個人的名作200

Quest of D(セガ・2004)

 

ついに個人的名作が200回を迎えることとなりました。
100回目は自分にとってアーケードゲームに深く入り込む切欠となった「ドルアーガの塔」を取り上げました。
2回目の節目となった今回は、おそらく自分がアーケードゲームの中でもっとも熱中した作品ともいえる「Quest of D」を取り上げたいと思います。


 

【Dの魔導書】

 剣や魔法のファンタジーの世界でモンスターを倒していくアクションゲームです。
 カプコンの「モンスターハンター」などのように、ポリゴンを使用したフィールドでモンスターと戦います。

 プレイヤーはプレイデータをICカードに記録することが出来、ICカードさえあれば何時でも続きをプレイすることが出来ます。但し、ICカードには使用回数があり、100回使用すると新たなICカードに更新する必要があります。


 プレイヤーは最初にキャラクターメイキングを行います。
 種族・性別・職業を選択することが出来、それによりキャラクター性能と見た目が結構変わりますので、複数キャラクターを作成するのも手です。


[ 種族 ]
人間・エルフ・ドワーフ(男性のみ)・ノーム(女性のみ)から選択可能となっています。
人間が平均的な能力とすると、エルフはスピード面で優れており、ドワーフとノームはパワー面で優れている性能となっています。


[ 職業 ]
 戦士・魔法使い・僧侶・盗賊から選択します。

 戦士はほぼ全ての武器を使いこなせる接近攻撃メインの職業。雑魚敵には強い反面、空を飛ぶなどの武器が届かない位置取りをする一部ボスモンスター戦は攻撃チャンスが少なめになっています。
 魔法使いは攻撃魔法をメインとした遠距離攻撃を得意とした職業。魔法スキル次第では戦士とは逆にボスモンスターと戦いやすかったりします。
 僧侶は攻撃と回復魔法と攻撃魔法と多彩なスキルを持っていますが、どれも平均的で特化した部分が無いともいえますが、味方の支援が充実しているので他ユーザとの協力ダンジョンでは助かることが多いです。
 盗賊は後のバージョンで追加された職業で、ジャンプなどの他職業では出来ないアクションが行える他、弓矢や短剣など他職業では余り有用性が少ない武器を使いこなせるので、かなり個性的な職業となっています。

 職業は一度選ぶと変更できない上に他職業のスキルは一切使用できませんが、後に「サポートジョブ」と呼ばれるほかの職業のスキルを使用できる様になります。
 また、戦士は騎士、魔法使いには賢者という様に上位職が実装され、より奥深くプレイすることが出来ました。

 

【魔導書に魅せられて…】

 操作系は「レバー+4ボタン」となっており、レバーはキャラクターの移動に使用します。
 ボタン配置がちょっと変わっており、右手の親指、人差し指、中指と手のひらに相当する位置に配置されています。
 親指の位置が「ガード」、人差し指の位置が「アタック」、中指の位置が「ビュー」、手のひらの部分が「ユーズ」となっており、ボタン1個または「ユーズ」以外のボタンを2個以上同時押しすることでキャラクターがアクションを取ります。
 また、画面がタッチパネルになっており、敵や味方や一部オブジェクトをタッチすると標準が現れ、全てのアクションがそのキャラクターに向けて行われます。味方の支援・回復や特定の敵だけに攻撃したいときに有効です。それだけでなく、フィールドに落ちているアイテムやお金を拾ったり使用したりするのにもタッチパネルを使用します。


[ ガード ]
 ガードボタンを押すと防御体制をとり、敵の攻撃を防ぎます。
 盾を持っていれば盾で、盾がなければ武器で防ぐようなモーションを取ります。ガードが成立すると装備品に依存しますが、一定の割合でダメージが減少します。


[ アタック ]
 アタックボタンを押すと武器で攻撃します。装備品と後述のスキルにより変わりますが、2〜5発程度のコンビネーションになっています。


[ 視点変更 ]
 ビューボタンで視点変更となり、押した時点でプレイヤーキャラクターの前方に視点が変更されます。押しっぱなしにした場合は、徐々に始点が変更されます。


[ ユーズ ]
 ユーズボタンを押すとタッチパネルで選択したアイテムやスキルを使用します。


[ 強攻撃 ]
 ガードとアタックの同時押しで「強攻撃」。モーションが大きいですが、威力が高い攻撃を出します。通常のアタックよりも単位時間当たりのダメージ効率が高いことが多いです。
 後述の「キャンセル」とステージクリアまでに時間をかけないほうが良い為、殆どのケースにおいて「強攻撃」を使い続けたほうが特になっています。


