幸福(しあわせ)をひとりでも多くの人と共有してほしい
悠久の昔から、無情にも儚く過ぎてゆく時間への無力さを人は感じ、そのつど悲しみ、事実を受け入れてきた。悲しさと優しさを持った中村の歌声が広く大きく包み込み、凛として前を向く主人公の強さを描いているようだ。またあらたな世界観を生み出したふたりに聞いた。
音楽というものには、聴く者の心に共鳴し、寄り添い、心の支えや糧となるような力が秘められている。
GARNET CROWのニュー・シングル「君を飾る花を咲かそう」は、まさにそのことを強く思い起こさせてくれる作品だ。シングル前作の「僕らだけの未来」では、ラテン・テイストやロック・テイストを含む、バンド・サウンドを前面に出したアプローチを見せたが、最新作「君を飾る花を咲かそう」は、ミディアム・バラードだ。印象的なピアノを軸に、バンド感覚も含みながら、スケールと深みを増していくサウンド。ほのかに60'sサウンドを思わせるようなニュアンスもある。そして、中村由利が紡ぐ、クラシック音楽、バロック音楽の香りを感じさせるメロディ。
「友人の家族が突然この世を去ってしまい、私自身もとても悲しみ、つらい思いをしました。そのことがきっかけでこのメロディが出てきました。大切な人への思い、気持ち、普段近すぎて見えなくなりそうな気持ちを、見落とさないでほしいという願いを込めました」(中村由利)
「大切な人を見送る心情、そして棺のイメージを感じ取りました。メロディと(中村の)声がとても悲しく優しかったです」(AZUKI七)
教会音楽をもイメージさせる静かな雰囲気から、しだいに深い心の動きが表れるこの楽曲。中村のボーカルには、透明感と優しさ、そして、揺るぎない心の奥底の強さが表れる。
「ゆっくりと語りかけるように皆さんの心に違和感なくスムーズに入ってゆれるように心がけました。側にある幸福(しあわせ)を見落とさないでほしいという思いを込めて歌っています。つらい経験をしたことでこの歌をうたい上げるのには少し時間がかかりましたが、悲しみを乗り越えたからこそ、そこに強さも感じてもらえたのではないかと思います」(中村)
時が流れてゆく中で、人は得るものもあれば、失うものもある。大切な人との別れは、もちろん、筆舌に尽くしがたいほどつらい。しかし、AZUKI七が手がける、この「君を飾る花を咲かそう」の歌詞からは、すべてをあるがままに受け止め、受け入れ、去りゆく者を優しく見送るという、人としての心の強さが伝わる。
「メロディに心を預けたらタイトルは自然に出てきました。最後のサビのタイトルからの5行が最初に浮かびました。とてもはがゆさを感じながら書いたと思います。メロディと(中村の)超えの発するイメージを私なりにですが強く感じ取って導かれるままに言葉にしただけなのですが、とても気丈に優しく、見送り守っている印象を受けました」(AZUKI七)
「自分にとっての大切な人、家族、友人、愛する人などの存在をもう一度確かめ合ってほしいと思っています。普段はなかなか気づけない、意識できない気持ちに気づいてほしいと思っています。そして幸福(しあわせ)をひとりでも多くの人と共有してほしいです」(中村)
人が生きていくうえで避けられないテーマに向き合った最新作。これまでも深い人間性を表現してきたGARNET CROWは、すべて移りゆくものだからこそ、また夜明けが、明日が来ることも静かに、力強く歌う。
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