父島の森の生き物のいま
 〜 おがさわらレポート 山の生き物編  
 

2006年3月30日〜4月1日 by ぽんぽこ

 おがさわらレポートの第3弾は、「山の生き物編」
 小笠原諸島が世界でただひとつであることを証明するのは海ではなく、島の上の生き物だ。 
 東京から1000km、グアムから1400kmというこの絶海の孤島に、なんとか漂着した生き物たちが、小笠原諸島固有種へと独自の進化をとげたのだ。

 有名なのは「ハハジマメグロ」だが、この島々の固有種のほとんどは案外、地味な生き物。もっとも固有率が高いのは「陸生貝類」、そう、かたつむりの仲間なのだ。
 しかし、小笠原の固有の動物や植物はひとしく絶滅の危機にさらされている。船に乗ってやってくる外来種が平和な島の生き物の生活を次々にうばっている。

 
 小笠原の山歩きは、地元の自然ガイドを利用しよう。
 とっても素敵なガイドさん 
自然体験ガイド・ソルマルの金子たかしさんに2日間にわたって案内していただいた。

現地施設

自然体験ガイド 
ソルマル
大村地区
04998-2-3773
自然観察指導員としての経験豊かなガイド金子さんの自然体験ツアー。詳しくはホームページを!
※ソルマルは収入の3%を小笠原の自然環境の調査・保全に取り組む団体に寄付されています。
小笠原ビジターセンター 大村地区
04998-2-3001
小笠原の情報拠点。自然のこと、生き物のこと、歴史的なこと、基本的なことをここで学ぼう。
おがさわら丸入港中のみ開館 入場無料 朝から21:00ごろまで開いているの。夜には各種レクチャーも。
 
b-シップ
(観光協会)→一番便利な小笠原情報のホームページ
大村地区
04998-2-2587
観光協会やホエールウォッチング協会などが協同で運営する総合案内所。宿泊情報、交通、ホエールウォッチングや各種ガイドツアーの紹介をしてもらえる。 
年中無休 8:00〜17:00(お昼休みあり)

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 小笠原諸島父島に上陸したその日に、ソルマルのガイドツアーに参加した。
 デイゴの花が咲く、島の道を白いバンに乗って、内地へと向かう。
 小笠原諸島を発見したと伝えられる小笠原貞頼を祀った「小笠原神社」にたちよると、さっそく可憐な白い花が迎えてくれる。
 島にはこんな白い小さな花が多い。この小さな絶海の孤島で生きるには、それほど派手な美を競い合う必要がなかったのだという。
 

 いきなり、オガサワラノスリに遭遇!! ワシタカの仲間であるノスリの亜種で、小笠原の固有亜種。小笠原全体でも100羽ほどしかいない、絶滅の危機にさらされている鳥だ。 父島で山にのぼったら、しばらくの間、空を見上げて欲しい。きっと、南の島に暮らす彼らの姿に会えるはず。

オガサワラヤモリ

オガサワラノスリ

 女性ばかり、5〜6人、ガイドの金子さんの案内で今度は、初寝山にあるアカガシラカラスバトサンクチュアリへ向かう。生き物はいないか、きょろきょろする私に、「これ何かしら?」と声をかけてくれた奥さん。
 「オガサワラヤモリですね。」と金子さん。うお!すごい、これは隊長よろこぶぞ〜。
 オガサワラヤモリは夜、チッチッと鳴くらしい。小笠原ではオスは見つかっていない、メスのクローンしかいないそうだ。なかなかカワイイ。 

 アカガシラカラスバトについては、以前、記事で紹介した。(参照 アカガシラカラスバト 生き残りをかける) 小笠原諸島にしかいない鳥で、美しいワイン色の頭のカラスバトだ。
 もっとも絶滅が危惧されている小笠原固有亜種。父島に30羽以下と考えられる。
 警戒心のうすいハトで、人間が持ち込んだネコなどの動物に捕食されたり、ヤギの移入でえさとなる植物が減ったりしてみるみる数を減らした。
 ここサンクチュアリには指定のガイドさんと一緒でないと入れない。さらに繁殖期には立ち入れないように取り決め、手厚く保護をしているが・・・・。
 「カラスバトの食べた種です」と金子さん、彼らの息吹を感じることができて嬉しかった。 
アカガシラカラスバトサンクチュアリ入り口