[ 前転 ]
 アタックとビューの同時押しで少しの距離を前転しながら移動します。無敵時間は有りませんが、前転中はスーパーアーマー状態なので強引に突破するときに有用です。


[ 武器変更 ]
 ガードとビューの同時押しで「武器変更」。右手と左手に持てる装備品は2種類装備することが可能で、武器変更のアクションで持ち帰ることができます。


[ 全方位攻撃 ]
 ガードとアタックとビューの同時押しで「全方位攻撃」。一定時間無敵になれる攻撃を繰り出しますが、威力は低い上にペナルティが重い。


 同時押しというアクションにより、少ないボタンで多彩な行動が取れますが、ゲームバランス上、殆どのシチュエーションにおいて同時押しのアクションのみが必須となっているので若干ボタン個々の機能の意味合いが薄れてしまっているのと、それを知らないプレイヤーが相当不利になっているのが残念なところです。
 

 プレイヤーはゲームスタート時に「Dフォースカード」と呼ばれる紙媒体のカードを最大35枚までカードリーダに読み込ませます。
 カードには武器屋防具などの装備品、ポーションや食料などのアイテム、スキルカード、モンスターカードがあります。

 装備品やアイテムはゲーム中に持ち込むことが可能でゲーム中に拾えるアイテムとほぼ同じ機能になっています。ポーションなどの消費アイテムは使用するとなくなりますが、紙媒体自体は使用制限が無いために次回のプレイ時に読み込ませれば再び使用することが出来ます。
 装備品は初期バージョンではカードを読み込ませるたびに何度でも使用できるというメリットがあるためか、ゲーム中に拾える同じ装備品よりも性能が若干低くなっていましたが、実際のところ利用価値が低かったためか、後のバージョンでは同等の性能になりました。

 スキルカードは、武器スキルと魔法スキルに分かれており、武器スキルは特定の武器の攻撃モーションが変化します。同一のカードもしくは同種のカードをデッキに複数入れる事が可能で、入れれば入れるほど能力値とは無関係の攻撃力が上昇するので同種のカードを可能な限りデッキに入れることが基本となります。
 魔法スキルは魔法使いの魔法攻撃や能力値アップを行います。武器スキル同様に同種のカードをデッキに入れることで効果が上がります。

 モンスターカードは召還魔法を行うことが出来ます…が殆どがネタ性能で役に立ちませんが、一部補助役として優秀なモンスターも一部居ました。


 効率よくダメージを与えるためには、デッキはスキル(武器攻撃メインなら武器スキル、魔法メインなら魔法スキル)を出来る限り入れ、残りに回復系の消費アイテムを入れるという構成にするのがスタンダードになっています。その割を食ってか装備品カードやモンスターカードをデッキに入れることは殆ど無くなりました。


 デッキは35枚までですが、カードは条件しだいで自動で合成されます。
 同じ種類のカードはレアカードであれば4枚で一組、アンコモンであれば6枚で一組、コモンであれば10枚で一組になります。
 但し、ポーションなどの回復アイテムや食料は合成されないなど、一部例外があります。
 合成した結果、最大で14組までゲームに持ち込むことが可能となっています。
 つまり、同じ種類のアンコモンのスキルカード24枚、回復アイテムと食料10枚ならば合成すれば14組に収まります。
 

 

【歩く…そして走る】

 フィールドはポリゴンを使った3Dアクションとなっており、壁などの通貨不能の地形を除けば自由に移動、自由にアクションすることが出来ます。
 冒険の内容は選んだシナリオによって異なりますが、基本的には敵を倒しながら奥へと進み、ダンジョン最奥にいるボスを倒すかアイテムを回収するとクリアと言う流れになっています。
 3Dアクションながらも、1レバー+4ボタンだけで多彩なアクションを用意に行うことが出来るという操作性の良さがこのゲームを面白くさせてくれます。
 また、画面がタッチパネルになっており、敵や味方をタッチするとそのキャラクターをターゲットに行動することが出来たり、フィールドに落ちているアイテムにタッチをすれば拾ったり使用したりも出来ます…思い通りの操作が思い通りに出来るというのも、このゲームのよさの1つといえます。



 ゲームモードは主に3つ。
 1つ目は「シナリオ」。
 1人プレイ専用のモードでこのゲームのストーリである「魔の軍団に奪われた『魔道書D』を取り返す」為に主人公が敵と戦っていきます。
 ゴブリンやオークなどからリザードマンやドラゴンに至るまで、ファンタジー世界では御馴染みのキャラクター達が登場し、しかもどれもファンタジーの世界観という雰囲気そのまま描かれたような姿で薄暗いダンジョンの冒険を見た目からも楽しませてくれます。

