カモ目 カモ科 大きさ72cm 翼開長138cm 冬鳥 飛来地 北海道〜九州 準絶滅危惧種(環境庁) 天然記念物(国) |
日本に冬鳥として10月〜4月 日本の限定的な越冬地に飛来する。群れで行動する。水生植物のマコモや水草、イネ科の植物などを食べる。食料となる植物が豊かな、湖、沼、水田、湿地で暮らす。オスもメスも同じ体色で、全体に茶褐色で尾が黒いっぽい。足とクチバシがオレンジ色。世界の大陸北部に広く分布、越冬のため南下する。日本では最初の中継点北海道に飛来し、その後宮城県伊豆沼など主要な越冬地で過ごす、春にはふたたび北海道を中継して大陸へ帰っていく。中部以西では飛来数がかなり減っている。数百から数万の単位で群れをつくり、日が昇るとともに一斉に飛び立つ、そして日が暮れると一斉にねぐらに帰って来る。一夫一妻で、どちらかが死ぬまで添い遂げるという。 |
ウォッチングのコツ 国内最大の飛来地としては、北海道石狩平野の宮島湖、宮城県伊豆沼・内沼があげられる。北海道宮島湖も、宮城県伊豆沼も、国が天然記念物に指定し、ラムサール条約で保護された貴重な越冬地である。観察の仕方などは、サンクチュアリセンターに立ち寄り聞いてみよう。 マガンの習性として、夜明けとともにエサを採りに一斉に飛び立つ。夜間は池でやすむため、夕方も一斉に帰って来る。その瞬間の感動は何ものにも替えがたい。できれば明け方の飛び立ちを観察するのがいいだろう。 寒いので、防寒をしっかりすること、むやみに鳥たちに近づかないことを気をつけよう。 |
マガン
宮城県伊豆沼・内沼の鳥類およびその生息地は、国の天然記念物であり、1985年、日本で2番目にラムサール条約登録湿地となった。
マガン、ヒシクイなどのガン類、約6万羽が飛来、その数は全国に飛来する数の8割を占めるという。
伊豆沼は大きな沼だが、一番深いところでも1.6mと水深が浅いのが特徴で、マコモ・ヨシといった水鳥たちのえさとなる水生植物が非常に豊かである。
また、周辺には湿地や田んぼが広がっており、渡り鳥の楽園だ。東北としては比較的温暖で沼が凍ることもないという。
東北自動車道 築館ICをおり、一路、伊豆沼へ。この日、宮城地方は大雨洪水警報の予報が出ていたが、雨足はそれほど強くなく、空もやや明るくなってきた。
14:30に沼の入り口付近に到着。車を駐車して見てみるが、カルガモやサギの姿が見えるがマガンはいない。隊列をくんだマガンが飛んだような気がしたが、自信がない。
伊豆沼のガンは10月中ごろが見ごろだと人に聞いたことがある。渡ってきた直後は伊豆沼で寝起きをするが、落ち着いてくると周辺の沼に分散するそうだ。が、今年は渡りが早かったようで、どこで会えるのかわからない。願わくはマガンのみならず、ヒシクイやカリガネにも会いたい。
雨が急に強くなってきた。
まずは、伊豆沼サンクチュアリセンターに向かう。
サンクチュアリセンター
2階展望室
サンクチュアリのおじさんにマガンが見られるか尋ねると、「今頃は近くの田んぼにいるよ」、「だいたい5:00ごろ、伊豆沼に戻ってくるよ。」、「そりゃーもー、5万羽きてんだから。空が黒くなるくらいだよ。」とのこと。他に客もなく、おじさんの声が広いホールに響く。
すでに時刻は15:30、遅くなってしまった。
「天気が悪い日は早めに帰って来るよ。」とおじさん。
雨足はどんどん強くなっていく。でも、ワクワクしてきた。おじさんありがとう。
サンクチュアリから車を出して数分、前方に十羽前後の隊列をくんだ鳥を発見。
マガンだ。同じような群れがどんどん増えてくる。家族単位の群れなのだろう。クワークワークワーと鳴き声が空にひびき、空を埋める。
四方八方の空から群れがねぐらに向かって帰って来る。想像以上だ。
鳥肌がたった。
←次々に沼に降りるガン。
遠いし暗いし雨が冷たい。車を降りて沼を見ると、すでにたくさんのガンが休んでいる。
みんな同じ方向を向いている.。ガン類はとにかく警戒心が強い。水上は安全だとわかっているようで、じっくり観察ができるが、ごらんのとおり遠い。
翌朝、5:00頃、まだ外は雨である。雷さえ鳴っている。
早朝の撮影はあきらめる。この日は急いで帰らなければならなかったが、7:00をまわるとすっかり雨があがったので、東北道へ向かう帰路、田んぼでガンを探す。ときおり数羽の群れが飛んでいる。
← 田んぼのマガン
伊豆沼と内沼の間に広い田んぼがあった。ガンが飛んでいる。近づくと・・・・いた!
前の夜の雨で湿地のようになった田んぼにたくさんのマガンが降り立ち、朝食をとっている。
驚かさないよう車から降りず、車内から観察する。
← 民家の上を飛んでいくマガン
ほんの一瞬、太陽が顔を出す。その光の中をマガンが飛んでいく。
人の暮らしとの距離を感じて欲しい。
← 屋根の上をマガンが行く
ここに住む人にとって、身近な彼らの存在は日常なのだろう。
そして、彼らにとっても人の暮らしが欠かせない。広大な田んぼが豊潤な命たちをつないでいく。
現地情報
宮城県伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター |
宮城県栗原市若柳字上畑岡敷味17−2 TEL0228-33-2216 |
伊豆沼・内沼の自然の情報拠点 各種、研究・保護事業を行う。1階は展示。2階は展望・観察室となっている。サンクチュアリとは、人間と自然が共生するための「聖域」という意味である。 休館日:月曜日、祝日の翌日、年末年始 開館時間:9:00〜16:30 入館無料 JR東北本線「新田駅」より10分 ※ 詳しくは、サンクチュアリセンターHPへ |
←空を埋めるガン。
16:30、突然ガンたちがいっせいに飛び立った。沼の中央へ移動するようだ。声がひときわ大きくなり、空を埋める。
薄暮の大雨という状況で、この光景はなんとも幻想的。
うまくことばにできない。
ガンにくっついて、鳴き声と空気も移動していくみたい。
←沼のはしから中央へ(撮影:ぽんぽこ)
ガンが黒い帯になって連なる。希少な生き物もいいけど、僕は豊潤な命がひと目でわかる、こういう光景のほうがはるかに好きだ。豊潤さのスケールに圧倒される。
後で聞くと、僕は一人で悲鳴を上げていたらしい。
↑黒っぽいガン
マガンに混ざる他のガンを探す。
時おり黒っぽいガンを見かけた(中央)。全体に暗色、一回り大きく見えるので、ヒシクイかと思ったが、くちばしはすべてオレンジなので違うだろう。左右のガンはもっとも多くいたポピュラーなタイプ。右の個体のくちばしの先が少しだけ黒いけど、若いマガンだと思う。
鳥は種類の見分け方のみならず、オスとメスでも違うし、若い時期も親とは違う鳥に見え、難しいのだ。
よくわからないので、すべてマガンということにしておこう。