個人的名作79

バーチャレーシング(セガ・1992)

 

 「ポリゴン」。今では多くのゲームのビジュアルに用いられている手法ですが、まだ「ポリゴン」が余り馴染みの無いときに 「ポリゴン」を用いた名作レースゲーム「バーチャレーシング」。今回はこのゲームを取り上げたいと思います。

 

【 どんなゲーム? 】

 レースカーのコックピットの様な大型の専用筐体を使用したドライブレースゲームです。 F-1等のフォーミュラーカーのレースを楽しむことが出来ます。最大8人での対戦もできます。

 この時期までに数多くのレースゲームが登場していましたが、ポリゴンを使用したゲームというのはまだ非常に 数が少なく(もっとも、この時期は一般的なビデオゲームでもポリゴンを使用したゲームは皆無であった)、非常に見た目が斬新でした。
 まだポリゴンによる描写は(当時の技術では大手が製作しても)「動きのぎこちない角ばったキャラクター」という時期でしたが、 今思えば、これが「ポリゴンを用いたグラフィック」という時代への幕開けとなった作品の一つだったのではないかと思います。
 

 

【 当時にしては変わったボタンが多かった 】

 操作系は、レースゲームでは「ハンドル」「アクセル」「ブレーキ」と「ギアチェンジ用のシフトレバー」なのですが、 「シフトレバー」はコックピットの横にレバーがあるタイプではなく、バタフライシフト型になっています。
 アーケードのレースゲームではバタフライシフト型を採用しているゲームは少ないのですが、使ってみるとかなり楽で、 『何で他のフォーミュラーカーのレースゲームでは採用されていないのか』疑問に思ったくらいです。丁度F-1でもバタフライシフト型を 採用するチームが増えだした時期だというのに…。

 また、コックピット横には「視点変更ボタン」と「スタートボタン」があります。
 「視点変更ボタン」は4つあり、コースの見え方が変わります。後のセガのレースゲーム殆どで採用されていた視点切替えボタンは この作品で最初に使われていました。
 「スタートボタン」は何故かゲームスタートには使用されず、(コイン投入と同時にゲームが始まり、コース選択画面になる) 『コース選択時にマニュアル7速かオートマかを選ぶときに使用する』だけです。何故「スタートボタン」という名前なのか不明ですが、 開発当時は、ゲームスタートにボタンが使用されていた名残だったのでしょう…。

 「コイン投入⇒コース(全3種類)選択・マニュアルorオートマ選択⇒レース」という流れでゲームが進み、 レースは全4周(設定を変えると20周モードにもできる)で、ゴールするか残り時間が0になるとゲーム終了です。

 

【 遊びやすさの名作 】

 このゲームは『初心者でも簡単に操作できる』様に考えられているように感じられます。幾つか挙げてみますと…

1.コース幅が広い
 コースの殆どが車4台分くらいあり、いい加減なラインを走ってもコースアウトしにくい作りになっています。

2.アクセルワークだけで殆どのコーナーが曲がれる
 アクセルのONとOFFだけで殆どのコーナーが対処できる為、「急なコーナーではとりあえずアクセルを緩める」だけで 全てのコースが一応走れます。

3.スピンしにくい
 スピンの条件がかなり緩く、「高速で急ハンドルを切った状態でコースアウト」「スピード差の大きな車と接触」 したときくらいしか、まずスピンしません。  つまり、急なハンドル捌きをしてもちゃんと言うとおりに動いてくれます。(車のスピード等によりますが…)
余談ですが、PS2版「バーチャレーシング」は少し改悪されている様で、ややスピンしやすくなっています。
 

 『レースゲームは好きだが、最近のレースゲームはどうもドリフトとかアクション的な部分ばっかりで…』 という方にぜひ触って欲しい作品です。「シフトチェンジ」と「アクセルワーク」だけで最速を求めていく…地味かもしれませんが、 初心者でもすぐに慣れる作品だと思います。
 操作系のときに少し説明しましたが、ギアチェンジをオートマにすることも可能 (オートマだとシフトチェンジの必要はなくなる代わりにマニュアルよりも最高速度が少し低くなる) なので、誰でもすぐに楽しめると思います。(只、今の時期にバーチャレーシングが設置している店なんて殆ど無いのが…)
 

 

【 細かいところを作るねぇ… 】

 また、このゲームは表現への拘りを感じるところも多々あります。
 1つはピット。ピットに入るとちゃんとタイヤ交換をしてくれます。勿論交換中はタイムロスになりますが、 このゲームは徐々にタイヤのグリップ力が下がり、コーナリングしにくくなっていくので、その回復が出来ます。
 ノーマル設定のレースは4周なのでグリップは殆ど低下しませんが、20周モードだと途中からグリップがかなり落ちるので 変えていかないとキツくなることがあります。

 他には、スリップストリーム(というか、他の車に一定距離近づくと最高速度が少しだけ上がる)や、車から出る火花。  優勝時の表彰台のシーン等、レースに関する様々な表現が多々あります。
 また、他には『中級コースの椰子の木に衝突すると椰子の実が落っこちてくる』ことがあり、友人と大笑いした記憶があります。
 ちなみに中級コースには牛が居るのですが、撥ねようとすると猛スピードで逃げられてしまう… 牛は時速300キロ以上で逃げている訳か…

 

 

【 何故続かない… 】

 兎に角遊びまくりました。F-1好きな友人達と対戦しまくった思いでの作品です。特に20周モードは 選んだコースによってはプレイ時間15分を超えることもあるので、ある意味、集中力と精神力勝負な部分があり、非常に面白かったです。

 また、変わった遊び方として、このゲームは『(4周モードのとき)トップのプレイヤーから遅れる程、補正がかかる(スピードが上がる)』 という仕様があります。
 本来は『常にプレイヤー同士のデッドヒートを…』という目的で使われていたようですが、友人とこれを使用して1周のラップタイムをどれだけ 縮められるか挑戦したこともありました。(1人が普通に走り、もう一人がわざと1周近く遅れてスタートすると補正により、 通常の走行では考えられないタイムが出る)
 とにかく、いくら走り続けても飽きませんでした。

 操作性等の遊びやすさ、表現の面白さ…どれを取っても素晴らしいレースゲームだと思います。 今でも1時間以上掛けて某所までプレイしに行くくらいだし…

 只、私が気になっているのは、『世間的にはバーチャレーシングは評判はどうだったのか?』です。
 セガもバーチャレーシング以降のレースゲームは(バーチャフォーミュラを除くと)「デイトナUSA」「スカッドレース」等、 スポーツカータイプの車でドリフト走行していくレースゲームばかり…あれ程面白かったバーチャレーシングが続編も出ないまま…
 家庭用には幾つか移殖されているものの、アーケードではそれ以来フォーミュラーカーを操作するレースゲームは殆ど 登場することは無くなりました。
 世間では上手く行っていなかったのでしょうか…それとも、ドリフトなどのアクション的な部分の方がウケが良いのでしょうか…?
 私が覚えている限り、フォーミュラーカーのレースゲームはこれ以降は「エースドライバー(ナムコ)」くらいですし…。  

 少し前にPS2より「SEGA AGES 2500」シリーズとして「バーチャレーシング」が発売されました。
 新コースなども追加され、かなり良い感じで移植されているのですが、前述の『スピンしやすくなっている』ことと 『低速ギアを使用せずに中〜高速ギアでスタートしたほうが加速が良い』点が少し残念…。でも2500円分は楽しめるはずです。

 

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