 2つ目は「全国協力ダンジョン」
 このゲームの面白みともいえる、オンラインを使って全国のほかのプレイヤーとダンジョン攻略をしていきます。
 敵と戦うだけでなく、相手に回復アイテムを投げたり、定型文でのチャットを行ったり、巨大なボスモンスターを協力して倒したり…と楽しみながらの冒険ができます。

 3つ目は「対戦モード」
 バージョン4.0の「DVS」と呼ばれるバージョンから登場したモードで、プレイヤー同士の対戦を楽しむことが出来ます。
 

 

【戦いの…】

 プレイヤーには能力値のパラメータがあり、その値により攻撃や動作の違いが出てきます。パラメータは装備品やDフォースカードにより簡単に上下させることが出来るためプレイヤーの職業やプレイスタイルに併せて自由に値を振り分けることが出来ます。


[ STR ]
 武器による物理攻撃のダメージに関係します。魔法だけで戦う魔法使いを除けばほぼ全ての職業で必要なパラメータになります。


[ INT ]
 攻撃魔法のダメージに関係します。魔法使い系には重要なパラメータです。


[ MIN ]
 一部の攻撃魔法や回復魔法の効果に影響します。僧侶系には必要になります。


[ AGI ]
 キャラクターの移動速度に影響します。1人全国ダンジョン攻略には必須ですが、普段の立ち回り等にもあると便利です。


[ DEX ]
 キャラクターの攻撃や魔法の行動速度に影響します。攻撃時間軽減は結構重要です。


[ LUC ]
 クリティカルヒットの発生率に影響します。若干運が絡む物のSTR(またはINT)とDEXを上げきったキャラクターの更なる威力底上げになります。



 冒険中はプレイヤーは「HP」「ENE」「MP」の3つのパラメータがあります。
 HPはヒットポイントで敵の攻撃を喰らうと減少し、0になるとゲームオーバーになります。ポーションや回復魔法で回復します。
 ENEは最初は100で一定時間ごとに減少します。時間以外でも能力アップのスキルなどを使用しても減少します。ENEが0になるとHPが1秒につき-1されます。肉などの食料アイテムを使用すると回復します。ENEの消費量は初期のバージョンでは戦士が3秒毎、僧侶が5秒毎、魔法使いが10秒毎に-1でしたが、Ver2.0以降では全職4秒毎に統一されました。
 MPは魔法を使用すると減少します。一定時間ごとに回復しますがENEの値以上にはなりません。魔法メインで戦う魔法使いにとっては重要なパラメータの1つでENEとMPの運用がポイントの1つになっています。これも肉などのENE回復アイテムで回復しますが、MPだけ回復するアイテムもありました。初期バージョンではMPは無くENEの消費により発動されていましたが、Ver2.0以降からMPとENEに分けられました。
 

 

【遊びやすかったのは…お金の問題?】

 「シナリオ」「全国協力ダンジョン」モードではモンスターと戦いながらダンジョンの奥へと進んで行きますが、鎧などの装備品に依存する部分はあるもののダメージが余り大きくない傾向にあります。
(デフォルトのHPが100で敵から受けるダメージはどんなに防御力が低くても40以上のダメージは受けないし、防御力を高めると大半が1桁ダメージになる。初期バージョンではダメージ上限が60であったが、40に緩和された)
 もっとも、このゲームはHPが0になるとコンティニューするには100円が必要で、ゲーム開始時にすでに200円投入しているため、余りユーザ側に負担にならないようにという考慮が伺えます。

 当然、プレイヤーにとっては難易度が低めに感じる部分も有りましたが、初見の敵に対して何も対策を立てられずに何度もやられるようなケースが無いという事と前述のデッキでポーションなどの体力回復アイテムが簡単に持ち込めていたのが、ゲームの敷居を低くしていった理由なのかもしれません。

 敷居が低いことからも違った楽しみが出来たようで、1つは攻撃「ある程度の破壊力があればどんな武器でも問題がない」ということです。
 武器には片手剣、両手剣、片手斧、両手斧、槍、短剣、弓矢…様々な種類がありますが、「武器はこれ一択以外ありえない」という訳ではないので選択肢が沢山あるという楽しみができました。
 また、鎧も「防御力重視」と言う手もあれば、「性能重視」「当たらなければどうと言う事も無い」という手もあり、更に鎧1つ1つの見た目が個性的であることから鎧がほぼ自由に選べ、様々な遊び方が出来るという楽しみもありました。
 

 

