レトロゲームレビュー/ゼルダの伝説 時のオカリナ

ゼルダの伝説 時のオカリナ

 

 

発売元

任天堂

ジャンル

アクションアドベンチャー

発売日

98年11月21日

価格

6,800円

プロデューサー

宮本茂

サウンド

近藤浩治

国内売上本数

140万本以上

全世界売上本数

600万本以上

プレイ時間

100時間以上

 

 

ゲームが好きで、本当に良かった。

 

 

グラフィック

ポリゴンが多少カクカクしているのは認めざるを得ないが、熱さや寒さ、

そして息苦しささえも感じさせ、自分はあたかもその場所にいるかのように、

周りを注意深く見渡してしまうのだから、そんな演出もまた認めざるを得ない。

10

サウンド

場の雰囲気と見事に調和し、尚且つインパクトのある素晴らしい曲ばかり。

フィールドでは、リンクの状況に合わせて曲調が滑らかに変化するし、

更にはオカリナを吹くことで、自分から音を作り出せてしまうのだから驚きだ。

10

システム

距離感や位置関係の把握を助け、華麗な戦闘を演出する「注目」システムや、

スムーズなアクションを実現する「オートジャンプ」システムは、3次元空間を

ストレス無く遊ばせるための新技術だ。操作系も綺麗にまとまっていて良い。

10

操作性

いつのまにか自分がリンクになっているのだから、その間にコントローラーが

存在しているはずはない。また、大した操作をしなくても、リンクはダイナミック

に動いてくれる。簡単とは言えないが、絶妙と言うにふさわしい操作系だろう。

10

プラス要素

自分だけが解けたのではと思えてしまう絶妙な謎解きはもちろん、流鏑馬や

釣堀などのミニゲーム、さりげない隠し要素などを含めて、全体のボリュームは

圧倒的だ。クリアを目指さなくてもおもしろいだなんて信じられない。

10

外観評価点

 

50

プレイ感想

炎の神殿はやけに蒸し暑かった。水の中では体は重いし息も苦しかった。

氷の洞窟は本当に寒かった。朝日はまぶしすぎて思わず目を細めてしまった。

特にきれいだったというわけではない。ただ、存在感や臨場感という意味での

演出や効果音、物の質感へのこだわりが嫌というほど伝わってきたのである。

またAボタンだけでほとんどのアクションができたり、Cボタンにアイテムを3つ

割り振っていつでも使えるようにできたり、「注目」や「オートジャンプ」によって

複雑な地形でも快適に動き回れたりと、システムや操作系も親切だった。

サウンドにも一工夫あって、状況によって変化する曲調が感情の移り変わりを

表現していたり、オカリナを吹いて自分で音を作り出せる楽しみもあったりする。

今作を構成する全ての要素が、自分とリンクを繋いでハイラルに導いてくれる。

ゲームでの体験が現実での体験のように記憶に残っていく。こんなにワクワク

できたのは、もう一つの現実がそこにあったからに違いない。こんな作品と

出会う事ができるだなんて。ゲーム好きで本当に良かったなぁ。

 

内容評価点

 

50

総合評価点

 

100

コメント

 当初は97年11月の発売予定だったが、2度の延期を経て、98年の11月

に発売されている。前作はGBで93年6月6日に発売した「夢を見る島」だが、

据え置きハードでいえば91年に発売した「神々のトライフォース」以来となり、

実に7年越しの続編ということになる。今作はこれまで3D作品が直面してきた

3D化による問題を解決している。今回はそれについてのお話を紹介したい。

 

 まず今作で注目すべきシステムの一つに「オートジャンプ」がある。宮本氏は

「これまでジャンプゲームを作ってきた僕やからやってもいいと思った。」と確信

を持って語っており、今作に新しいジャンプシステムを取り入れている。これは

地面が途切れると自動でジャンプして向こう側にいける、というものなのだが、

宮本氏自らジャンプの操作を捨てたということから、いかに3D化による影響が

お手軽なプレイ感覚を阻害しているかということがわかるのではないだろうか。

 

 次にカメラアングルだが、今作では橋の上や洞窟の中などの複雑な場面でも

操作しやすいように、非常に入念な調整が施されている。また「注目」システム

によっていつでもカメラを背後に回り込ませられたり、相手との位置関係を常に

調節してくれるようになっているのだ。ただ、これらのカメラのプログラム量は

非常に膨大になるそうで、他のハードでは実現が不可能なほどらしい。

このことからも、3D化による問題が深刻であることが感じられる。残念ながら、

カメラについての問題は、まだまだ当分の間続いていくことだろう。

 

 最後に「インタラクティブムービー(リアルタイムムービー、ポリゴンデモなど)」

についてだ。これはPSの作品によく見られる「プリレンダームービー」に対して

宮本氏が主張した表現手法である。「インタラクティブムービー」とはゲーム内の

ポリゴンモデルとカメラ使うムービーのことであり、プレイ中の映像と根本的には

同じである。よって、データ量や読み込み時間の少ないデモ映像を作ることが

できるのだ。またこの方法は、「プリレンダームービー」のように専門のチームを

作る必要がないために制作費を抑えることができたり、プレイヤーに一貫した

作品のイメージを持ってもらえるというメリットもある。映像の質では「プリレンダ

ームービー」に引けをとるものの、ゲームのあり方を考える上で「インタラクティブ

ムービー」の存在は非常に大きな意味を持っていると考えられる。

 

 高画質なムービーによる演出に力を入れ、より映画に近づけていこう、とする

傾向にあった、当時のゲーム業界に対し、もう一度ゲームの本質を見直させる

機会を作った作品として、今作の功績は大きかったと思いたい。

 

 

2000年5月

2002年 4月 6日訂正

2002年12月13日訂正

2003年 6月 7日訂正