レトロゲームレビュー/スーパーマリオサンシャイン

スーパーマリオサンシャイン

 

 

発売元

任天堂

ジャンル

アクション

発売日

02年7月14日

価格

6,800円

プロデューサー

宮本茂

サウンド

近藤浩治

推定売上本数

70万本以上

プレイ時間

50時間以上

 

 

“新しいマリオらしさ”の発掘に酔いしれる裏で、

“これまでのマリオらしさ”は忘れられていく運命なのだろうか。

 

 

グラフィック

「マリオ」らしい暖かさはそのままで、今回は水や光の表現に力が入っている。

ステージはかなり広いが、高台などからステージ全体を綺麗に見渡せたり、

泥に水をかけた時の泥がとれる様子や、反射版に写りこんだ景色なんかは

実際に見てみるとホントびっくり。その分、妥協している部分もあったけど。

10

サウンド

初代「スーパーマリオ」の南国風アレンジを始めとして、各ステージでは更なる

アレンジバージョンへと変化する。異次元ステージではほとんど元曲のままで

聞けるのが懐かしいかも。テンポの良い曲が多いのはさすがだが、これまでの

シリーズと比べて、かなり曲自体のイメージは薄くなった気がする。

 9

システム

 

各ステージ毎に設定されたタスクをクリアしていくというスタイルは前作同様。

しかし今作では、4種類のウォーターポンプ機能が使えるようになったことで、

アクションの種類はもちろん、システム的な幅も広がっている。視点変更や

会話などの厄介な部分も、前作と比べると確実に改善されたように思える。

 9

操作性

GCの3Dスティックが柔らかめなせいか、前作よりもマリオの体が軽く感じ、

良くも悪くも軽快,敏感に動かす事ができた。放水やホバーの操作や切り替え、

視点の調節も重要だが、少々ややこしいのも事実。そしてポンプ(ホバー)が

使えない状態では、ジャンプするのが怖いくらい難しく感じてしまうのがすごい。

 9

プラス要素

ウォーターポンプの登場によって、プレイヤーの上達にあわせて攻略ルートが

無限に増えていくような幅のある作りとなった。総ステージ数はかなり少なく、

難易度も前作よりは低めなので、クリアまでのボリュームは少し物足りないと

感じる人もいるだろうが、遊びの幅が豊富ということを考えれば納得できる。

 9

外観評価点

 

46

プレイ感想

約6年ぶりのマリオとの再開にいささか興奮気味。ファーストタッチでは、少し

身軽になった?という感じを受けた。サンシャインビーチに戯れる人々と陽気な

BGMに心躍らされる一方、サンセットビーチでは沈む夕日に目を奪われ怠惰な

BGMに南国のリゾート気分を満喫・・・・・。ため息も出よう。

 

リアクションの宝庫と化した広大なステージでは、ウォーターポンプによって

自由自在に水を操り、落書きやドロドロを綺麗に落としたり風車を回したり・・・、

マリオではなく水を自由に操る、という新しいおもしろさの発見だ。

 

ある程度は攻略ルートが設定してあるものの、慣れてしまえばそこに道が

あるか無いかはもはや問題では無い。壁ジャンプやスピンジャンプ、そして

ホバーノズルによる空中制御を巧みに操る事で、マリオはどこまでも上を

目指していく事ができる。プレイヤー自身が道を切り開くのだ。

 

異次元ステージではポンプを使えなくなるのだが、「マリオ64」と言うよりは

「スーパーマリオブラザーズ」に近い雰囲気。音楽もそうだが、あの一直線に

作られたステージを、ジャンプだけで渡っていく感覚は懐かしかった。

 

初心者には少々厳しく上級者には少し物足りないという、微妙な難易度、

ボリュームに対して、少々やりきれない不満はあるものの、マリオの豊富な

アクションで実に様々な遊び方が可能なので、それで満足としたい。

 

内容評価点

 

46

総合評価点

 

92

コメント

SFC、GB、N64と立て続けにハードと同時に発売されてきた「マリオ」だが、

今作は、ゲームキューブの発売から約1年後の02年7月14日に発売された。

また長くなりそうな予感が・・・・・よほどの物好き以外はどうぞ無視して下さい。

 

今まで通りならば、「マリオ」の発売によって、ソフト、ハード共に爆発的な

伸びを期待するところである。しかし今作は、安定して売れたものの期待通りの

大ヒットを飛ばすまでには至らなかった。だからといって、今回の「マリオ」が、

これまでの「マリオ」と比べて劣っていた、と考えるのは少々安易過ぎだろう。

 

さて、今回最も注目すべきは、何といっても新アイテムのウォーターポンプだ。

これの登場により、アクションの種類は大幅に増え、マリオを動かす楽しさも

大幅に広がった。さらにポンプから放つ水を自在に操るという楽しさも増え、

“プレイヤーの思うままに操り、それ自体を楽しむ。”というマリオのコンセプトに

あった進化を、今作もしっかりと堪能する事ができていたと思える。

 

しかし、私には少しだけ引っ掛かって腑に落ちない部分が、一つ感じられた。

それは、ホバーによる空中制御だ。今作では、普通のジャンプでは届かない

場所でも、ホバーを上手く使う事で、そこにたどり着く事が可能となっている。

それがゲームの幅が広げ、プレイヤーの可能性を広げた、という面では確かに

素晴らしい。しかし、それによって落ちる事に対する恐怖を薄れさせてしまう、

ということも否定できない。さらには、テンポ良くジャンプすることのおもしろさを

忘れさせてしまうのでは、ということも考えられる。

 

それは考え過ぎだと思うかもしれない。オマケ感覚ながらも、ホバー無しの

ステージは用意されていた。しかし、普段ゲームをやり慣れない人にとっては、

ホバーはとても甘い誘惑に思えるのではないだろうか。あって当然のものとらえ

ついつい頼り過ぎてしまい、何気ないジャンプにもホバーを使ってしまうとか・・。

さらには、ホバーの使えない異次元ステージで不満に思ってしまったり・・・。

そんな事が脳裏をよぎり、いろいろと考えてしまったのである。

 

新しい“らしさ”の発掘のために、だんだんと消えて行くそれまでの“らしさ”。

それは今作に限った事ではなく、これまでのいくつもの作品が直面してきた事。

今作でこんな事を書いておきながら、当時私が全く気にならなかったのだが、

「マリオ64」発売時の2Dから3Dへ、というギャップに苦しんだ人も多いだろう。

たくさんの人々が、何かが進化した時に驚きや喜びを感じるのと共に、それに

伴う疑問を抱いてきたのであろうということが、今の私には良くわかる。

 

ゲームが進化するとき、それに対して不満を持つ人は少なからずいるものだ。

だからと言って、そのままでいる事を選んだのなら、その作品はいずれにせよ

飽きられる運命にあると思う。新しい素晴らしさの発見のために、それまでの

素晴らしさを諦めなければならないときがある。それがその作品のこれからの

為だと最初から悟ることができたのなら、私達は消えゆく良さを惜しむのでは

なく、新しい良さを柔軟に受け入れていける心を持つべきなのかもしれない。

もしそうだとするなら、我々が願うのはただ一つ。“せめてその新しい良さが、

捨てられた良さを忘れさせてくれるほど素晴らしいものであって欲しい。”

ということである。

 

 

2004年 3月 1日

2005年 6月12日訂正