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(初掲 2007.9.30)


鞄立製作所の会社設立登記日


会社設立登記日は1920年2月11日の紀元節



日立製作所のホームページでは、会社設立は大正9年2月1日となっている。しかし、日立工場75年史の「会社の独立」という項に、次のような記述があり、大正9年2月1日は会社設立の準備期間中で、大正9年2月11日に会社設立登記をしたとなっており、会社設立はこの日とするのが自然である思われる。


独立に至る記念すべき経緯を当社第1回営業報告書によってこれをみれば、次のように記録されている。

1.当会社ハ大正九年二月一日発起人ニ於イテ定款ヲ作リ大正八年十一月末日現在ヲ以ッテ久原鉱業株式会社日立製作所ノ事業引渡ノ契約ヲ締結ス。

1.大正九年二月一日発起人ニ於イテ株式総数ノ引受ケヲナス。

1.同年二月三日東京市麹町区八重洲町一丁目一番地久原鉱業株式会社ニ於イテ発起人会ヲ開キ第一回株金払込ノ時期及金額ヲ決議シ取締役及監査役ノ選挙ヲナシ取締役ニ小平浪平、角弥太郎、田辺勉吉、六角三郎、高尾直三郎、監査役ニ堀哲三郎、下河辺健二当選就任セリ。

1.同年二月三日同第一回株金払込一株ニ付キ金二拾五円ノ払込了セリ。

1.同年二月五日本社ニ於イテ取締役会ヲ開キ専務取締役ノ選挙ヲ行ヒ小平浪平之ニ当選就任セリ。

1.大正九年二月十一日 当会社設立ノ登記ヲ東京区裁判所ニ申請シ、登記ヲ了セリ。


2月11日は昔は紀元節、今の建国記念の日である。会社設立登記の日として紀元節の日を選んだのは、強い愛国心をお持ちであった小平さんのご意志の現われであり、尊重されなければならぬものである。

日立製作所を創業された小平さんは、忠君愛国のお心が強く、皇室崇拝の気持ちが強い方であったことは、青年期に書かれた「晃南日記」や新入社員の入社時の訓示に示されており、終戦時の玉音放送を聞きながら涙を流され、同時に各事業所所長宛に電報で業務に対する指示とともに国体護持を指示するなど、その他、高尾さんや馬場さんが書かれたものの中など多くの場面ではっきりと現れている。

昭和10年の新入社員に対する訓示では、

「‥‥‥非常に不都合極まる日本の機械製造界をどうにか物にしたいという気分に燃えまして、あの製作所と言うものをごくごく幼稚な設備で創めたのであります。 今でも私はこの自分がやっている仕事と言うものは決して金儲けでやっている仕事ではない、株主の前にそう言うことを言うのは甚だ不都合な奴だと言われる方があるかも知れませぬが、私は株主の利益ばかりを計って今仕事をしているのではありませぬ。多数の従業員を一方においては私はお預かりし、それからまた株主のご期待にも背かんようには無論心掛けては居りますが、しかし、私の真意を申し上げますと言うと、日本の機械工業を進展させて、そうして日本の隆々たる国運に副うて行きたい、これが私の希望であります。」

と話されている。この会社を設立したのはただ儲けるためだけではない。重工業を進展させて隆々たる国運に沿うて行きたい。これがわたしの希望である。”と言っておられる。

2月11日と言えば今の「建国記念の日」、昔の「紀元節」である。小平さんが紀元節の日を選んで会社設立登記をされたことに、創業者として、この日立製作所を日本人の為になり、国の発展に役立ち、国と共に発展していく会社にするのだと言う強い決意と願望が感じられる。2月11日に会社設立登記をされたのは、単なる偶然ではなく、小平さんの強いご意志によるものであると考えて間違いない。

現在の世の中には、自己中心的な考えが蔓延し、悪質な犯罪が頻発して居る。企業では、自社の利益の為に脱税、談合、贈賄、羊頭狗肉、粉飾決算、欠陥製品の放置、など儲けるためには手段を選ばずの風潮が見られる。このような時代だからこそ、儲けるためだけではなく国のためになる会社にするのだとして日立製作所を創業された小平さんのお気持ちが尊く思えるのである。

社員の一人一人が「日立製作所は小平さんが建国記念日に設立された」ことを知れば、小平さんの心に沿って、国のため社会のためになる会社として恥ずかしくない行動をしようという気持ちにもなると思う。社内に「基本と正道」を徹底させるためにも「日立製作所の設立は建国記念日」と言う事実は重大な意義を持つものと思う。

日立製作所はこれからも未来に向かって長く存続していくであろうが、現在のままでは、何故、会社設立登記日が会社設立日ではないのかが疑問に思われ、理由を糺される問題を抱えていくことになる。企業にとっても歴史は大切であり、会社設立日は企業の歴史にとっても重要な事柄である。現在の「会社法」では会社設立登記日を会社設立日とするとなっているのであるから、事実に随って会社設立日を1920年2月11日とするのが将来に対しても正しい処置であると考える。(2007.9.30)

以  上

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