レトロゲームレビュー/天誅

立体忍者活劇 天誅

 

 

機種

プレイステーション

開発

アクワイア

発売元

ソニー・ミュージックエンタテインメント

ジャンル

アクション

発売日

98年2月26日

忍凱旋 版:99年2月25日

忍凱旋 the BEST版:99年11月11日

価格

5,800円

忍凱旋 版:4,800円

忍凱旋 the BEST版:2,800円

推定国内売上本数

40万本以上

(うち、忍凱旋 版:10万本以上)

プレイ時間

15時間以上

 

 

落ちてる団子を食べちゃうの!?

 

 

グラフィック

 

建物や、その色使いなど、一見したところは時代をうまく感じさせている。

しかし、いざ動かすと、ポリゴンが透けたり、カメラアングルが悪過ぎたりする。

 

サウンド

 

これまた時代劇で流れていそうな、ピッタリの音楽だが、音量が小さめな気が。

しかし、取って付けたような台詞や叫び声は飽きるほど聞こえてくる。呆れる。

 

システム

 

必殺技を用意し、それを高得点にすることで、見つからないように忍び寄る、

という新しいゲーム性を実現した。また、手裏剣や撒きびし、煙だまなどの

お馴染みな忍具から、痺れ団子などのアイテムまで多数用意されている。

 8

操作性

 

忍者とは思えない脚の遅さは全然許せる。しかし、カメラアングルの悪さによる

心地悪さと戦い難さ、さらには攻撃技や、特殊動作の出し難さにうんざり。

 

プラス要素

3次元で忍者を動かせる嬉しさと、血飛沫の飛び散る必殺技の爽快感が魅力。

隠密だけでなく、様々なルートや、様々な戦い方で、何度も遊ぶ事ができる。

ただし、操作性の悪さや画面の見辛さも相当なもので、初心者には厳しい。

 8

外観評価点

 

 

34

プレイ感想

3次元になって、忍者はようやく自分の魅力を発揮できる舞台を得たのだろう。

忍び足で壁に貼りつき相手を伺う、または、鍵縄を使って屋根伝いに進む。

雰囲気からアクションまで、忍者らしさたっぷりの内容にワクワクしてしまう。

「気」レーダーが誘う緊張感と、それを切り裂く必殺技のギャップも外せない。

豊富なアイテムと、豊富な攻略方法も、飽きさせないための工夫なのだろう。

これだけ内容に力を入れたのだから、もう少し外見にも気を使って欲しかった。

おそらくカメラアングルが原因なのだろうが、方向感覚がとても掴み難いのだ。

さらに地図も曖昧で、そこまで困るわけではないが、道に迷う事も良くあった。

複雑な地形の攻略時には、カメラに加えて、操作感覚の悪さも浮き彫りとなる。

落とし穴に落ちて、再び最初から、というのは、少々辛かったかもしれない。

総評としては、遊び難さを魅力だけでカバーした、カリスマ作品であるが、

逆に、そこさえ何とかすれば、怪物になり得る、未完の大器でもあると感じた。

 

内容評価点

 

37

総合評価点

 

 

71

コメント

 これまでにも忍者が主人公のゲームはいくつも見てきたわけだが、

3D時代になってからの忍者ゲームは、おそらくこれが最初だと思われる。

そしてその内容は、これまでの忍者ゲームを遥かに凌駕するものだった。

 

 これまでの忍者ゲームも、手裏剣を投げたり特殊な動きが出来たわけだが、

それはゲーム内の一ヴィジュアルであり、一エフェクトでしかあり得なかった。

それが本作では、忍具を使った前後左右+上下からの攻略法と、物陰などに

忍びながら気付かれないように敵を倒す、という忍者らしい遊びが実現した。

つまり、忍者が根底となり、ゲームシステムを作り上げたと言えるのである。

 

 ではなぜ、どのメーカーもこんな恰好の素材に手を出さなかったのか。

ここからはあくまで私の予想なのだが、いくつかの理由が思い浮かぶ。

その中でも最も大きな理由として考えられるのは、技術的な問題だろう。

頭身の高いポリゴンキャラを動かすことだけなら、「鉄拳」がやっているように

不可能ではない。しかし、たくさんの建物とカメラアングルがそこに加わると、

話しは全く別であり、それは今作をプレイしてみれば一目瞭然な事である。

しかし、それでも何とか遊べるところまで漕ぎつけて、いち早く発売した

アクワイアの“一人勝ち”と言える状況だったのではないかと思える。

 

 では最後に、アクワイアの作品を簡単に紹介して終わりにしたい。

「天誅」は海外でも好評で、その逆輸入版として「忍凱旋」が発売。さらには、

「忍凱旋」のステージ制作モードで、ユーザー投稿作品を集めた「忍百選」と、

コンスタントな発売によってその名をより身近にする事に成功した。

「天誅弐」を発売後、「天誅」のタイトルはフロムソフトウェアへと任される事と

なったが、音声認識システムを使った「デカボイス」や、スパイクとの共同制作

による「侍」などがあり、これからも新しい作品を送り出していくに違いない。

 

 

2003年10月27日