【プレイヤーと繋がる面白さ】

 全国協力ダンジョンでは全国の他のプレイヤーとで最大4人でダンジョンに挑みます。
 全国協力モード専用のダンジョンとなっており、複数で1匹の敵を攻撃したり、手分けして進んで行くなど、1人プレイとは違ったダンジョン攻略となっています。
 また、チャットを使って定型文(ボイス込み)で相手に伝えることでコミュニケーションを取る事ができます。

 全国協力ダンジョンのゴール地点は3箇所あり、ゴール地点に辿り着いた時間によってボスが変化します。
 規定時間以内の場合は、ドラゴンやワイバーンなどの巨大なボスモンスターが登場します。
 規定時間以内のクリアは4人のうち1人が優れているだけでは中々達成できません。プレイヤー達は巨大ボスモンスターとの戦いと撃破を目指して協力しあったり、ときには救援したりという様々シチュエーションが盛りだくさん。
 ダンジョン自体は10分前後ですが、非常に楽しめる内容になっていました。


 また、「D.net」という連動コンテンツにより、プレイヤー同士でギルドを組んだり、他プレイヤーからアイテムを購入するなど他のユーザとの繋がりをゲーム以外でも楽しむことが出来ます。

 

【セガのプライド】

 このゲームを語るにはまだまだ足りないくらいですが、見た目はいかにもD&Dなどの硬派な「ファンタジー」ワールドを存分に表現した世界観。
 アクションゲームとしても操作系が1レバー+4ボタンですが、格闘ゲームのようなコマンドは無く、ボタン一押しでキャラクターがアクションするという敷居の低さから非常に遊びやすくて楽しめる作品でした。
 リアルタイムでのダンジョンの移動、敵との戦いのときのアクションや魔法の使用等…やりたい事が簡易操作で出来るのが非常に爽快感がありました。
 他にも全国協力ダンジョンでのほかプレイヤーとのコミュニケーションも楽しめたり…とにかく遊べることが沢山あった作品といえます。
 1プレイ200円で10〜20分ほどの内容ですが、払ったお金に見合うほどの楽しさが得られる作品であったといえます。
 私もVer1.0の稼動初期頃から約6年ほど楽しませて頂きました。


 残念ながら、稼動してから6年程経った2010年8月でサービスが終了となっていましました。
 サービス終了に伴い、メインコンテンツともいえた「全国協力ダンジョン」と「対戦モード」が完全停止。「シナリオ」のみプレイ可能と言う状態になってしまいました。 更にカード使用回数の都合上、無限にプレイやできなくなりました。

 終了は「「Quest of D」自体煮詰まってしまった」と言われていますが、同ジャンルの「モンスターハンター(カプコン)」が10年経過してもまだ続編が出るほどの人気を集めている事や、Ver3.0での囁かれていた限界説を次バージョンのDVSの稼動などから、充分にやれる要素はあったといえます。
 むしろセガは元々「ゲームを作る技術があっても、ゲームを盛り上げる技術は他社よりはるかに劣る」という例に漏れなかった『セガらしい』作品であったのかもしれません。

 サービス終了した理由は諸説あるようですが、単純な筐体劣化だけではない説もありますが、その辺りを語る場ではないので…
 また、ゲームをプレイするのに必要なICカードには使用制限があるため、ICカード自体が入手できないとプレイできなくなる恐れがありました。
 稼働中にはそういった問題は目立っていなかったようですが、サービス終了されてICカードが入手困難になった途端にその問題が浮き上がり、ファンが筐体を購入しようという計画の大きな壁となってしまっていました。
 当時はICカードを売り続けることでも利益確保していた時期でしたが、サービス終了後にファンが引き続きゲームが出来なくなってしまったといえます。
 また、サーバと接続できないことから、「全国協力ダンジョン」「対戦モード」が一切プレイできなくなった為、アーケードゲームでありながらサービス終了によりゲーム自体が完全に楽しめなくなってしまったというのは、ゲームを盛り上げる力の乏しいセガらしさを感じ、悲しい限りでした。

 後継作ともいえたシャイニングフォースクロスは、稼動当初は不完全すぎる内容であるにもかかわらず「Quest of D」と同額を取る劣悪さと、強引に「Quest of D」からユーザ移行をおこなう傲慢さからユーザが余りつかず、開始からコケてしまっていますが、それでも続けているのは『シャイニングフォース』というセガが自社ブランドと思い込んでいる(実際世間にはそれほど浸透しているわけでもないが…)タイトルに対する無用のプライドがやらかした大失態であることに気づかないと、セガはこれからもゲームメーカーとしては衰退し続けることになるでしょうね。

 

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