「しっぽ、白くないですね」 写真を見てスタッフの方は一言・・・・。
「ケナガネズミではありませんね。」
がーーーん。かなりショック。
さらにスタッフの方は「ということは、このネズミはクマネズミですね」
ク、クマネズミ・・・・・? さらに追い討ちをかける一言。
天然記念物のヒーローが、一夜にして悪役に変身してしまった。
ご存知の方も多いと思うが、都市で増えて問題となっているクマネズミ。もともとは外国から来た外来種だ。
奄美では、クマネズミが生態系に影響を与えることが懸念されている。天然記念物であるトゲネズミや、ケナガネズミと生息圏が重なれば、当然、生存をかけた競争が始まる。ネズミ類だけではない。奄美にはクロウサギや鳥類など、固有の生き物がたくさんいる。ちょっとしたバランスが崩れただけでも、生態系に与える影響は計り知れない。
どこからどう見ても、クマネズミは奄美の悪役だ。
ふらっと数日の滞在で出会ってしまったクマネズミ。これが奄美の、いや、日本の生態系の現実なのだろう。種としてのクマネズミの存在にため息をつきつつも、写真の中の、個としてのクマネズミのつぶらな瞳に心が揺れる。
わかっているよ。おまえが悪いわけではない。
(公開:平成20年1月6日)
クマネズミ
スタッフの方よりまず、「よくネズミが撮れましたね」とおほめの言葉。
「ネズミはたくさん生息していても、見ること自体とても難しいのです」とのこと。
たしかに僕もそう思う。
さて、かんじんの同定はというと・・・・・。
「トゲネズミではありませんね」
「トゲネズミはもっと毛がごわごわした感じなので、一目でわかります。」
ふむふむ。僕もそう思っていた。というのは、このネズミを撮影した日の深夜、金作原(きんさくばら)の林道の上のほうで、僕はトゲネズミを目撃していた。上のネズミよりも一回り小さい、黒い塊が、大雨の中、ぴょんぴょん跳ねながら道を横切ったのだ。なんというか、トゲネズミは質感がもっと硬いのだ。
ここまでは予想通り。
「で、こいつはケナガネズミの気がするのですが・・・?」
「うーーーん、しっぽは見ましたか?」との質問。ケナガネズミはしっぽの先3分の1ほどが白いのだ。
僕は別の写真を見てもらうことにした。
「この写真はしっぽが写ってます」
2008年はねずみ年。
ということで、奄美大島で撮影したネズミを紹介しよう。
大雨の降る直前の夕暮れ時、林道の真ん中にちょこんと座っていた。
さて、問題はこいつが何者か、だ。奄美には天然記念物に指定されているネズミが2種いる。
1種がケナガネズミで、もう1種がトゲネズミだ。
写真のこいつは・・・・何者?
撮影:鹿児島県奄美大島・金作原(平成16年3月)
ケナガネズミもトゲネズミも、毛が特徴。
ケナガネズミは毛が長い。そしてトゲネズミはトゲのような毛だ。
はてさて、写真のネズミはというと・・・・・?
なんと毛が長いし、トゲのようにも見えるではないか!!
こいつは、「毛が長い」のか、それとも「毛がトゲのよう」なのか?
いずれにせよ、2種の天然記念物ネズミのうちのどちらかのような気がするぞ!
さっそく、翌朝一番で奄美野生生物保護センターに伺った。カメラのモニター画面で同定をお願いしたのだ。