カラスバトの食痕(しょっこん) 
上手に種だけ食べる

 2日目は、私と、Sさんの二人がツアーの参加者だ。Sさんは愛媛からきたという年配の女性だったが、コロコロとよく笑う方で、とても楽しい山歩きの一日になった。
 目的地は、島の南端にある千尋岩(ちひろいわ)、別名ハートロックだ。そこに至る道はゆるやかで、1日かかるコースだが父島の自然を満喫できる。足場の悪いところもあるので装備は十分に。
 まずはお出迎えに、ノヤギが現れた。外国から持ち込まれたもので、見た目も外国のヤギという感じ。もともと食用にするつもりのものが野生化し、温暖で天敵のいない小笠原諸島であっという間に増えてしまった。島の植物を食べつくす勢いで、とんだ困り者になっている。どんどん子どもを作るらしく、この日も「メエ〜〜」とかわいい、子ヤギの声が聞こえてきた。

 島は深刻な「外来種問題」がある。小笠原の固有の生き物は、小さな島で「競争」を選ばず、「共存」を選んだ・・・そんな彼らが侵略者にはかっこうの獲物(えもの)となった。
 このグリーンアノール(イグアナの仲間)がその代表。これも人が持ちこんだものだ。
 「この島で昆虫を探せたら一人前」という金子さん、もともと、昆虫が少ない島なのだそうだが、オガサワラゼミオガサワラシジミなど貴重な島の昆虫をこのグリーンアノールが片っぱしから食べてしまった。
 爆発的な繁殖力で、「視界の中には必ずいますよ。」実際その通り、宿のまわりもいたるところにたくさんいた。駆除もほとんど効果がないそうだ。

グリーンアノール

ノヤギ
カタマイマイの仲間

 小笠原には100種類以上の陸生貝類(かたつむりの仲間)が記録され、そのうちの80%が固有種なのだという。
 森を歩いてみると、ほとんど沢がなくて、案外、乾燥している。じめじめしていない。シダ類も乾燥に強いものが生育している。陸生貝類も、乾燥に強いのだろう。
 しかし、この貴重な小笠原のかたつむりたちも、絶滅の危機に瀕している。外来種のプラナリアやカタツムリに食べられたためだという。ここ父島では特に壊滅(かいめつ)的な状態である。
 陸生貝類に出会うことを楽しみにしていた私はがっかりした。写真は、貴重なカタマイマイの仲間だが、殻の中の住民はいない。 

2日目 さらに奥地へ

1日目 

島の南端 千尋岩(ハートロック)に到着 

 金子さんの案内でいろんな話を聞きながらの、のんびりトレッキングすること2時間半くらい。
 視界が開け、千尋岩(ちひろいわ)に到着した。千尋岩は海食(かいしょく)によってできた崖(がけ)で、254.6mの高さがある。岩の下は断崖絶壁(だんがいぜっぺき)・・ぞお〜っとする。
 青い青い海。よく見れば、ザトウクジラの姿を見つけることもできるそうだ。 
 眺めの良いこの場所で、金子さんのおくさんの心のこもったお弁当をみんなで仲良くひらいた。

ハシナガウグイス

オオウナギ

オガサワラアメンボ

 帰り道ものんびり、と生き物観察をしながら歩いた。
 ハシナガウグイスは、小笠原の固有亜種。本家のウグイスと比べて、歌うのがちょっとへた。ホーケキョ・・・と尻すぼみ。金子さんによると、やっぱり、競争相手が少ないので、ちょっと手抜きの歌声になったとか。
 沢はひとつしかなかったのだが、そこにオガサワラアメンボの姿をみつけて、大喜びして撮影。「こんなに注目されることあんまりないですね〜」と金子さん。うしろでSさんが「それは何?」なんと、すぐわきにオオウナギが!ん・・・動かない・・・死んでますねというと、金子さんが、「いや生きてます!ぜったい!いつもそうやって昼間は寝てるんです!」と自信たっぷりだったが、やっぱり死んでいた。へえ〜こうやっていつも寝ているんだ。
 
 ときおり大笑いしながら、金子チームのおがさわら的山歩きはおわった。
 
                      金子さんありがとうございました!!
 

 お気づきだと思うが、山編は大変だった・・・だって書くことが多すぎるんだもん。
 小笠原のおもしろさを知るには、山へいくべし。南の孤島に生きてきた彼らの、ちょっと平和でない最近の事情なんかも知って欲しいと思う。



この記事は3本だてです。
 小笠原レポート 海編
 小笠原レポート 干潟編
 小笠原レポート 山編

公開:平成18年6月30日