダンジョンでは、滑る感覚で進み、たまに引っかかたりするのが嫌だ。

戦闘での操作は、よほどの手練れでなければ、システムが持つポテンシャルを

100%引き出すことはできない。どう評価するかは人それぞれの感性による。

 

プラス要素

戦闘の凝った作りや、キャラの豊富な会話シーンはあるに越したことはない。

しかし主人公との共感、前作の英雄達の扱い、唐突なストーリーの進み方など

前作のイメージさえぶち壊しかねない危険因子があらゆる個所に潜んでいる。

 

外観評価点

 

37

プレイ感想

カイルとロニ。彼らが冒険に出ようと思ったのは誰にも止めようのないことだ。

リアラと出会い、がむしゃらに英雄を目指したのも一途な性格の仕業だろう。

しかし、彼らの身勝手な考え方に自分が振り回されるのには我慢できない。

 

今作の肝である「リニアモーションバトル」は非常に戦略性の高いシステムを

いくつも備えており、有利に戦おうとすれば心がけるべきことがいくつも浮上する

ような奥の深過ぎるシステムだ。通常のプレイヤーではなかなか全ての要素に

手が回らず、追加技や秘奥義を出すので手一杯だろう。ましてや初心者に

とっては、そういったたくさんの要素があることにさえ気付かないかもしれない。

 

 キャラクターが活き活きしているのは確かだ。ジューダス(リオン)の魅力は、

前作のファンにとってはなおさらだろう。しかし、ラストの直前まで英雄の助言を

求めてしまったカイルら一行。そして、まさに助言しかできなかった元英雄達。

そして、なんのために神を倒したのか分からなくなってしまうような締めくくり。

RPGで重要とされる要素がいくつか欠落している今作を楽しめるとすれば、

それはよほど戦闘が好きな人くらいだろう、と思いながらうなだれてしまった。

やり終えてこんなにむなしい気分になったRPGは他にはない。注意してくれ。

 

内容評価点

 

33

総合評価点

 

70

コメント

 「ファンタジア」「デスティニー」「エターニア」と毎回全く違う世界を描いてきた

テイルズシリーズだったが、その第4弾はなんと「デスティニー」の続編だった。

なんでデスティニーなんだよ!と私を含めた多くの人がそう思ったに違いない。

「デスティニー」はこの3作品の中では最も評判が悪いというのが定説である。

これは敢えてだったのだろうか。まぁもう終わったことなのでどうでもいいか。

 

 私は「デスティニー」はプレイしていないので大口を叩ける立場ではないが、

それでも今作のシナリオには厳しいものがある・・・いや、ありまくると言いたい。

あまりにも一心に英雄を追い求めながら、身勝手でやりたい放題のカイル。

それだけでも不満は弾けそうだが、まぁリアラとの兼ね合いもあるので許そう。

しかし、前作の英雄達があまりに不甲斐ないのはどう捕らえたらいいのか。

あれに懐かしさを感じる人はいても、嬉しいと思う人はほとんどいないだろう。

今作のメインはあくまでカイル達だ、と言いたいにしても、そう何度も英雄達の

醜態をさらす必要があるのだろうか。そして、リアラを犠牲にしてでも神を倒そう

としたのにも関わらずあのエンディング。それらしい理由があればまだしもだが、

前作もまとめて台無しにしそうな今作の存在意義を本気で考えてしまう。

普段はシナリオを重要視しない私にとっても、今作のそれは度を超えていた。

ちなみに今作のシナリオは「グランディア」と同じく月光が担当している。

 

 ここまで激しく罵倒してきたが、今作に対する一般的な評価は、実は最低な

ものばかりではない。そして、それはひとえに戦闘システムの賜物である。

元々戦闘システムには定評があった今シリーズだが、今作はこれまでの作品

から大きく進化し、新システムの導入や難易度の調整が入念に行われている。

打撃から特技へ、さらに奥義へという連携、防御や回避の動作、唱術(魔法)

や特技からの追加効果の発動、そしてスタミナが切れないように戦うこと。

これら全てを自分の腕で行わなければいけない、という今作の戦闘の重厚さは

賞賛に値するほどだ。なるほど、シナリオを月光に一任したわけである。

そして、これこそが今作の評価をギリギリつなぎとめた最大の理由なのだろう。

 

この戦闘に関しては、私の友人である住さん(五十住拓哉氏)も批評を書いて

くださっており(というか、今作は彼から借りた)、そこで熱く語ってくれている。

戦闘システムを重視している彼の意見も参考にしていただくと、今作に対する

より客観的な評価の全体像が見えてくるだろう。彼の批評があるおかげで、

今作に対しては安心して自分の想いをぶちまけることができた。

 

 今作は「デスティニー」よりも売れるわけがないと思っていた私の予想に反し、

それを上回る約80万本の大ヒットを記録した。この後、テイルズシリーズの

開発ラインは非常に活発化し、携帯機、据え置き機を問わず、年に1本以上とも

いえるようなハイペースで新作が発売されていくこととなる。

 

 

 

2005年 8月15日